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第1章 小説の第1章は大体説明みたいな感じだよね
28話 緊張の問答と衝撃の本名
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「ジョージ、ちょっといいかい?」
ついにその時が訪れた。
他のお客様はすでに退店していて、スタッフには休憩に入っていいと伝えている。
今、店内には俺とビービーさんとセルバイさんしかない。
いつもより重い気がする足を必死に動かして2人の待つテーブルへ向かう。
「今日の営業は通常営業と変わらないのかい?」
「金銭のやり取りが発生していないことと、料理の準備数を減らしていること以外は通常営業と変わりません」
「今日の料理の準備数と、通常営業での準備数を聞いてもいいかい?」
「構いませんよ。通常営業ではランチ30食、ディナー20食の計50食を予定してます。今日はプレオープンなんですけど、呼べる知り合いが少ないんでランチ20食のディナー10食に絞っています」
回答を耳にしたビービーさんは満足気に頷き、セルバイさんに声をかけた。
「どうだった?」
何やらずっと思案気だったセルバイさんが、ゆっくりと口を開いた。
「ダメですな」
「……えっ?」
奈落の底に叩き落された気分だったが、その言葉には続きがあった。
「こんな美味しい料理、1日50食じゃすぐに売り切れることでしょう。味は文句なく絶品だからよいとして、その準備数の少なさにクレームが殺到するのが目に浮かびます」
「あ、あ、あ、ありがとうございます!」
最初は実感がなかったけど、賞賛されているんだとジワジワわかってきて体が震える。
「セルバイの言うとおりだね。懸念してた味の心配だけど、問題がないどころか高級店にも劣らない美味しさだったよ。本当にあれはカヌウの肉だったのかい?」
「はい、正真正銘カヌウの肉ですよ」
「こりゃ王都の食糧事情に革命が起きるかもね」
「え?」
「マズいマズいと言われてきた肉がこんなに美味しい料理になるんだ。みんながみんなジョージと同じ味を出せるわけじゃないだろうけど、料理の腕に覚えがある者はこぞって買いに走るだろうね」
こちらも手放しの賞賛をいただくことができたけど、こぞって買いに走られたら本末転倒なんだよな。
そんなことを考えていると、俺の顔色から読み取ったのかビービーさんが笑った。
「心配しなさんな。この店には優先的に卸してあげるからさ」
「ありがとうございます!」
「わかったね、セルバイ?」
「了解しました、マスター! ……あっ!」
返事をしたセルバイさんは「しまった!」という顔で口を押える。
うん、これは聞き流せないよね。
「マスター?」
「余計な気遣いさせたくないから口止めしてたんだけどねぇ」
「申し訳ございません!」
まさかビービーさんが冒険者ギルドのマスターだったとは!
だからセルバイさんは入店時からずっと緊張してたのか。なるほど、納得。社長とサシでご飯食べてるようなもんだからな。
「まぁ用事は終わったからもういいだろうね。改めて、あたいは冒険者ギルドのギルドマスター、ビービー=エーだよ。今後ともよろしくね、ジョージ」
そう言って優雅に頭を下げるビービーさんだったけど、彼女がギルドマスターだったという事実よりも、フルネームがビービー=エー、BBAだということに衝撃を受けてしまった。
バ(B)バ(B)ア(A)だなんて、失礼なこと考えちゃいけないんだぞ!
ついにその時が訪れた。
他のお客様はすでに退店していて、スタッフには休憩に入っていいと伝えている。
今、店内には俺とビービーさんとセルバイさんしかない。
いつもより重い気がする足を必死に動かして2人の待つテーブルへ向かう。
「今日の営業は通常営業と変わらないのかい?」
「金銭のやり取りが発生していないことと、料理の準備数を減らしていること以外は通常営業と変わりません」
「今日の料理の準備数と、通常営業での準備数を聞いてもいいかい?」
「構いませんよ。通常営業ではランチ30食、ディナー20食の計50食を予定してます。今日はプレオープンなんですけど、呼べる知り合いが少ないんでランチ20食のディナー10食に絞っています」
回答を耳にしたビービーさんは満足気に頷き、セルバイさんに声をかけた。
「どうだった?」
何やらずっと思案気だったセルバイさんが、ゆっくりと口を開いた。
「ダメですな」
「……えっ?」
奈落の底に叩き落された気分だったが、その言葉には続きがあった。
「こんな美味しい料理、1日50食じゃすぐに売り切れることでしょう。味は文句なく絶品だからよいとして、その準備数の少なさにクレームが殺到するのが目に浮かびます」
「あ、あ、あ、ありがとうございます!」
最初は実感がなかったけど、賞賛されているんだとジワジワわかってきて体が震える。
「セルバイの言うとおりだね。懸念してた味の心配だけど、問題がないどころか高級店にも劣らない美味しさだったよ。本当にあれはカヌウの肉だったのかい?」
「はい、正真正銘カヌウの肉ですよ」
「こりゃ王都の食糧事情に革命が起きるかもね」
「え?」
「マズいマズいと言われてきた肉がこんなに美味しい料理になるんだ。みんながみんなジョージと同じ味を出せるわけじゃないだろうけど、料理の腕に覚えがある者はこぞって買いに走るだろうね」
こちらも手放しの賞賛をいただくことができたけど、こぞって買いに走られたら本末転倒なんだよな。
そんなことを考えていると、俺の顔色から読み取ったのかビービーさんが笑った。
「心配しなさんな。この店には優先的に卸してあげるからさ」
「ありがとうございます!」
「わかったね、セルバイ?」
「了解しました、マスター! ……あっ!」
返事をしたセルバイさんは「しまった!」という顔で口を押える。
うん、これは聞き流せないよね。
「マスター?」
「余計な気遣いさせたくないから口止めしてたんだけどねぇ」
「申し訳ございません!」
まさかビービーさんが冒険者ギルドのマスターだったとは!
だからセルバイさんは入店時からずっと緊張してたのか。なるほど、納得。社長とサシでご飯食べてるようなもんだからな。
「まぁ用事は終わったからもういいだろうね。改めて、あたいは冒険者ギルドのギルドマスター、ビービー=エーだよ。今後ともよろしくね、ジョージ」
そう言って優雅に頭を下げるビービーさんだったけど、彼女がギルドマスターだったという事実よりも、フルネームがビービー=エー、BBAだということに衝撃を受けてしまった。
バ(B)バ(B)ア(A)だなんて、失礼なこと考えちゃいけないんだぞ!
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