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第2章 そして2章ぐらいで段々問題が起きるんだ
41話 初めてのトラブル -スキルで勧善懲悪-
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「もちろん不当に皆さまを嘘つき呼ばわりするつもりはありません。実は私には珍しいスキルがありまして、皆さまが本当のことを言っているかどうか、確実に確かめることができるのです」
おっ、さらに何人か逃げ去っていったな。
このまま嘘をついてる人が全員いなくなってくれればいいのにな。
「こちらにお残りの方は、あくまで昨日のお昼に当店で食事をし、しかも全員が生の状態のお肉を食されたという主張で間違いありませんね?」
「「「そうだ!」」」
最初に比べたら結構人数は減ったんだけど、それでも本当に判別できるだなんて微塵も考えていない強請り客が居残る。
これ以上容赦する必要はないので、警備隊に頼んで居残っている人を緩やかに包囲してもらう。
もう逃げられないんだかんな!
「私には【防犯の心得】というスキルがあり、悪意を持った人はこのお店に入れないようになっているんですよ。世にも珍しいスキルですが本当のことです」
この説明だけでは不平不満が出るだろうから、野次馬の中から純朴そうな少年を見つけ手招きで誘い出す。
「ちょっとした実験に付き合ってくれませんか? もちろん身の危険はありませんし、実験に付き合ってくれたお礼として、本日のお昼を無料でご馳走させていただきますよ?」
少年は2つ返事で引き受けてくれた。
「何をすればいいんですか?」
「まずは何も考えず、普通に食事に来たぐらいの感じでお店に入ってくれませんか?」
「わかりました」
何の意味があるかわからないだろうけど、少年は指示どおりに動いてくれる。
扉を開いて歩を進めると、当然すんなりとお店に入ることができた。
「では次です。普段絶対に考えないでしょうけど『お店のお金を盗んじゃおう!』って思いながらお店に入ってくれませんか?」
「ううん、難しいなぁ。でもやってみるよ!」
少年はしばらくその場で「お金を盗む、お金を盗む」と呟いていた。
それからしばらくして、なんとなくイメージができたのか店のドアに手をかけた。
ドアは普通に開く。
しかしそのあと、少年は何かにぶつかったように身を反らした。
「何だこれ!? さっきは普通に入れたのに、今は透明な壁があるみたいで中に入れない! 弾かれるんだ!」
興奮して叫ぶ少年の純粋な反応のおかげで、周囲の人々にも俺のスキルの証明ができたようだ。
ちらりと強請り客の方を見やると、全員の顔が青くなっていた。
「実験に付き合ってくれてありがとうございます。もう少ししたら騒ぎが収まると思うから、お店の中で待っててもらっていいですか? 約束どおり、お昼をご馳走しますので」
「やったぁ! あっ、でも、どうやって中に入ればいいんですか?」
「実験が終わったからお金を盗むっていうイメージはもうないでしょう? でしたら普通に入れますよ」
この辺のこともスタッフと実験して確認済みだ。
しかし、心の中で「食い逃げをする」と決意していて、スキルで弾かれないために頭の中で「食い逃げなんてしない」と考えている場合は、しっかりとスキルに弾かれる。どうやら潜在意識の問題らしい。
ちなみにこの実験、我が店の純粋なスタッフに「食い逃げをする」と思ってもらうところでかなり苦労した。
閑話休題。
俺の言葉に深く頷いた少年は、店のドアを開けておそるおそる店内に足を踏み出す。
すると、先ほどのことが嘘だったかのようにすんなりと入ることができた。
「すげー! さっきは絶対入れなかったのに!!」
店内から興奮気味の少年の声が流れてきて、強請り客の顔色がさらに青くなる。
「では次は皆さんの番ですね。先ほど確認した時に全員が『自分はここで食事をして体調が悪くなった』と言っていましたので、本当のことを言っている人はお店の中に入れるはずです。1人ずつお店に入っていただきましょうか。警備隊の皆さん、お手数ですがお願いします」
ガードスさんを筆頭に、警備隊はプルプルと肩を震わせながら笑いをこらえている。
どうやら俺の意地の悪さが伝わってしまったみたいだ。
さてさて、とどめを刺すとしましょうかね。
「中でお客様が食事を待っていますので、スムーズにお願いします!」
おっ、さらに何人か逃げ去っていったな。
このまま嘘をついてる人が全員いなくなってくれればいいのにな。
「こちらにお残りの方は、あくまで昨日のお昼に当店で食事をし、しかも全員が生の状態のお肉を食されたという主張で間違いありませんね?」
「「「そうだ!」」」
最初に比べたら結構人数は減ったんだけど、それでも本当に判別できるだなんて微塵も考えていない強請り客が居残る。
これ以上容赦する必要はないので、警備隊に頼んで居残っている人を緩やかに包囲してもらう。
もう逃げられないんだかんな!
「私には【防犯の心得】というスキルがあり、悪意を持った人はこのお店に入れないようになっているんですよ。世にも珍しいスキルですが本当のことです」
この説明だけでは不平不満が出るだろうから、野次馬の中から純朴そうな少年を見つけ手招きで誘い出す。
「ちょっとした実験に付き合ってくれませんか? もちろん身の危険はありませんし、実験に付き合ってくれたお礼として、本日のお昼を無料でご馳走させていただきますよ?」
少年は2つ返事で引き受けてくれた。
「何をすればいいんですか?」
「まずは何も考えず、普通に食事に来たぐらいの感じでお店に入ってくれませんか?」
「わかりました」
何の意味があるかわからないだろうけど、少年は指示どおりに動いてくれる。
扉を開いて歩を進めると、当然すんなりとお店に入ることができた。
「では次です。普段絶対に考えないでしょうけど『お店のお金を盗んじゃおう!』って思いながらお店に入ってくれませんか?」
「ううん、難しいなぁ。でもやってみるよ!」
少年はしばらくその場で「お金を盗む、お金を盗む」と呟いていた。
それからしばらくして、なんとなくイメージができたのか店のドアに手をかけた。
ドアは普通に開く。
しかしそのあと、少年は何かにぶつかったように身を反らした。
「何だこれ!? さっきは普通に入れたのに、今は透明な壁があるみたいで中に入れない! 弾かれるんだ!」
興奮して叫ぶ少年の純粋な反応のおかげで、周囲の人々にも俺のスキルの証明ができたようだ。
ちらりと強請り客の方を見やると、全員の顔が青くなっていた。
「実験に付き合ってくれてありがとうございます。もう少ししたら騒ぎが収まると思うから、お店の中で待っててもらっていいですか? 約束どおり、お昼をご馳走しますので」
「やったぁ! あっ、でも、どうやって中に入ればいいんですか?」
「実験が終わったからお金を盗むっていうイメージはもうないでしょう? でしたら普通に入れますよ」
この辺のこともスタッフと実験して確認済みだ。
しかし、心の中で「食い逃げをする」と決意していて、スキルで弾かれないために頭の中で「食い逃げなんてしない」と考えている場合は、しっかりとスキルに弾かれる。どうやら潜在意識の問題らしい。
ちなみにこの実験、我が店の純粋なスタッフに「食い逃げをする」と思ってもらうところでかなり苦労した。
閑話休題。
俺の言葉に深く頷いた少年は、店のドアを開けておそるおそる店内に足を踏み出す。
すると、先ほどのことが嘘だったかのようにすんなりと入ることができた。
「すげー! さっきは絶対入れなかったのに!!」
店内から興奮気味の少年の声が流れてきて、強請り客の顔色がさらに青くなる。
「では次は皆さんの番ですね。先ほど確認した時に全員が『自分はここで食事をして体調が悪くなった』と言っていましたので、本当のことを言っている人はお店の中に入れるはずです。1人ずつお店に入っていただきましょうか。警備隊の皆さん、お手数ですがお願いします」
ガードスさんを筆頭に、警備隊はプルプルと肩を震わせながら笑いをこらえている。
どうやら俺の意地の悪さが伝わってしまったみたいだ。
さてさて、とどめを刺すとしましょうかね。
「中でお客様が食事を待っていますので、スムーズにお願いします!」
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