異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木

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第4章 いろいろ巻き込まれていく流れ

77話 舞い込んだ依頼 ー 特別営業1日目終了後 ー

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「お~いみんな、生きてるかぁ?」

 特別営業1日目の終了後、俺を除く全員がホールのテーブルに突っ伏していた。
ちなみに、『全員』の中には行列の整理をしてくれていた冒険者ギルドの職員さんも含まれている。

「やっぱり店長はすごいです……」
「誰よりも動いてたのに……」
「尊敬……」

 うちのスタッフが口々に褒めてくれて、「前もこんなことあったな」なんて思いながらニヤニヤしてしまう。

「確かにジョージさんはすごい……」
「行列の整理なんて楽勝だとナメてた……」
「精神的にクる仕事だった……」

 すっかりヘバッてしまった冒険者ギルドの職員さんも口々に褒めてくれ、様子を見に来たビービーさんが苦笑いしていた。

 昼の営業も夜の営業もお客様を待たせすぎることはなかったんだけど、それでも「早く案内しろ!」といった理不尽なクレームは多かったし、せっかく店の外の壁にも注意書きの紙を多めに貼ってたのに、それらを一切読むことなく入店してくる人も少なくなかった。

「冒険者ギルドの皆さんも本当にありがとうございました。これでも食べて元気出してください」

 お昼の賄いで牛丼ならぬカヌウ丼を出したので、夜は別メニューがいいかと思って肉野菜炒めにした。もちろんカヌウ肉を使ってる。

「「ありがとうございます!」」
「「いただきます!」」

 現金だなぁなんて笑っていると、ビービーさんが「お前達、ちっとは遠慮する素振りぐらい見せなよ」と再び苦笑いした。

 普段は談笑しながら食べるうちのスタッフ達も、さすがに今日は口数が少ない。

「ジョージ、あんたはホントに平気なのかい?」

 ビービーさんが食べながら尋ねてきた。
もちろんビービーさんにも同じメニューを出している。

「あっ、俺は本当に平気ですよ。これぐらいは慣れているので」

 前働いてた店はランチタイムだけで300人以上のお客様が来てたからね。
ぶっちゃけ100人なんて「今日は暇だね」レベルである。

「ホント頼もしいねぇ。ちなみにだけどさ、ギルドからもう何人か人を出せばあんた達は楽になるかい?」

「そうですね。今日は行列の整理だけで手一杯だったと思いますけど、もっと人数がいて事前に説明とかシステムを詳しく説明できれば、もっと楽になると思います」

 レジ前で説明する手間がなければもっとスムーズに案内できてたし、クレームも少なかったと思う。
そういった手間のせいで、水の補充が遅れたり返却口の片付けが遅れたりもしたんだよなぁ。

「じゃあ明日はもっと人員を増やすからさ、もうちっとだけ協力してもらえるかい?」

「もちろんです」

 返事を聞いたビービーさんはニコニコ顔だったけど、それも無理はないだろうね。
うちの店だけで、今日だけで30㎏以上の肉を使用してるもんな。

 カヌウの肉の話を聞いた時は「うちの店だけで解決できるのかな?」とか考えたけど、よくよく話を聞くと1つの冒険者パーティーがカヌウ1頭分の肉を丸々持ち込むわけではないとのことだった。

「大人のカヌウは体重が800~1,000㎏ぐらいあるからね。その全部を持ち帰るなんて無理だから、比較的肉質が良いところだけを切り取ってくるんだよ」

 4~5人のパーティーでも、持ち込まれる肉は100kgいくかいかないかぐらいらしい。
カヌウは新米の冒険者でも2人いれば狩れるらしいので、その場合はホントに一抱え分、30~50㎏が関の山なんだと。

(まぁ他にも自分の荷物とかもあるだろうし、肉だけ大量に持ち帰れないんだろうな)

 しかしそれでも持ち込む人数が人数だったので、在庫は増えに増えたらしいんだけどね。

 さてさて、問題はそんなところじゃない。
ようやく元気が出てきたうちのスタッフ達に確認しないといけないことがある。

「明日からの休みだけど、普通どおりに回しても大丈夫そうかな?」

 全員がハッとした。

 月曜日は元々ローテーションの休みがないから、今日はフルメンバーで臨むことができた。
しかし順当にいけば、明日はキャトンが休みの予定だ。

「冒険者ギルドの職員さんをもう少し増やしてくれるみたいだから、外のこととかレジのことは今日ほど気にしないでよくなるかもしれない。ちょっとキツいとは思うけど、いつもどおりに休みを回そうか?」

 今日1日でこれだけ疲れてるんだ、みんなしっかり休みたいだろう。

 しばらくの沈黙を経て、いつもどおりなら明日休みのキャトンが口を開いた。

「あの……」
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