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第2章 そして2章ぐらいで段々問題が起きるんだ
51話 保険の話 -様子見-
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翌日の水曜日、昼営業が終わった瞬間に俺以外の全員がテーブルに突っ伏した。
「つ、疲れました……」
「おいら、なめてたかも……」
「僕も疲れた……」
ニャジーは基本的に水曜日が休みなので、看板娘のキャトンと全体のフォローをしているニャジーがいっぺんに抜けた形になって、みんなの疲労も倍増のようだった。
このみんなの様子は、昨夜トラージさんが帰った後にいろいろと話し合った結果でもある。
始めのうちは「キャトンが戻ってくるまで、4月みたいにみんな日曜日だけ休みに戻そう」という意見が優勢だったけど、途中ニャジーが「これからも急に誰かが休みになる可能性があるから、今回だけのことじゃなくてこれからのこととして考えない?」と言い出し、流れが変わった。
いやいや、前々から賢いとは思ってたけど、やっぱりニャジーは賢すぎやしないかい?
こんな風にお店のことを考えてくれる子が、前の店にも1人だけいたなぁ……。
おっとっと、ついつい余計なことを考えてしまった、閑話休題。
話し合いはスタッフ主導にしたかったけど、ちょっとだけ口を挟ませてもらった。
「ニャジーの言うとおりだね。今回のキャトンの件はたまたま休みの日だったからこうやって前日に対応できてるけど、出勤の前の日の深夜とか、出勤の日の朝に体調が悪いことだってありうるからな」
いわゆる当日欠勤というやつだ。
猫人族を含む獣人族は、一般的に身体が丈夫だと言われているらしい。
しかし丈夫さには個人差があるし、キャトンみたいに生まれつき身体が弱い者だっているはずだ。
「僕達は不測の事態にも供えないといけないと思う」
姉の言葉を受けて、ジャックが小難しい言葉でまとめた。
「4月みたいに日曜日だけ休みにするにしても、頑張って少人数で回すにしても、どっちも大変なことだというのはわかるな? 少人数で回すとしたら1人あたりの作業は多くなるし、日曜日だけ休みにしたら疲れが取れなくなるだろうからな」
営業を始めて約2ヶ月弱だけど、お店の人気は予想以上の高まりを見せている。
営業開始前の列は必ず毎日できてるし、列をなす人数も少しずつ増えているように思える。
これまでもずっとランチの予定数30食は完売してきたんだけど、最近では売り切れ札を出しているにも関わらず、「料理はまだあるか?」「もうないのか?」「何とかあと1食だけでも出せないか?」と言って入店してくるお客様がいるぐらいだ。
話し合いを続けた結果、スタッフ達の総意によって「少人数での営業」となった。
そこから先はお店の安定のために俺が仕切らせてもらった。
「少人数で回さないといけないから、キャトンが戻るまではそれぞれが1番得意としているポジションに固定しようか」
ミーニャは料理、ニャジーはキャトンの代わりにレジ、ライオはデシャップ、ジャックは洗い場だ。
「ローテーションするのは無しにして、休みの人のポジションには俺が入る。最終確認だけど、フリーで動ける人がいなくなるから大変になるけど、本当にいいか?」
その時は俺の言葉にみんなが力強く頷き、ミーティングは終了した。
そして頑張って少人数で開店した結果が、冒頭のみんなの様子だ。
「まぁこうなるよな」
呟きながら思わず苦笑してしまった。
ブラック企業で働いていた俺にとって、少人数での業務なんてむしろ当たり前のことだったから何ともない。
「今日は少人数営業での初日だから、ペース配分がわからずキツかったろ? 夜の営業からは上手に力を抜かないと、とても5月末まで持たないぞ」
いつもどおりでいいぞって何回も注意したけど、気負いすぎて力みまくってたからなぁ。
「うぅ、店長やっぱりすげぇ……」
「ピンピンしてる……」
「店長かっこいいです」
いくら慣れっこだったとはいえ、疲れ果てた3人から尊敬の眼差しを向けられちゃったら少し誇らしい気持ちになる。
「賄いは俺が作るからみんなはもうちょっと休んでていいぞ。昼ご飯を食べながらゆっくり休憩して、一気に片づけとかやってしまって夜の営業に備えような?」
そうやって俺が励ますと、「ありがとうございます」と弱々しい声が返ってきた。
「つ、疲れました……」
「おいら、なめてたかも……」
「僕も疲れた……」
ニャジーは基本的に水曜日が休みなので、看板娘のキャトンと全体のフォローをしているニャジーがいっぺんに抜けた形になって、みんなの疲労も倍増のようだった。
このみんなの様子は、昨夜トラージさんが帰った後にいろいろと話し合った結果でもある。
始めのうちは「キャトンが戻ってくるまで、4月みたいにみんな日曜日だけ休みに戻そう」という意見が優勢だったけど、途中ニャジーが「これからも急に誰かが休みになる可能性があるから、今回だけのことじゃなくてこれからのこととして考えない?」と言い出し、流れが変わった。
いやいや、前々から賢いとは思ってたけど、やっぱりニャジーは賢すぎやしないかい?
こんな風にお店のことを考えてくれる子が、前の店にも1人だけいたなぁ……。
おっとっと、ついつい余計なことを考えてしまった、閑話休題。
話し合いはスタッフ主導にしたかったけど、ちょっとだけ口を挟ませてもらった。
「ニャジーの言うとおりだね。今回のキャトンの件はたまたま休みの日だったからこうやって前日に対応できてるけど、出勤の前の日の深夜とか、出勤の日の朝に体調が悪いことだってありうるからな」
いわゆる当日欠勤というやつだ。
猫人族を含む獣人族は、一般的に身体が丈夫だと言われているらしい。
しかし丈夫さには個人差があるし、キャトンみたいに生まれつき身体が弱い者だっているはずだ。
「僕達は不測の事態にも供えないといけないと思う」
姉の言葉を受けて、ジャックが小難しい言葉でまとめた。
「4月みたいに日曜日だけ休みにするにしても、頑張って少人数で回すにしても、どっちも大変なことだというのはわかるな? 少人数で回すとしたら1人あたりの作業は多くなるし、日曜日だけ休みにしたら疲れが取れなくなるだろうからな」
営業を始めて約2ヶ月弱だけど、お店の人気は予想以上の高まりを見せている。
営業開始前の列は必ず毎日できてるし、列をなす人数も少しずつ増えているように思える。
これまでもずっとランチの予定数30食は完売してきたんだけど、最近では売り切れ札を出しているにも関わらず、「料理はまだあるか?」「もうないのか?」「何とかあと1食だけでも出せないか?」と言って入店してくるお客様がいるぐらいだ。
話し合いを続けた結果、スタッフ達の総意によって「少人数での営業」となった。
そこから先はお店の安定のために俺が仕切らせてもらった。
「少人数で回さないといけないから、キャトンが戻るまではそれぞれが1番得意としているポジションに固定しようか」
ミーニャは料理、ニャジーはキャトンの代わりにレジ、ライオはデシャップ、ジャックは洗い場だ。
「ローテーションするのは無しにして、休みの人のポジションには俺が入る。最終確認だけど、フリーで動ける人がいなくなるから大変になるけど、本当にいいか?」
その時は俺の言葉にみんなが力強く頷き、ミーティングは終了した。
そして頑張って少人数で開店した結果が、冒頭のみんなの様子だ。
「まぁこうなるよな」
呟きながら思わず苦笑してしまった。
ブラック企業で働いていた俺にとって、少人数での業務なんてむしろ当たり前のことだったから何ともない。
「今日は少人数営業での初日だから、ペース配分がわからずキツかったろ? 夜の営業からは上手に力を抜かないと、とても5月末まで持たないぞ」
いつもどおりでいいぞって何回も注意したけど、気負いすぎて力みまくってたからなぁ。
「うぅ、店長やっぱりすげぇ……」
「ピンピンしてる……」
「店長かっこいいです」
いくら慣れっこだったとはいえ、疲れ果てた3人から尊敬の眼差しを向けられちゃったら少し誇らしい気持ちになる。
「賄いは俺が作るからみんなはもうちょっと休んでていいぞ。昼ご飯を食べながらゆっくり休憩して、一気に片づけとかやってしまって夜の営業に備えような?」
そうやって俺が励ますと、「ありがとうございます」と弱々しい声が返ってきた。
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