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第3章 いわゆるアナザーストーリーってやつ

60話 変わり出す運命①

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 月曜日の日替わり定食、ショウガ焼きを作ってると思い出すことがある。



「こ、こ、こ、こんにちは…… ハァッハァッ」

 あの日、いつものように露店でお野菜を売っていると、息を荒げてニコニコと話しかけてくる変な男の人が現れた。

 王都では禁止されてるけど、他の国では獣人は差別されたり奴隷にされてることを私は知ってる。
だから獣人に興奮してるアブナイ人だと思ったの。

「い、いらっしゃいませ……」

 何とか絞り出した挨拶の声が震えるのが自分でもわかった。

 その後の『ハァッハァッ、ご、ごめんね驚かせて』って言葉も、なんとか私を丸めこもうとしてるんだって思った。

(私みたいなちっちゃな子に興奮してるの!?)

 1人身の危険を感じていると、男の人はふと並べられた野菜に目を移した。

 野菜を見るその眼差しは、ホンットに真剣だったの!

 さっきまで興奮して息を切らしていた人とは思えないぐらい、とても温かい目で野菜を見てた。

(悪い人じゃないのかな?)

 そう油断したのが悪かったのね。

「素晴らしい!」

「ヒィィィッ!」

 いきなり叫び出す男の人の声に私は震えあがり、「やっぱりこの人ヤバい人だ!」って強く思った。

 だけどそれからは衝撃的な話の連続だった!

 男の人は、私がお兄ちゃんに何回聞いても教えてくれなかった、野菜を土がついたまま売ってる理由をすぐに見抜いた。

 しかも並べてる野菜を全部買ってくれるって言うの!

 いつも「土付きで汚い!」「自分達が楽するために土を落とさないなんて!」ってバカにされて、コッソリ泣いてた。

 お兄ちゃんに何度も何度も「土を洗い落としてから売ろうよ!」って言ったけど、「それはダメだ!」としか言われなくて、お兄ちゃんを恨んだこともあった。

「あっ、さすがに全部は困るかな?」

 困るわけない!
どんなに値段を下げても、朝とほとんど変わらない重さの荷車を引いて帰るだけだもん!

 イタズラ好きの狐人族につままれたような気分だったけど、男の人は「値引き前の値段はいくらだい?」って聞いてきて、全部の野菜をわざわざ元の値段で買い取ってくれた。

「ちなみに今お兄さんは何をしてるんだい?」

 お兄ちゃんは畑に戻って仕事をしていること、帰りにまた迎えに来てくれることを伝えると、男の人は「俺はジョージっていうんだけど」って名乗って、一緒にお店に野菜を運ぶことになった。

 自分でも不思議だったけど、最初あんなに警戒してたのが嘘みたいに楽しかった。

 お野菜を全部買ってもらえて、お金がいっぱいもらえたからっていうのもあったけど、何だか私の人生が大きく変わっていくような、そんな予感がした出会いだったの。
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