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第2章 そして2章ぐらいで段々問題が起きるんだ
44話 常連の予感②
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「これは美味いっ!!」
初のカラアゲを口にしたコスタスさんが吠える。
そしてガツガツとすごい勢いで食べているコスタスさんを、ガードスさんが羨ましそうに見ている。
「お前なぁ、せめて鎧ぐらいに脱いでから来いよ。じゃないと他のお客さんが気を遣うだろ」
俺もガチャガチャと鳴る鎧は不便そうだと思ってたけど、そういうわけではないらしい。
ガードスさんの言葉を受けて客席を見てみると、数組残っていたお客様がパッと目を逸らした。
「えっと、もしかしてコスタスさんって偉い人なんですか?」
冷や汗が頬を伝う。
もしかして、異世界小説によくあるような、騎士は貴族と同じぐらいの権限を持ってたりするのか!?
不安に顔を引きつらせた俺の様子が可笑しかったのか、ガードスさんが笑いながら手を振った。
「ハッハッハッ! 違うよジョージくん! 騎士団長や分団長ぐらいの人なら男爵相当の権限が与えられることもあるけど、騎士団といえど基本的に俺達平民と変わらない身分だよ」
いまだ勢いよくご飯をかき込んでいるコスタスさんも首肯だけしている。
「ただな、貴族出身の若い騎士がいるのも事実なんだ。そいつらが家名を笠に着て横柄な態度を取ったりすることがあるんで、トレードマークの白銀の鎧を見ただけで緊張したり、畏怖したりする人も多いんだよ」
「なるほど」
ガードスさんの解説に頷いていると、定食の半分を平らげたコスタスさんが会話に参加してきた。
食うの早くね?
「無論そういった行いは禁止されてるのだが、そういう奴らに限って見つからないようにコソコソするのが上手いから、真面目にやっている騎士まで風評被害を受けてしまうのだよ」
水を飲んでさらに続ける。
「だからこそ普段は着替えてから行動するのだが、今日に限ってはそんなことをしていたら間に合いそうになかったんでな! 最後の1食を確保できたということは、俺の判断が間違ってなかったということだ!」
高らかに笑いながら食事を再開するコスタスさんに、ガードスさんが歯噛みする。
けど、こんな風に無遠慮に何でも言い合えるのも仲がいい証拠なんだろう。
長々とお邪魔するのも申し訳ないので、「ごゆっくりどうぞ」と声かけをして厨房へ戻った。
「私もたまにホールに出ることがありますけど、お客様とあんなに上手にお話しするなんてできません。やっぱり店長はすごいですね」
デシャップに戻ってライオと交代すると、厨房へ回す分の木札の回収をしていたニャジーから声をかけられた。
賞賛されるのは嬉しいけど、あれぐらい日本では普通の対応だったもんなぁ。
ランチピークが終わった後のアイドルタイムを狙って来る、おしゃべり大好きなおばあちゃんの相手とかしてたし。
「ありがとう。忙しくない限りはお客様とあんな風に会話してもいいからね?」
「わかりました」
普段レジに立っているキャトンは、フランクな話し方が板についてきた。
そしてその対応の良さからお店の看板娘になっている。たぶんだけど、キャトン目当てで来てる人もいるんじゃないかな?
全員がもう少し仕事に慣れてきたら、もっと自由にローテーションを組めるようなる。
どのポジションに入ってもみんな楽しんで仕事をしてくれたらいいな。
ついついそんなことを考えてニヤついてしまう1日だった。
初のカラアゲを口にしたコスタスさんが吠える。
そしてガツガツとすごい勢いで食べているコスタスさんを、ガードスさんが羨ましそうに見ている。
「お前なぁ、せめて鎧ぐらいに脱いでから来いよ。じゃないと他のお客さんが気を遣うだろ」
俺もガチャガチャと鳴る鎧は不便そうだと思ってたけど、そういうわけではないらしい。
ガードスさんの言葉を受けて客席を見てみると、数組残っていたお客様がパッと目を逸らした。
「えっと、もしかしてコスタスさんって偉い人なんですか?」
冷や汗が頬を伝う。
もしかして、異世界小説によくあるような、騎士は貴族と同じぐらいの権限を持ってたりするのか!?
不安に顔を引きつらせた俺の様子が可笑しかったのか、ガードスさんが笑いながら手を振った。
「ハッハッハッ! 違うよジョージくん! 騎士団長や分団長ぐらいの人なら男爵相当の権限が与えられることもあるけど、騎士団といえど基本的に俺達平民と変わらない身分だよ」
いまだ勢いよくご飯をかき込んでいるコスタスさんも首肯だけしている。
「ただな、貴族出身の若い騎士がいるのも事実なんだ。そいつらが家名を笠に着て横柄な態度を取ったりすることがあるんで、トレードマークの白銀の鎧を見ただけで緊張したり、畏怖したりする人も多いんだよ」
「なるほど」
ガードスさんの解説に頷いていると、定食の半分を平らげたコスタスさんが会話に参加してきた。
食うの早くね?
「無論そういった行いは禁止されてるのだが、そういう奴らに限って見つからないようにコソコソするのが上手いから、真面目にやっている騎士まで風評被害を受けてしまうのだよ」
水を飲んでさらに続ける。
「だからこそ普段は着替えてから行動するのだが、今日に限ってはそんなことをしていたら間に合いそうになかったんでな! 最後の1食を確保できたということは、俺の判断が間違ってなかったということだ!」
高らかに笑いながら食事を再開するコスタスさんに、ガードスさんが歯噛みする。
けど、こんな風に無遠慮に何でも言い合えるのも仲がいい証拠なんだろう。
長々とお邪魔するのも申し訳ないので、「ごゆっくりどうぞ」と声かけをして厨房へ戻った。
「私もたまにホールに出ることがありますけど、お客様とあんなに上手にお話しするなんてできません。やっぱり店長はすごいですね」
デシャップに戻ってライオと交代すると、厨房へ回す分の木札の回収をしていたニャジーから声をかけられた。
賞賛されるのは嬉しいけど、あれぐらい日本では普通の対応だったもんなぁ。
ランチピークが終わった後のアイドルタイムを狙って来る、おしゃべり大好きなおばあちゃんの相手とかしてたし。
「ありがとう。忙しくない限りはお客様とあんな風に会話してもいいからね?」
「わかりました」
普段レジに立っているキャトンは、フランクな話し方が板についてきた。
そしてその対応の良さからお店の看板娘になっている。たぶんだけど、キャトン目当てで来てる人もいるんじゃないかな?
全員がもう少し仕事に慣れてきたら、もっと自由にローテーションを組めるようなる。
どのポジションに入ってもみんな楽しんで仕事をしてくれたらいいな。
ついついそんなことを考えてニヤついてしまう1日だった。
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