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帝国編

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ふわふわな気持ちのまま可愛いらしいソファに座る、ロッテが慣れた手付きでお茶を入れテーブルに置き、アウラが退室した後から様子がおかしい私を心配顔で見る、
チラチラと様子を伺うロッテに微笑み「大丈夫」と言葉を掛け、出されたお茶を飲むと、窓から見える景色をぼんやりと見る。

人生初のキス・・・人差し指を唇に当てすぐ人差し指を離す。
今自分がした事を考えカーっと顔に熱を感じ、首を振り考えを止める。
そんな私にロッテはすかさず声を掛ける。

「お嬢様どうされたのですか?」

「何でもないの・・・お茶のおかわりお願い」

首を振り否定する。考えた事なんて言える筈もなく、茶器を持ち上げてしまった。
ロッテは頭を下げお茶の準備を始め、それを見て頭を切り替える・・・事が出来るならいいなぁ。ロッテに聞こえない様小さく息を吐く、


ロッテは慣れた手付きで緑茶を入れ、私の前にコトリと置く、緑茶を飲み渋みで心を落ち着かせる。ロッテが入れた緑茶は美味しく、ホッと息を吐く、

気持ちが落ち着いた頃、ノックが鳴るそれと同時に、私の鼓動は一気に跳ね上がった、それを抑える為お茶と一緒に色々な気持ちも飲み干す。

煌びやかな服装を着たアウラを見て、更に鼓動が速くなるのと同時に見蕩れてしまう。
私の姿を見るとにこやかにこちらへ来る。
チラリとアウラの表情を見ると何事も無かった様に振る舞い手を差し出す。

「カーナ行こうか」

「はい」

私はソファから、差し出された手を掴もうとアウラを見る、私を見るアイスブルーの双眼は熱を帯びている様に見え、差し出された手を取れず、躊躇ちゅうちょした。

「カーナ大丈夫?」

私はゆっくりとソファから立ち上がり、その間に素早く思考する。

王城から転移すれば、エニフ王国に最も近い場所になる。
そこはアルゲティが捕らえられ、空に帰った最後の場所であり、父様とうさまに掛けられた、魂と記憶の解除はそこで解放となる。母様かあさまが行ってはダメだと言っていた。不本意ではあるが探し物もある。

ゆっくり首を横に振り、ニッコリと微笑み手を取る、それにエニフ王国に行かなきゃ何も始まらないし、終わりもしない、

「大丈夫です。行きましょうアウラ様」

護衛に囲まれ豪華な廊下を歩く、
城外に行く為である。城からの転移魔法陣で行けるけど、民に公務してますよアピールも必要らしい、

城から大通りを王家の馬車で抜け、大きな転移魔法陣がある教会まで行く、普段から賑やかであろうこの通りは、今は大人から子供まで多くの人が王家の馬車を見て私達に手を振る、

私とアウラはにこやかに手を振り答える。王太子妃教育で教わった手の振り方は、
前世のあの方々をイメージすると分かりやすく、緩やかに振り時折頭を下げる、

「「「「王太子様、トゥカーナ様行ってらっしゃい」」」」

一際大きな声をくれた人達を見る、ケーティ、エリーゼ、同級生達が見送りに来ている様で、赤髪が目立つエリーゼは隅の方で小さく手を振っている、声に気が付いたアウラと見て、2人で手を振り答える、
先輩達や同級生達に、休暇明け話す事がまた増えたと、ケーティ達を見ながら「ありがとう」と小さくお礼を言う。

教会に着き馬車で正面まで行くと、関係者以外は立ち入り禁止となるのか、周りはとても静かになる、
改めて見る教会はとても大きく、ノートルダム大聖堂を思わせる雰囲気を持つ、教会長に案内をされ更に奥の魔法陣部屋に行く、

大きな転移魔法陣の部屋の前に、陛下と王妃、私の家族が勢揃いして私達を見送る。私は両陛下に丁寧な礼をし、私はそのまま両親の元へ、
アウラは陛下と話しをしている、

「トゥカーナ、気を付けて行ってらっしゃい」

お母様と兄様は微笑み見送る、久しぶりに見る兄様は一段とイケメン度が高くなった。
ベビーブルーの髪は、程よく固められ後ろに流し、エメラルド色の瞳は私を優しく見る、私は微笑みスカートの端を、ちょこんと持ち上げ綺麗に礼をする。

「お兄様、お母様行ってきます。」

「トゥカーナとても綺麗。行ってらっしゃい」

お母様は優しく微笑み兄様と一緒に綺麗な礼をし、2人は1歩後ろへ下がる
少し移動して姉様とお父様の前に立ち、私はスカートの端をちょこんと持ち上げ綺麗な礼をする。

「トゥカーナ約束覚えてる?お茶会しましょうね、行ってらっしゃい」

姉様はどこか寂しげに私を見る、私はそんな姉様に微笑み、「もちろんです行ってきます」と答えるだけに留める。

「トゥカーナ無理は禁物だよ、行っておいで」

お父様は仕事モードの微笑みをしていて、エメラルドの瞳を柔らかく曲げ私を見る、流石は微笑みの宰相である顔に出さない、だがそこはあえて見なかったフリをした。
家族にも言えない秘密・・・私はそんなお父様の目を見て「大丈夫です」と微笑む、
アウラが陛下達との話しが終わりこちらへ来る。

「カーナ行こう」

私とアウラは陛下に向かい合い、私はカーテシーを、アウラは最敬礼し陛下に挨拶をする。

「行ってまいります。アウストラリス王国の王太子として、エニフ王国を見てきます。」

わたくしもアウラ様と同じ物を見聞きして、同じ事を共感出来きる様に努めてまいります。」

私はニッコリと微笑み簡単な言葉だけを言う、余計な事は言ないここで言葉を詰まらせ、何も知らない家族に心配掛ける訳にもいかないから、

「うむアウラ、何かあればトゥカーナ嬢を助けよ、トゥカーナ嬢も何かあればアウラを頼る様に、」

陛下は目配せすると、教会長が頷き指示を出し、とても大きく重い扉を4人掛かりで開ける、目の前にはアルゲティの銅像があり。翼と手を広げ私達を見守る様にそこにある。

「行こうカーナ」

「はいアウラ様」

エスコートされ優雅に歩き、魔法陣の上で2人でもう一度振り返りペコリとお辞儀した。
ふとお父様を見る仕事顔が少し取れ、エメラルドの瞳は心配気に私を見る。
私は心配掛けない様もう一度微笑み、「行ってきます。」と小さく呟いた。

魔力を取られる感覚があり視界が変わる。
こちらも転移魔法陣部屋は大きく、ここも教会の様で修道服を着たシスター2人が頭を下げ大きく開けた扉の先にいて、後ろを振り向くとアルゲティの銅像も同じ所、同じポーズである。

「カーナ何か変化はありそう?」

「いいえ、今の所は何も・・・」

私達は移転魔法陣部屋を出ると、そのまま豪華な王家の馬車に乗り込む、前もって馬車を送っていたそうで、エニフ王国まで何台も連なって走る、
エニフ王国側に大きな転移魔法陣がある為、首都にその日の夕刻に着くらしい、馬車に乗り込む前にアウラがそう教えてくれた、
私達が乗り込むと馬車はゆっくり走り出す。
アウラは首を傾け憂い顔で私を見る。ブロンドの髪はサラリと目元に落ちそこに影を作る。

「カーナの体調が一番だから、無理なら言って欲しい」

アウラが私の事を思いやってくれる気持ちはとても嬉しい、しかし探し物がある・・・ゆっくり首を横に振る

「・・・・・・・・・し・・・な・・・き」

やっぱり話せない私は俯くと、首をゆっくり横に振る、アウラとの意思疎通が出来ずにいると、
アウラは私のスカートを踏まない様に席を詰め、そっと私の肩を優しく抱き寄せる。私はその行動に驚き、アウラに触られている肩、そして顔に熱が集まる様に熱くなった。

「大丈夫、分かってるから・・・」

「・・・ありがとうございます。」

少し甘えたくなり、アウラの肩に頭をちょこんと乗せる。
ぼんやりと外を見ると、整地された森を走っているらしく馬車の揺れはほぼ無く、木漏れ日が時折馬車に入り込み、とても癒される景色、

「アウラ様、ここは綺麗な所ですね」

「ここは避暑地でもあるんだ」

「避暑地ですか?暑い時期にアウラ様と一緒に来たいです。」

私は頭を肩に乗せたままアウラを見る。
アウラは私の頭を優しく撫で

「帰りに寄ろう、美味しい果実もある」

美味しい果実、そこで一瞬ピクリと反応してしまい、私はお腹をそっと押さえる、
それを見たアウラに「カーナらしい」と笑われてしまった。
私は恥ずかしくて、肩から頭を上げようとすると、何だか頭がクラクラする。
何かのチカラで強制的に眠らされそうになる感覚、それにあながえられず少しだけと目を瞑る。



ここは夢?大きなマントを被り暗い夜道を歩いている、マントから見える髪色はアルゲティの髪色なので、また記憶を見せられていると小さく息を吐く、
しばらく歩いていると、後ろから誰かに呼ばれ振り返る、そこからの私はアルゲティの記憶の見学者になり、トゥカーナは関与が出来ない。

「おっ!可愛い姉ちゃんじゃねーか!俺たちと遊ぼうぜ!」

「お断りします!」

胸を張りお断りをする。地の人は飛べないし、それ程怖くもない、
知らない男の人には着いて行ってはダメ!と母様と約束してるからね!

「おい!お前ら出てこい!」
「「「「へい!」」」」

物陰から何人も出てきた、これはヤバイ!逃げなきゃ!と考える前に、上から何かが落ちてきた。

「ひゃ!何これ?!嫌!助けて!」

翼が引っかかって取れない!もがいてる内に、大きなマントまで取れ、翼がまる見えになる。

「伝説の生き物ゲットだぜー!お貴族様に連絡しろ!」
「へい!」

男の一人が私の口を無理やりに開け、赤い飲み物を口に入れ飲ませる、かなり苦い味だ、それでも私は抵抗をする・・・その内に手足が痺れ、目を開けていられない。

「やだ・・・。や・・・め・・・。」

おい!こいつ運べ!その後ろの羽根は傷つけるなよ!
男達はアルゲティを、近くに止めてあった馬車の中に設置した檻に入れ、そのまま目的地へと行く、



頭がぼんやりとして目が覚めると、目の前に青髪で青眼の変な人が檻に手を掛け私を見ていた、

びっくりして思わず身構える、私の事を上から下へ舐め回す様な目で見て、気持ちが悪く嫌な感じの人、

「あなたは誰ですか?」
「俺はこの国の王だ!お前は俺様の為だけの装飾品になるのだ!」
「装飾品?って何です?」
「ひゃひゃひゃひゃひゃ!おい!コイツを連れ出せ!」
「はい。」

私は黒髪で赤目を持つ男に、四角い箱みたいな所から出された、今だ!と思っても翼が動かない!何で!何で!
私が焦っているのを見た、青髪の王は歯を見せニヤケた。

「お前の翼は飛べない様にしてある!アヒャアヒャ!」
「え?!何故そんな事?!」
「だってお前は今日から装飾品だから!」



私は、ピクリと震え目が覚めた。心臓は早鐘の様に鳴り響く、私の不調を見抜いたアウラは、馬車を止めようと手を伸ばしたが、私がそれを拒絶し首を横に振る。

「アウラ様・・・大丈夫です。」

少しうたた寝をしていた間に、エニフ王国に入ったらしい。

「カーナ顔色が悪い、帰ろう・・・カーナ?!」

アウラは驚き声を荒らげる、髪色は解除もしてないのに、少しづつ変わり、全ての髪がオーキッドに染まる。
あの夢を見た恐怖で、プルプル震える私はアウラを見上げる、

「カーナ!目の色が!」

「えっ!」

慌てて震える手で手鏡を取り出し見る、
瞳の色は金色・・・
魂と記憶の解除が始りを告げた、
それだけは分かった。
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