異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木

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第4章 いろいろ巻き込まれていく流れ

82話 教会からの依頼 ー 呼び止め ー

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「それじゃあ働きすぎには気をつけるんじゃぞ!」

「はい、気をつけます」

 商業ギルドに売上帳簿を提出しに来たんだけど、たまたまギルド内を巡回していたオイ氏に捕まった。
先週の特別営業のことをオイ氏も当然知ってるから、「10日までに提出すればいいんじゃから、もうちっとゆっくりせい!」というお小言をいただいたのだった。このへんがまだまだ社畜癖が抜け切れてないんだろうな。

 店に戻る道中、飲食街や商店街を冷やかしながら歩いているうちに教会の前に差し掛かった。
今日も教会の大きな扉は外に開かれているけど、利用者はまばらなようだ。病気やケガをしている人が少ないんならいいけど、教会の料金の高さが原因で人が少ないとしたら何とも微妙な気持ちになってしまう。

 そんなことを考えながら教会の前を通り過ぎようとしていると、いきなり教会の敷地から「ジョージ様!」という声が聞こえてきた。何事かと思って立ち止まって振り向く。声の主はこちらに走り寄ってきている見覚えのある女性のようだ。

「すっすみません、いきなりお呼びしてしまって」

 ハァハァと息を切らしているのは、キャトンのお見舞いに来た時に対応してくれたシスターだった。

「いえいえ。私に何か御用ですか?」

 寄付の件はちょっと前にシジル様とイルーノ様にお礼を伝えられたし、教会の人に呼び止められるようなことはしてないはずなんだけど。

「いっ今、少しだけお時間をいただけないでしょうか?」

「今からですか?」

「もちろん無理にとは言いませんが……」

 う~む、どうだろうか?
今日は全員出勤だから、提供数が増えたけど仕込みは問題ないと思う。店を出る前には掃除もほとんど終わってたし、夜営業が始まる前までに戻れば大丈夫かな。

「大丈夫ですよ」

「ありがとうございます! ではどうぞ中へ」

 応接室に案内されるまでの間に彼女の名前がマリアだという話を聞き、どこまで神を信じてそうな人間ばかり集まってるんだと苦笑いしてしまった。

「ではイルーノ様を呼んできますので少々お待ちください」

 ん? 聞き間違いだよね?

「えっと、誰を呼んでくると?」

「イルーノ様です」

 笑顔でそう言い残して出ていくマリアさん。
彼女の姿が見えなくなった瞬間、思わず大声で叫んだ。

「Oh my God !! 恨むぜルギスンジビ様よぉぉ!!」

 この後、久しぶりに思いっきり小指をぶつけた。
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