81 / 96
第4章 いろいろ巻き込まれていく流れ
81話 世間話と外出
しおりを挟む
7月1日、月曜日の日替わり定食であるショウガ焼きを満足気に食べていたガードスさんが興味深い話を聞かせてくれた。
「魔の森の調査ですか?」
「あぁ。ジョージくん達が巻き込まれることになったカヌウの大量繁殖だが、原因を正式に調査することになったらしい。それにしても先週はカヌウばっかりだったから、ボアを久々に食べた気がするよ」
特別営業の時にガードスさんも何度か来店してくれていたので、カヌウに多少飽きていたのかもしれない。
いや、今はそれはどうでもいいな。
「コスタスさんの隊が調査に出たんですか?」
「ああ。最初は警備隊に話が来たんだが、俺達は騎士団ほど人数が多いわけじゃないし、もし何か異常事態が起きていた時、実戦経験の面でも装備の面でも不安しかないからね」
警備隊が使用しているのは少し耐久性の高い革の装備と量産型の鉄剣らしく、あくまで王都内での人対人との揉め事を想定した最低限の装備だという。
詳しくはわからないけど、上位の魔物と対峙するには心もとないんだろう。
ちなみに騎士団に支給されている白銀の装備はミスリル製で、耐久性が高いのはもちろん魔法への抵抗力も高いのだという。
「無事に帰ってきてほしいですね」
この世界が異世界だということを改めて思い知らされた俺はつい口に出してしまったが、ガードスさんが「余程のことがない限りコスタスは魔物なんかに遅れを取ったりしないよ」と笑い飛ばしてくれたので少し安心した。
「それよりホントに料理の提供数を増やしてくれたんだね。おかげでこうやって無事に昼飯にありつくことができたよ」
「ガードスさん以外にも提供数の増加を望んでくださる方がたくさんいましたし、先日までの特別営業のおかげでうちのスタッフ達もかなりレベルアップしましたからね」
そう、7月から料理の提供数を増やすことにしたのだ。
日曜日に関係各所へ走り、今日からの仕入れの数を増やしてもらった。
特別営業最終日、閉店後は盛り上がりに盛り上がりすぎて7月からの提供数をどうするか話し合うような雰囲気じゃなかったから、今日全員が出勤してから話を切り出し、全員が賛成してくれたのでいきなりではあるけど実行することになった。
(ヌコヌコさんに野菜の数を増やしてもらうよう頼んだから、そこからミーニャ経由で全員に話がいってたみたいだしな)
みんな心のどこかで覚悟を決めて出勤してきたんだろう、ほとんど二つ返事で決定し仕込み作業も淀みなく進んでいた。
昼は20食増やし全50食分、夜は10食増やし全30食となるが、今のところ何も問題はなさそうだ。
「しかし料理数を増やしたのに今日もギリギリだったからな。これは本当に急かすわけでも何でもなく純粋な質問なんだが、従業員を増やしたりはしないのかね?」
「ゆくゆくは増やすつもりですよ。もう少しぐらいは余裕があると思いますけど、もっと料理の提供数を増やすとなったらさすがに人手が足りないですからね。1日の仕事がキツいだけじゃなくて、休みが回らなくなったらかわいそうですし」
これは特別営業の時に痛感したことだった。
いくらみんなが言い出したこととはいえ、特別営業中は普段のローテーションでの休みは一時中止となり、全員が1週間フル出勤だった。
何とか6日間乗り越えたものの、例えば誰かが体調を崩してしまっていたらあそこまでスムーズに回すことはできなかっただろう。
「ジョージくんはホントにスタッフのことを考えているな。俺も見習わんといけんな」
しばらくそんな世間話をし、満腹になったガードスさんは職務へと戻っていった。
「みんな、ちょっと商業ギルドに用事があるから仕込みとか任せちゃっても大丈夫かな?」
手際よく片付けや夜の仕込みをしているスタッフ達に声をかけ、売上帳簿を提出するために俺は商業ギルドへと向かった。
「魔の森の調査ですか?」
「あぁ。ジョージくん達が巻き込まれることになったカヌウの大量繁殖だが、原因を正式に調査することになったらしい。それにしても先週はカヌウばっかりだったから、ボアを久々に食べた気がするよ」
特別営業の時にガードスさんも何度か来店してくれていたので、カヌウに多少飽きていたのかもしれない。
いや、今はそれはどうでもいいな。
「コスタスさんの隊が調査に出たんですか?」
「ああ。最初は警備隊に話が来たんだが、俺達は騎士団ほど人数が多いわけじゃないし、もし何か異常事態が起きていた時、実戦経験の面でも装備の面でも不安しかないからね」
警備隊が使用しているのは少し耐久性の高い革の装備と量産型の鉄剣らしく、あくまで王都内での人対人との揉め事を想定した最低限の装備だという。
詳しくはわからないけど、上位の魔物と対峙するには心もとないんだろう。
ちなみに騎士団に支給されている白銀の装備はミスリル製で、耐久性が高いのはもちろん魔法への抵抗力も高いのだという。
「無事に帰ってきてほしいですね」
この世界が異世界だということを改めて思い知らされた俺はつい口に出してしまったが、ガードスさんが「余程のことがない限りコスタスは魔物なんかに遅れを取ったりしないよ」と笑い飛ばしてくれたので少し安心した。
「それよりホントに料理の提供数を増やしてくれたんだね。おかげでこうやって無事に昼飯にありつくことができたよ」
「ガードスさん以外にも提供数の増加を望んでくださる方がたくさんいましたし、先日までの特別営業のおかげでうちのスタッフ達もかなりレベルアップしましたからね」
そう、7月から料理の提供数を増やすことにしたのだ。
日曜日に関係各所へ走り、今日からの仕入れの数を増やしてもらった。
特別営業最終日、閉店後は盛り上がりに盛り上がりすぎて7月からの提供数をどうするか話し合うような雰囲気じゃなかったから、今日全員が出勤してから話を切り出し、全員が賛成してくれたのでいきなりではあるけど実行することになった。
(ヌコヌコさんに野菜の数を増やしてもらうよう頼んだから、そこからミーニャ経由で全員に話がいってたみたいだしな)
みんな心のどこかで覚悟を決めて出勤してきたんだろう、ほとんど二つ返事で決定し仕込み作業も淀みなく進んでいた。
昼は20食増やし全50食分、夜は10食増やし全30食となるが、今のところ何も問題はなさそうだ。
「しかし料理数を増やしたのに今日もギリギリだったからな。これは本当に急かすわけでも何でもなく純粋な質問なんだが、従業員を増やしたりはしないのかね?」
「ゆくゆくは増やすつもりですよ。もう少しぐらいは余裕があると思いますけど、もっと料理の提供数を増やすとなったらさすがに人手が足りないですからね。1日の仕事がキツいだけじゃなくて、休みが回らなくなったらかわいそうですし」
これは特別営業の時に痛感したことだった。
いくらみんなが言い出したこととはいえ、特別営業中は普段のローテーションでの休みは一時中止となり、全員が1週間フル出勤だった。
何とか6日間乗り越えたものの、例えば誰かが体調を崩してしまっていたらあそこまでスムーズに回すことはできなかっただろう。
「ジョージくんはホントにスタッフのことを考えているな。俺も見習わんといけんな」
しばらくそんな世間話をし、満腹になったガードスさんは職務へと戻っていった。
「みんな、ちょっと商業ギルドに用事があるから仕込みとか任せちゃっても大丈夫かな?」
手際よく片付けや夜の仕込みをしているスタッフ達に声をかけ、売上帳簿を提出するために俺は商業ギルドへと向かった。
0
お気に入りに追加
1,136
あなたにおすすめの小説
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる