気がついたら乙女ゲームだった!チートって何ですか?美味しいですか?

おばば様

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帝国編

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 ワルドの視点になります。

 俺はこのエニフ王国第2王子として産まれた。両親は共に優しいのだが、父上は空の人の伝承を信じ、これも自国の為だと日々教会で祈りを捧げている。

    エニフ王国は初代の王から教会長を務め真摯に祈りを捧げ、それで少しづつ花や形が悪いが作物が出来る様になったと、この事はエニフ王国内の教会の歴史書に書かれていた。
    毎日真摯に祈りを捧げる、これこそが我が王家の伝承だと国王であり教会長でもある父上に言われれば納得するしかなかった。

    もちろん王族主催の鎮魂の儀式の際は、隣国の陛下達と真摯に祈りを捧げているが、一度たりとも空の人が許す為に現れた記録は無く、これはエニフ王国建国から300年記録されている歴史書には書かれていない、許しを得るために日々祈りを捧げてる事が、本当に嫌で馬鹿にされてる気分になる、それなのに何故13年前隣国に空の人が現れたのかを調べ始めたきっかけでもあった。

    俺は祈りなんて無意味だと思っている、などと父上や王太子の兄上に口が裂けても言えずにいた。けして怒られるからでは無い、

 俺には上にも下にも兄弟妹が居て、図書室で歴史の事を調べまくっている俺は、両親からみれば手の掛からない優秀な子供らしい、ほっとかれている現状だが、好き放題したい俺は有難いと思う。

   
 小さな頃から歴史は好きで、エニフ王国建国してから300年の歴史を改めて見ると、この国が建国する前名前を無くした帝国があった。

 その帝国を滅ぼし掛けた空の人の話しがある。その歴史は調べれば調べる程嫌いな話しだ、それはエニフ王国王家に古くからある伝承だ、隣の国にとっては自国を救った救世主なのかもしれない、帝国も悪い事をしたのは理解出来る、何も捕まえて見世物にする方が悪い、

 でも今もこの国は城から向こう側の湖を始め、何も生えていない所が多い、アウストラリス王国から食料を受け入れなければ自給自足では、民にまで食料が行かなくなる。
 エニフ王国側で果物や野菜等を作ろうと苗を植えれば、城から近くはまだ良いが湖の側等はまずは育たず数日で枯れ果てる、
 アウストラリス王国から食料品を入れ、今は食料不足とは言えない程豊かである、

 こちらも受け入ればかりでは無く、芸術品や調理道具等は、こちらの方が品質が良いと評価は高く需要がまだある、もし飽きられると受け入ればかりになってしまう、その為エニフ王国は民と協力して新しい物作りをしている程だ、アウストラリス王国は最近トランプが流行っているらしい、これを生み出したのは王太子の婚約者であり、アルゲティの生まれ変わり・・・、思い出すだけで顔が歪む、


 5年程前に母上が女の子を産んだ可愛い青髪の妹、
 妹はこの国が帝国と呼ばれた時代の王族としての証でもある青髪で生まれた。
 その時の父上は顔を顰め苦々しい顔をした、当時8歳の俺にもわかる程だから、疲れ果て安堵の顔をした母上にも父上を見て分かった様だった。

「青髪か・・・忌々しい!俺の目の前にそれを出すな!」

 父上に言われた母上は悲痛な顔をし、医師から青髪の妹を優しく受け取ると抱き寄せ涙を流した。産まれた妹は清潔な布に包まれ母上に抱かれスヤスヤと眠っている様だ、

「ごめんなさい青髪に産んでしまって・・・」

「母上髪色が何だと言うんだ!歴史は変わる為にあるんだ!全てアイツのせいなんだろ?!」

「ワルド!お前なんて事を言うんだ!宰相!教会に行く」

 父上は俺達に丁寧に礼をして下がった宰相を連れ足早にこの場を去った。
 信仰深い父上の事だ、教会に青髪が産まれた事を報告しに行くのだと思う、俺は産まれたばかりの妹が不憫に思え顔が歪む、
 後日母上の元に来ていた父上に、ルピーを王城の奥の部屋に住ませる事を反対し、俺の自室の近くにと悲願した、だが父上はそれを許さなかった。

「この国がどうなっても良いと申すのか!ワルド!」

「なぜです!ルピーは好きで青髪に産まれた訳ではありません!」

 母上は気丈に振舞っていたが、堪えきれず涙を流し始めた限界だったのだろう、父上は母上に弱く涙を見せた事に狼狽え、ルピーの誕生日と鎮魂祭の時のみ自由にする事を告げ俺に退室を促す、祭は10日あって民にとって貴重な収入源になっている。

 王城の奥で暮らし・・・いや監禁に近い生活だ。衣食住は保証されているが、父上達の許可が無ければ許された日以外、王城に出る事も許されない、なぜなら空の人を監禁したのは王族、しかも帝王と呼ばれた男だ王の髪はもちろん青である、その帝王には真面目な弟がいて、その弟がエニフ王国初代王になった。

 元々は帝国が起した戦争であったが、両国犠牲が多く王太子を亡くしたアウストラリス王国と条約を交わし、初代王が民に向け話す、戦争は何も残さないし犠牲が多すぎたと、身を守る以外の武器製造をその場で禁止した、民は空から降りて来た空の人の復習を恐れ、教会を建てアルゲティの銅像を作った。父上もアルゲティの信仰は深いだからなのだろう。

 父上には「髪色が何だって言うんだ!関係無いだろ?!」と何度も進言したが効果は無かった。

 そんなある日、たまたま教会関係者から話しが漏れてきた。
 あの忌々しい奴が生まれ変わり、しかも王太子の婚約者になっていると、お前この国の為に生きて罪を償え、
 本当なんでお前がのうのうと生きているんだ?納得がいかない!

 ・・・
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・ま・・。

「ワルド様!」

「あっ・・・悪い考え事してた」

 オレンジ髪の従者ファイは、主人は眉を寄せ不機嫌な顔だ、またあの話しを思い出しているのだと検討が付いた、
 ワルドはソファに寝転び欠伸をし、ファイの問いかけに眉間に眉を寄せる
 ファイは恭しく主人に頭を下げ告げる。

「ルピー姫がお待ちです。」

「はぁ・・・またあの話するのか・・・」

 ソファから乱暴に立ち上がると、黒髪をガシガシと搔く、ファイは静かに動くと扉の前に立ち扉を開け先に出る。この従者は護衛も兼ねていて王城での剣帯も認められている。

「案内を頼む」

 ただ広い廊下を従者と2人で歩く、ルピーの部屋がある静かな城の奥へと進み歩く、
 歴史の勉強がてら妹の面倒を見る事はいいが、可愛い妹にアルゲティの事を説明すると、天使様だと言い出した。可愛い妹にはそのアルゲティのせいで・・・などと言えず、俺はその話しに乗った・・・のが悪かった。

 ファイがノックをすると、唯一ルピーに仕えているメイドが扉を開け、俺達の顔を見ると扉の隣りに控え恭しく頭を下げる、

 この広い部屋でルピーは王族として扱われている、ルピーが自由行き来出来るのは、この部屋の奥にある小さな庭だけ、ここに来ると毎度の事だが苦々しく思いながら部屋の奥に進むと、ルピーはニッコリと笑うとスカートの端を摘み頭を下げる、

「ワルド兄様ようこそいらっしゃいました。」

「ルピーお招きありがとう」

 ルピーはまともな教育を受けておらず、父上はこのままルピーを一生閉じ込める気でいるらしい、たまに母上が来てはルピーの教育をしていて、その事を母上に聞いた俺も付き合っている、
 挨拶が終わるとすぐに、ルピーは俺を見上げるその青い瞳がキラキラさせ俺に飛び込んできた、

「ワルド兄様!」

「うわ!ルピー!」

 小さな妹だ軽々と受け止める、俺はルピーの青髪を優しく撫でる子供の髪は細く柔らかい、
 ルピーは満足したのか顔を上げて俺を見ると、ソファまで俺を引っ張り連れて行く、

「ワルド兄様天使様の話し早く教えて!」

 俺は眉が寄りそうになるが、自分が撒いた種だと眉間をグリグリと押す。
 ファイがスっとソファの横に来ると耳元で小さく呟く、ルピーは何を話しているのか分からず、青い瞳をキラキラさせ俺を見る、

「アウストラリス王国王太子の婚約者が、鎮魂祭の際に王太子と共にこちらに来るそうです。」

「分かった」

 俺はルピーの方に身体を向けると、生まれ変わったとは言わずにそのまま話す。

「ルピー隣りの国から天使様が来るぞ、来るのは鎮魂祭の時だ」

「ホントに!?」

 ルピーはその話に目をキラキラと輝かせ、もっと話しをしてとせがむ、
 俺はアウストラリス王国に住んでいる事、その王国の王太子と婚約している事や名前を教えた。

「トゥカーニャ?」

「トゥカーナだよルピー、」

 ルピーは大喜びしてメイドに言う、するとメイドは目尻を下げ共に喜んぶ、

「ルピー姫様ようございましたね。リリもそのご令嬢に会いとうございます。」

「トゥカーニャは天使様なんだって!私も会いたい!」

 リリはピクリと肩を揺らし表情を強ばらせ俺を見る、
 俺は頷くとリリは表情を和らげ、ルピーにまた来ると挨拶して退室した。

 俺から父上に言ってもらうよりも、母上からの方が話が通る、
 鎮魂祭前日まで色々とルピーの為に動き、アウストラリス王国から王太子達が来る日になった。

 ◆

 鎮魂祭前夜だと言うのに、行き交う人が多く賑わっている、俺は人々を掻き分け人混みに入ると、隣国からの客人の馬車列を見る、

 物語りに出て来る様な4頭の白い馬に引かれ、アウストラリス王国の紋章が入った白い馬車に乗り手を振る女を見る、
 外から入る風で東の国にある蘭に似た淡い紫色の髪が肩からサラリと流れ、白くきめ細かい肌を彩るのは大きな金色の瞳、その瞳を柔らかく曲げ手を振る人々に手を振る、
 4頭の白い馬が引く馬車が俺の前を通り過ぎる時トゥカーナと一瞬目が合う、トゥカーナは俺を見て大きく目を見開いていたが、俺は咄嗟に顔隠し暗い路地を従者と歩き王城の自室へと帰った。

「あいつ聞いた髪色と目色が違うじゃないか?!」

 自室で1人ブツブツと考え事している時にノックが鳴る、アウストラリス王国と挨拶を終えたルピーがファイと共に俺の自室へと足早にやって来た。
 ファイに聞くと扉の外で鉢合わせしたらしい、

 いつも後ろに居るルピー付きの侍女が見当たらず、もしかしたらまた小走りして、足の遅い年配侍女を置き去りにして来たのかもしれない、後からルピーの侍女が慌てて探しに来るだろう、やれやれとルピーを見た。

 ルピーはとても興奮した様子で俺の手を掴むと引っ張り歩く、俺はルピーの様子にビックリしたがルピーの行先が分かった、思わず顔が歪む、
 オレンジ髪の従者ファイは何も言わず俺の後を歩く、

「ワルド兄様早く!」

「待てルピー!」

 ニコニコと笑い俺の手を力強く引っ張る、
 今日は夕刻にトゥカーナに会えるからと、朝からお洒落する事はルピーから聞いていた、妹に会ったらまず褒めてやろうとも思った。こうもグイグイと引っ張り歩かれると褒める事も言えない、
 可愛らしいピンクと白いドレスを着て、ふわふわなスカートを揺らすと俺の手を小さな手で引っ張り小走りする。
 それよりも引っ張られながら可愛らしく着飾った妹を褒める、

「ルピー今日のドレス可愛いな」

 ルピーは立ち止まると顔を赤らめ無邪気に笑う、

「ありがとうワルド兄様!ルピーの好きな色のドレスを、かあさまが鎮魂祭のプレゼントよ!って」

「そうか良かったな!」

 ルピーは余程トゥカーナに会いたかったのだろう、たまに来る母上に、どうしてもトゥカーナに会いたいと、何度も言われたらしく、母上は涙ながらに父上に報告したら、父上は渋々許可したらしい、ルピーは母上と一緒に挨拶する事に決まったらしい、

 ルピーの青い髪を撫で、また引っ張られ客室の前迄来たので、ファイが客室をノックすると、トゥカーナの侍女が対応したが、ルピーは侍女の後ろからトゥカーナを見る、茶髪の侍女は驚いた様子だったが、この国の姫だと知ると頭を下げ道を開けた。

 流石に馬車から見てた人が、ここに居るとは思わないのだろう、挨拶の後にルピーを見て俺を見て、アルゲティと同じ色の瞳が一瞬強ばる、まさかアルゲティとしての記憶がある?その強ばりは他の奴には分からない程僅かだ、

 俺の従者と侍女が話をしているのを横目に見てトゥカーナと話すルピーを見る、目をキラキラとさせると俺と話すが、ルピーの侍女はルピーを心配顔で見ると、ルピーと共に王城の奥の部屋へと静かに帰って行った。ファイが俺に近づき呟く、

「ワルド様陛下が今日はもう姫を出すなと・・・」

 ファイも陛下の言葉を苦々しく思ったのだろう、けして顔には出さないが声は何時もより低い、
 俺も部屋を出ようと扉に向い歩くが、夕食にも来られないルピーの事を考えると、ふつふつと怒りが沸いてきた。

「お前達が隠しても俺は知っている、お前も是非と頼んだのは俺だ、ここでは誰とは言わないがお前アイツの生まれ変わりなんだってな!・・・後ルピーは夕食には来ない・・・全部お前のせいだ」

 近くに控えるメイドに聞こえない様に呟く、
 明らかに狼狽えたトゥカーナを見て確信した。
 頭を上げ甘く微笑む、これでメイドは挨拶だと思った筈だ、

「先程お会い出来ませんでしたので改めて挨拶をと、では後程夕食の席でお会いしましょう。」

 ファイを連れ客室を出た。
 父上に報告等しようものなら騒ぎになる、まずはトゥカーナ達が何しに来たのか動向を探る事にした。
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