77 / 96
第4章 いろいろ巻き込まれていく流れ
77話 舞い込んだ依頼 ー 特別営業1日目終了後 ー
しおりを挟む
「お~いみんな、生きてるかぁ?」
特別営業1日目の終了後、俺を除く全員がホールのテーブルに突っ伏していた。
ちなみに、『全員』の中には行列の整理をしてくれていた冒険者ギルドの職員さんも含まれている。
「やっぱり店長はすごいです……」
「誰よりも動いてたのに……」
「尊敬……」
うちのスタッフが口々に褒めてくれて、「前もこんなことあったな」なんて思いながらニヤニヤしてしまう。
「確かにジョージさんはすごい……」
「行列の整理なんて楽勝だとナメてた……」
「精神的にクる仕事だった……」
すっかりヘバッてしまった冒険者ギルドの職員さんも口々に褒めてくれ、様子を見に来たビービーさんが苦笑いしていた。
昼の営業も夜の営業もお客様を待たせすぎることはなかったんだけど、それでも「早く案内しろ!」といった理不尽なクレームは多かったし、せっかく店の外の壁にも注意書きの紙を多めに貼ってたのに、それらを一切読むことなく入店してくる人も少なくなかった。
「冒険者ギルドの皆さんも本当にありがとうございました。これでも食べて元気出してください」
お昼の賄いで牛丼ならぬカヌウ丼を出したので、夜は別メニューがいいかと思って肉野菜炒めにした。もちろんカヌウ肉を使ってる。
「「ありがとうございます!」」
「「いただきます!」」
現金だなぁなんて笑っていると、ビービーさんが「お前達、ちっとは遠慮する素振りぐらい見せなよ」と再び苦笑いした。
普段は談笑しながら食べるうちのスタッフ達も、さすがに今日は口数が少ない。
「ジョージ、あんたはホントに平気なのかい?」
ビービーさんが食べながら尋ねてきた。
もちろんビービーさんにも同じメニューを出している。
「あっ、俺は本当に平気ですよ。これぐらいは慣れているので」
前働いてた店はランチタイムだけで300人以上のお客様が来てたからね。
ぶっちゃけ100人なんて「今日は暇だね」レベルである。
「ホント頼もしいねぇ。ちなみにだけどさ、ギルドからもう何人か人を出せばあんた達は楽になるかい?」
「そうですね。今日は行列の整理だけで手一杯だったと思いますけど、もっと人数がいて事前に説明とかシステムを詳しく説明できれば、もっと楽になると思います」
レジ前で説明する手間がなければもっとスムーズに案内できてたし、クレームも少なかったと思う。
そういった手間のせいで、水の補充が遅れたり返却口の片付けが遅れたりもしたんだよなぁ。
「じゃあ明日はもっと人員を増やすからさ、もうちっとだけ協力してもらえるかい?」
「もちろんです」
返事を聞いたビービーさんはニコニコ顔だったけど、それも無理はないだろうね。
うちの店だけで、今日だけで30㎏以上の肉を使用してるもんな。
カヌウの肉の話を聞いた時は「うちの店だけで解決できるのかな?」とか考えたけど、よくよく話を聞くと1つの冒険者パーティーがカヌウ1頭分の肉を丸々持ち込むわけではないとのことだった。
「大人のカヌウは体重が800~1,000㎏ぐらいあるからね。その全部を持ち帰るなんて無理だから、比較的肉質が良いところだけを切り取ってくるんだよ」
4~5人のパーティーでも、持ち込まれる肉は100kgいくかいかないかぐらいらしい。
カヌウは新米の冒険者でも2人いれば狩れるらしいので、その場合はホントに一抱え分、30~50㎏が関の山なんだと。
(まぁ他にも自分の荷物とかもあるだろうし、肉だけ大量に持ち帰れないんだろうな)
しかしそれでも持ち込む人数が人数だったので、在庫は増えに増えたらしいんだけどね。
さてさて、問題はそんなところじゃない。
ようやく元気が出てきたうちのスタッフ達に確認しないといけないことがある。
「明日からの休みだけど、普通どおりに回しても大丈夫そうかな?」
全員がハッとした。
月曜日は元々ローテーションの休みがないから、今日はフルメンバーで臨むことができた。
しかし順当にいけば、明日はキャトンが休みの予定だ。
「冒険者ギルドの職員さんをもう少し増やしてくれるみたいだから、外のこととかレジのことは今日ほど気にしないでよくなるかもしれない。ちょっとキツいとは思うけど、いつもどおりに休みを回そうか?」
今日1日でこれだけ疲れてるんだ、みんなしっかり休みたいだろう。
しばらくの沈黙を経て、いつもどおりなら明日休みのキャトンが口を開いた。
「あの……」
特別営業1日目の終了後、俺を除く全員がホールのテーブルに突っ伏していた。
ちなみに、『全員』の中には行列の整理をしてくれていた冒険者ギルドの職員さんも含まれている。
「やっぱり店長はすごいです……」
「誰よりも動いてたのに……」
「尊敬……」
うちのスタッフが口々に褒めてくれて、「前もこんなことあったな」なんて思いながらニヤニヤしてしまう。
「確かにジョージさんはすごい……」
「行列の整理なんて楽勝だとナメてた……」
「精神的にクる仕事だった……」
すっかりヘバッてしまった冒険者ギルドの職員さんも口々に褒めてくれ、様子を見に来たビービーさんが苦笑いしていた。
昼の営業も夜の営業もお客様を待たせすぎることはなかったんだけど、それでも「早く案内しろ!」といった理不尽なクレームは多かったし、せっかく店の外の壁にも注意書きの紙を多めに貼ってたのに、それらを一切読むことなく入店してくる人も少なくなかった。
「冒険者ギルドの皆さんも本当にありがとうございました。これでも食べて元気出してください」
お昼の賄いで牛丼ならぬカヌウ丼を出したので、夜は別メニューがいいかと思って肉野菜炒めにした。もちろんカヌウ肉を使ってる。
「「ありがとうございます!」」
「「いただきます!」」
現金だなぁなんて笑っていると、ビービーさんが「お前達、ちっとは遠慮する素振りぐらい見せなよ」と再び苦笑いした。
普段は談笑しながら食べるうちのスタッフ達も、さすがに今日は口数が少ない。
「ジョージ、あんたはホントに平気なのかい?」
ビービーさんが食べながら尋ねてきた。
もちろんビービーさんにも同じメニューを出している。
「あっ、俺は本当に平気ですよ。これぐらいは慣れているので」
前働いてた店はランチタイムだけで300人以上のお客様が来てたからね。
ぶっちゃけ100人なんて「今日は暇だね」レベルである。
「ホント頼もしいねぇ。ちなみにだけどさ、ギルドからもう何人か人を出せばあんた達は楽になるかい?」
「そうですね。今日は行列の整理だけで手一杯だったと思いますけど、もっと人数がいて事前に説明とかシステムを詳しく説明できれば、もっと楽になると思います」
レジ前で説明する手間がなければもっとスムーズに案内できてたし、クレームも少なかったと思う。
そういった手間のせいで、水の補充が遅れたり返却口の片付けが遅れたりもしたんだよなぁ。
「じゃあ明日はもっと人員を増やすからさ、もうちっとだけ協力してもらえるかい?」
「もちろんです」
返事を聞いたビービーさんはニコニコ顔だったけど、それも無理はないだろうね。
うちの店だけで、今日だけで30㎏以上の肉を使用してるもんな。
カヌウの肉の話を聞いた時は「うちの店だけで解決できるのかな?」とか考えたけど、よくよく話を聞くと1つの冒険者パーティーがカヌウ1頭分の肉を丸々持ち込むわけではないとのことだった。
「大人のカヌウは体重が800~1,000㎏ぐらいあるからね。その全部を持ち帰るなんて無理だから、比較的肉質が良いところだけを切り取ってくるんだよ」
4~5人のパーティーでも、持ち込まれる肉は100kgいくかいかないかぐらいらしい。
カヌウは新米の冒険者でも2人いれば狩れるらしいので、その場合はホントに一抱え分、30~50㎏が関の山なんだと。
(まぁ他にも自分の荷物とかもあるだろうし、肉だけ大量に持ち帰れないんだろうな)
しかしそれでも持ち込む人数が人数だったので、在庫は増えに増えたらしいんだけどね。
さてさて、問題はそんなところじゃない。
ようやく元気が出てきたうちのスタッフ達に確認しないといけないことがある。
「明日からの休みだけど、普通どおりに回しても大丈夫そうかな?」
全員がハッとした。
月曜日は元々ローテーションの休みがないから、今日はフルメンバーで臨むことができた。
しかし順当にいけば、明日はキャトンが休みの予定だ。
「冒険者ギルドの職員さんをもう少し増やしてくれるみたいだから、外のこととかレジのことは今日ほど気にしないでよくなるかもしれない。ちょっとキツいとは思うけど、いつもどおりに休みを回そうか?」
今日1日でこれだけ疲れてるんだ、みんなしっかり休みたいだろう。
しばらくの沈黙を経て、いつもどおりなら明日休みのキャトンが口を開いた。
「あの……」
0
お気に入りに追加
1,140
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

転生しても山あり谷あり!
tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」
兎にも角にも今世は
“おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!”
を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

社畜生活の果て、最後に師匠に会いたいと願った。
黒鴉宙ニ
ファンタジー
仕事、仕事、仕事。果てのない仕事に追われる魔法使いのモニカ。栗色の艶のあった髪は手入れができずにしなびたまま。師匠は北東のダンジョンへ行っており、その親友であるリカルドさんが上司となり魔物討伐を行う魔法部隊で働いている。
優しかったリカルドさんは冷たくなり、同僚たちとは仲良くなれない。そんな中、ようやく師匠帰還のめどがついた。そして最後に師匠へ良い知らせを送ろうと水竜の討伐へと向かった──。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

王国冒険者の生活(修正版)
雪月透
ファンタジー
配達から薬草採取、はたまたモンスターの討伐と貼りだされる依頼。
雑用から戦いまでこなす冒険者業は、他の職に就けなかった、就かなかった者達の受け皿となっている。
そんな冒険者業に就き、王都での生活のため、いろんな依頼を受け、世界の流れの中を生きていく二人が中心の物語。
※以前に上げた話の誤字脱字をかなり修正し、話を追加した物になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる