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第4章 いろいろ巻き込まれていく流れ

86話 教会からの依頼 ー オイ氏のフラグ ー

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「ジョージも次から次にトラブルに巻き込まれるのぉ……」

 教会でカヌウ丼を振る舞った翌日、お昼ご飯を食べに来てくれたオイ氏から呆れられた。

「こっ、今回のことは俺は悪くありませんよね!?」

「まぁ教会の助祭や司祭に頼みごとをされては断れんじゃろうがのぉ」

「しかしまぁジョージくんは災難だったな。最初に話を聞いた時は、シジル様がカヌウを食べたがっているなんて冗談だと思ったよ、俺も」

「ガードスさんずっと笑ってましたもんね」

「すまんすまん! だがな、誰に言っても冗談話だって思われる内容なんだよ! ジョージくんのおかげで少し偏見がなくなったとはいえ、教会は治療費をぼったくって贅沢三昧だって思ってる人の方が多いからね」

 偏見を持ってる人は、まさか体制を整えて24時間医療に当たってるなんて思ってないんだろうな。

「まぁシジルのやつは若い頃から美味いものに目がない変わり者じゃったからの」

 ふとオイ氏が懐かしそうに呟いた。

「オイさんはシジル様のことを昔から知ってるんですか?」

「ありゃ、言っとらんかったかの? 先代の司祭から神なる力を見出されるまで、短い間じゃったがシジルは冒険者じゃったんじゃぞ?」

「「えぇぇっ!?」」

「ワシと同じパーティーじゃったし」

「「えぇぇぇぇぇっ!?」」

「ちなみに冒険者ギルドのビービーも同じパーティーじゃったんじゃぞ?」

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ~!?」」

 他にお客様がいなくてよかった。
いや、他のお客様がいなくなったタイミングで話し出したんだけど、こんな大声絶対に迷惑だったろう。

「ガードスさん、オイさん、それからみんな。再三になるけどこのことは……」

「うむ、もちろん口外しない。シュビルツにも再度念押ししておくよ」

「ワシもわざわざ言わんわい」

「私達も絶対に言いません!」

「言っても誰も信じないだろうし……」

 ミーニャが代表で宣言し、ジャックがボソリと呟いた。

「さてさて、すっかり長居してしまったのぉ」

「本当ですな。私もそろそろ戻るとします」

 そう言って2人同時に立ち上がったのだが、最後の最後にオイ氏がこんなことを言い残していった。

「ワシの予想なんじゃがの? シジルのやつ、いずれ教会を抜けだしてくると思うぞ?」

 衝撃を受けて固まってしまう俺を後目に、オイ氏は楽し気に笑いながら退店していくのであった。
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