異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木

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第1章 小説の第1章は大体説明みたいな感じだよね

25話 ランチピーク

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「料理大丈夫か? ちょっと遅れてるかも!」
「ごめん! 先の5名様分はそろそろ上がるよ!」
「ミーニャ落ち着いて! 私も一緒に作るから!」
「洗い物終わったから、キャベツの皿は僕が準備するよ」

 メイクさん御一行とキャトン家のオーダーが終わって落ち着いたと思った矢先、嵐は急にやってきた。

「ジョージさん、お昼休憩がてらお邪魔しに来ました。今日は招待してくれてありがとうございます」

「あたしも遠慮なくお友達連れてきたけど、本当によかったのかい?」

 ミーニャの兄ヌコヌコが猫人族の友達を連れて5名でやってきたと思ったら、洋服屋のおばちゃんも友達を連れて6名の大所帯で、同じタイミングでやってきたのだ。

(大変だろうけど、みんなにはいい練習だ)

 手伝ってあげたい気持ちをグッと押さえ、俺はそれぞれのグループを丁寧に案内する。

「外の説明板はご覧いただけましたか?」

「私は以前体験させてもらいましたので、事前に説明しておきました」

「ありがとうございます!」

 ヌコヌコはミーニャのお兄ちゃんで身内みたいなもんだけど、業者さんでもあるため、敬語を使い続けることを決めた。

 本人に直接聞いたわけでもないけど、ヌコヌコの方も同じように考えているのだろう。丁寧な言葉遣いを崩すことはなかった。

 かつての同僚に業者さんを下に見ているやつがいたが、勘違いも甚だしい。
いくら代金を払ってるといえど、こちらは食材などを卸してもらっている立場だし、持ちつ持たれつの関係だ。どちらが上でどちらが下ということはない。

「あたし達は店の前のやつを読んできたけど、いまいちピンと来なくてね。悪いけど教えてもらってもいいかい?」

「もちろんですとも」

 キャトンがヌコヌコ達グループの案内をしていたので、服屋のおばちゃん達には俺が説明をしてレジへと誘導する。

「なるほどねぇ、よく考えたもんだよ!」
「慣れちまえば簡単だけど、初めて来るお客さんには今日みたいな案内が必要かもね!」
「足腰の悪い年配のお客さんには料理を運んであげた方が親切かもね」

 さすがおばさま達は人生経験豊富で、ありがたい意見がバンバン飛び出してくる。

 中には「少し料金が高いかもしれないね」という意見もあってドキッとさせられたけど、とりあえず味や内容で勝負させてもらうまではその意見を保留してもらうことにした。

「へぇ、料理に相当な自信があるんだね? わかったよ。高いかどうか、味を見てから考えようじゃないかい!」

 主婦としてのプライドが刺激されたんだろうか、楽し気な笑みを浮かべて席に着くおばちゃん御一行だった。

「お待たせしました! 8番から12番のお客様、料理ができました! 受け取り口までお越しください!」

 そうこうしているうちに何とかヌコヌコ達のグループの料理が完成したみたいで、ガヤガヤと話しながら料理を受け取りにくる姿が見えた。

 とりあえず一安心だと思っていると、静かにお店のドアが開き、お昼の部最後のお客様が来店した。
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