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学園編

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謁見の間を出る際にお父様と目が合う、その顔は心配げに、私の事を見ていて。私は後ろ髪が引かれる様に出た。その後すぐにアウラと一緒に学園へと戻り。
転移魔法陣の部屋から渡り廊下へと出ると、西日が渡り廊下に差し込んでいて、まだ太陽が出てる時間なのだとそこで実感をした。王城に居た時間は恐らく1時間位居たのだろうか?もっと長く居た様な感じはある為か、正直クタクタで早く寮に帰りたい。

「アウラ様。この指輪はお返しますね。」
「それはカーナが持っていて、」

指輪を返さなければと、指輪に手を掛け抜こうとする私を、アウラは自身の手で私の手を押さえる、その変わりにと、私の髪をひと房取り、口付けを落とす。

「カーナ平気?」
「はい大丈夫です・・・」

正直言えば大丈夫では無い、帝国の鎮魂祭の話しを聞き、神経も精神もかなりすり減っている。
疲れが出てきたのか足元がふらついて、フラフラしている私をアウラがヒョイと私をお姫様抱っこした。

「ひゃ!アウラ様?私重いですよ?」
「大丈夫だよカーナ、これでも鍛えてるからね」

いきなりお姫様抱っこをされ、何を思ったのか思わず口走った言葉が、重いですよ?とか無い!と自問自答をしていると、アウラはおでこに口付けした。その部分から顔が熱くなり、いきなりおでことはいえ口付けなんて・・・と私はアワアワと口を動かすしか出来ずにいて、アウラと目が合うと微笑まれてしまう。

「カーナどうしたの?顔が真っ赤だよ?」
「アウラ様?!何を!」
「カーナ、今ので帝国の話しなんて忘れたよね?」
「えっ?はい・・・確かにそうですが・・・」

確かに忘れたが、丸め込まれた感じもする。アウラにお姫様抱っこされているのも忘れ、逃げようと足をバタバタしてしまうが、足が地に着いてない事で今の現状を思い出す、今お姫様抱っこ中だった。
ジタバタしている私に、アウラは心底楽しそうに笑っている、そしてトドメの言葉が来る。

「カーナ?もう一度忘れたい?次はどの場所なら忘れるか、試す?」
「ひゃ!だ・・・大丈夫です。」

アウラは私の顔を覗き込むと、どこが良いか見定め始めた。
私は次が無いように、アウラの胸に顔を着け逃げる、その時にドクドクと私の手に、アウラの脈が分かった。
私は耳を当て聞く、凄い速いテンポで脈を打っていて、アウラもあんな恥ずかしい事を平気な顔でしているのに、本当は恥ずかしいのね。と思わず笑ってしまう。

「カーナ何笑っているの?」
「えっ!えーと・・・内緒です。」

私はアウラを見上げ、人差し指を口に当て微笑み
帝国から帰ったら教えてあげます。それだけは教え、
私達はそのまま学園の医務室に入ると診察した医師は疲労でしょうと判断をして、担任の名前私の名前を言うと、何かの魔道具で連絡をしている。私はそのままベッドへと寝かされ、しばらくすると姉様がバタバタと駆け込んでくる。

アリス先生は医務室に入ると、私を見付けると凄い速さで傍に来て、私の手をガッチリと掴んで離さない。オマケに私の手を握る前に、アウラを手で退けた。なんだろ?私は入学式の再来を見てる様な感覚を覚えた。・・・気絶したい。

「トゥカーナ?大丈夫!」
「姉様?あっ・・・アリス先生!大丈夫です。」
「アリス先生?僕も居るのですが!」
「ここで騒ぐなら出ていきなさい!」

そんなやり取りを聞いていた医師に、2人は追い出される。まだ外に居るのか、2人のやり取りが聞こえる私は医師に謝ると、大丈夫そうなら帰れると言われたが、今は出たくない。私がベッドの上掛けを掴んで首を振ると、医師は静かになる迄ゆっくりしてなさい。と頭を撫でるとカーテンを閉め、コツコツと音がした後に椅子が軋む音がしてから、自分の机へと戻ったみたい。

私は大きな安堵の息が出る、先程のアウラとの転移魔法陣からのあの出来事を思い出すと、顔が熱くなるのが分かり、顔を手でパタパタと扇ぎ熱を下げる。その内に汗迄出きた。頭もクラクラとしだしたが、あの事を考えてたから?
その後しばらくパタパタとしていたが、熱が下がらず
本格的に目が回る、丁度様子を見に来た医師が私の顔見て慌てる。がその医師が呼ぶ声は遠くに聞こえる。
・・・・・・。








気が付くと、私はまたあの白い世界にいる。慌てて後ろを振り向くが翼は無かった。そして拍子抜けをする。
毎回ある物が無いと、何かあるのかと身構えてしまう、そのままでどれ程時間が過ぎただろうか?

そのままでは疲れてしまい、その場に座り込む。
上を見ても下を見ても真っ白で・・・。
私は訳がわからず、頭を抱え考える・・・が、わからなかった。

「父様・・・助けて!」

困り果てて思わず父様を呼んでしまうが、後悔はしないどうにかしないと、ここから出られないのだから、
すると光がキラキラと降り注ぐが、いつもと様子が違う何が違うとは言えないが、何かが違う。

そのまま光が降りた先を見ると、オーギット色のストレートの髪は腰迄あり、その髪がサラサラと風でなびいている、翼がある部分の髪は背中にあるのか、その人の目の前に座り込んでいる、私からは見えない、私はこの人を知っている。夢で見た人・・・

「母様・・・。」

母様はぱちくりと目を瞬くと、私に飛び込んで来る
私は飛んで来たのを受け止める為、両手を広げた。

「私の事分かるのね!」
「はい!母様の事は夢で見ました。」

あれ?でも私は父様を呼んだのに・・・と思い私の胸に顔を埋めている母様の顔を見る、が私の胸を鷲掴みしてそこから離れた。鷲掴みされた私は声を上げる

「ひゃ!母様何するのですか?!」
「・・・プファ・・・!ごめん、お胸が大きいから息が苦しくて」

私の顔を見てニッコリと笑う母様に、私は怒る気が無くなり、聞こうと思っていた事を聞く、

「私は父様を呼んだのですが?」
「そう!でも・・・私の事をちっとも呼んでくれないから、あの人と言い合いをして勝ったの!きゃー!」
「えー!!」

母様は両手を頬に手を当て、私の質問に答える。
夢と今のやり取りで、母様は天然だと思ってました。まさかの口喧嘩はかなり強いとか?私はちょっと口を滑らせた。

「母様はどうやって勝ったのですか?」
「ププッ!父様にこう言ったのよ!あんまりしつこいと、アルゲティに嫌われるわよ!って」

な・・・なんと!そんな事言ったのですか?母様!次父様に会った時の対処法が分かった!と、ニヤニヤしていると母様が私に爆弾を放り込む、

「今はトゥカーナなのよね。私はね知ってるのよ!ダンスレッスン苦手でしょ?」
「ひゃ!なんでそれを!」
「それと、あの男の子におでこにキスされて、赤くなってる貴女は可愛かったわ!」
「ひぃー!母様なんでそれを!?」
「だって可愛い娘だもの!フフフ・・・何でも知ってるの。」

父様が母様に敵わない理由が分かった気がする。
それとねー!とまた違う事を、言おうとしている母様に、私は母様の口を止めようと思い、私がこの世界に来た理由を聞くことにした。

「母様・・・私はなぜここに居るのでしょうか?」
「えっ!知らないの?」
「はい。なぜ・・・ここに?」
「それは、私にもわからないわ。」

母様は私の頬に手を当て、私の目を覗き込む様に見るが、私はここに居る理由がわからなくて聞いたのに、知りたい答えの、更なる上の回答をもらい戸惑う。何かを知った母様は、私からふわりと離れ、両手をパチンと鳴らす。すると急な眠気に襲われる。

トゥカーナアルゲティ貴女は、誰?」
「私は・・・トゥカーナです。」

はい、よく出来ました!と頭を撫でる。すると凄く眠くなり目を開けていられなくなる。

「母様・・・。」
「もし次に、父様と会う事があったら、私の事を呼びなさい。」

ニッコリと笑う母様に、私は眠気で何も言えずに頷くだけでそれを答える。

・・・またねトゥカーナアルゲティ私の可愛い娘。

私はそこで眠気に勝てず寝てしまった様だ。
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