異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木

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第2章 そして2章ぐらいで段々問題が起きるんだ

48話 ギルド銀行③

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 ミーティングは盛り上がりに盛り上がった。

 というのも、口座開設をすることはすんなりと決定したんだけど

「私達に必要なものだから私達がお金を出すべきだと思います!」

と主張するスタッフ達の意見と

「スタッフの給料管理と安全管理はお店の責任だよ!」

と主張する俺の意見が、見事に対立したからだ。

 しまいにはミーニャの兄のヌコヌコさんや、キャトンの両親のトラージさんとサッチェさんまで巻き込むミーティングになってしまった。


 こうなると多勢に無勢、押し切られてしまう前に


「わかりました、折半しましょう!」


という不本意な妥協案を叫び、無理矢理終話させた。

 正直、女神様のおかげで自分が裕福な状態であること、そして猫人族の子達が元は貧しい生活をしていたということが相まって、「援助したい」という気持ちが大きい自分がいる。  

 日本じゃ給料振り込みなんて一般的なことだったけど、やっぱりこの世界に近代的なシステムを導入しようと焦ってるのかもしれない。

 前の揚げ物のトラブルの時みたいに、独断的な考えにならないようにしなきゃな。

 何やかんやで折半案が採用され、関係者が揃っててちょうど良かったので、どこのギルドで開設するかも話し合った。
当然というかなんと言うか、みんなの家から近い農業ギルドに決定した。

 今はその農業ギルドの前にやってきている。

「わくわくするね!」

「そうだね!」

 ギルドの扉の前で、小声でそう囁いているのはミーニャとキャトンだ。

 2人には保護者がいるため

「そちらの名義で作らなくていいですか?」

と提案したんだけど、ヌコヌコさんとトラージさんが

「本人達が頑張って稼いだお金ですので」

と言って、ミーニャとキャトンの名義で作ることが決定した。

 笑顔の2人とは対照的に、不貞腐れた顔をしているのはライオとジャックだ。

 キャトンとミーニャが自分の口座を持つということで、2人も「俺達も!」と期待してたんだけど、姉のニャジーが「お金もかかるし、あんた達は無駄遣いするからダメ!」と一喝。

 家でも壮絶な姉弟喧嘩が繰り広げられたようだが、結局すべてニャジーが管理することになったらしい。

 後日、「ニャジーが怒るほど無駄遣いしちゃうのか?」とライオとジャックに聞いてみたところ、

「おいら、お小遣いがあったらすぐお菓子を買っちゃう」

「お金があったら本をいっぱい買ってしまう」

と、2人ともバツが悪そうに答えた。

 それを聞いていたニャジーが

「だ~か~ら~! ちゃんと使い道を言えば、お小遣いあげるって言ってるでしょ」

とお母さんのように諭していたので、この件に関してはニャジーに任せるのが正解だろう。

 古めかしい扉を開いて中に入ると、ギルド職員以外の人の姿はほとんどなかった。

「朝からお昼はあんまり混まないですよ。昼以降になると、収穫した作物を持ち込む農家でごった返しますので気をつけてください」

というヌコヌコさんのアドバイスがあったから昼前に来たんだけど、素直に従っといてよかった。

「口座開設をお願いしたいんですけど」

 空いていたカウンターに進み、若いギルド職員さんに話しかける。
どうでもいいけど、この人めっちゃ美人だな。

「口座開設でございますね。あなた様の口座でよろしいですか?」

「いえ、私ではなくこの3人の口座をお願いします」

 ミーニャとキャトンとニャジーが一歩出てきたので、俺は3人の後ろに回る。

「えっと、3口座ってことですか? 1口座開設するのに金貨5枚かかりますけど……」

「あっ、存じ上げてます」

 自分達で出すと言って聞かなかった分を事前にまとめて預かっていたため、俺が出す分と合わせて職員さんに渡した。

「――はい、間違いなく金貨15枚お預かりします」

 枚数を確認した職員さんは丁寧な手つきで金貨をしまい込み、代わりに契約書っぽい紙を3枚出してくる。

「こちらにお名前と年齢、住所をお書きください」

「「「はい」」」

 3人とも読み書きはできるので、スラスラと記入していく。

「――はい、記入内容に問題はないようですね。それでは登録させていただきます」

 すると職員さんはブツブツと呪文のようなものを唱え始めた。

 俺は商業ギルドに登録する際にオイ氏による契約魔法を見たけど、みんなは今回初めて契約魔法を見たらしくて、記入した紙が光に包まれて消える様子を見て「おおっ!」と声を上げていた。
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