異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木

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第1章 小説の第1章は大体説明みたいな感じだよね

22話 1人で動くジョージ

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 猫人族に押しかけられた数日後、俺は工業区にあるメイクさんの工房を訪ねてきた。

「じゃあ看板はその“ぷれおーぷん”とかいう日に設置しに行けばいいんだな?」

「えぇ、13日の土曜日にお願いします。それと、もしその後に予定を空けれるようでしたら、お客さんとしてうちの料理を食べていってくれませんか? プレオープンってのは実際に営業する前の予行練習みたいなものなので、付き合っていただくお礼にご馳走しますよ」

「ガッハッハ! そういうことなら遠慮なく馳走になるぞ! だが看板の設置作業があるから弟子を何人か連れていくことになるが大丈夫か?」

 こらこら、笑い声に合わせて背中を叩くな!

「まさかお弟子さんだけ帰すわけにもいきませんし、こちらもいい練習になるので大歓迎ですよ」

「ガッハッハ! ありがとな! 弟子を4人連れていくから、お言葉に甘えて5人頼むぞ!」

 だから痛いってば!!

「了解しました。こちらも看板を楽しみにしてます」

 なんでも超力作の看板ができたみたいなんだけど、俺の希望でまだ見せてもらっていない。プレオープンの日まで我慢して、みんなと一緒に見たいからだ。

 工業区を後にし、その足で商業ギルドへと向かう。

「オイさん、ご無沙汰してます」

 先日対応してくれた老いぼ、、、オイ=ボレーヌ氏のカウンターが空いていたのでそちらへと進んだ。

「おぉ、久しぶりじゃのう」

「今月の15日から営業したいと思うので、商業ギルドへの登録をお願いします」

「相分かった。ではこの紙に店の名前と代表者の名前、簡単でかまわんから何の店かを記入しておくれ」

 差し出されたのは、市販されている物とはまったく別物の高級そうな紙。書き心地がよくスラスラと書ける。

「ふむふむ、定食屋じゃな。店名は“フェーレース”、代表者はジョージじゃな?」

「はい、間違いありません」

 不備がないことを確認したオイ氏は、何やらブツブツと呪文のような言葉を唱え始め、詠唱が終わると同時に記入した紙が光に包まれて消失した。

「いっ、今のは!?」

「ふぉっふぉっふぉ、初めて見る者はみんな驚くがな、これは契約魔法じゃ。お前さんの店を魔法で契約してギルドに登録したんじゃよ」

 やっぱ魔法ってすげぇな!
パソコンとかでデータ管理できる世界じゃないけど、これはこれでハイテクだと思う。

「ちなみに記載内容に嘘や誤りがあった場合、今の魔法が受け付けられず契約できないんじゃよ」

「すげぇ!」

「ふぉっふぉっふぉ! あとは毎月の売上帳簿の提出と納税、1年以内に年会費の金貨12枚を納めてもらうだけじゃな」

「あっ、年会費は1年分払ってていいですか? 忘れっぽいんで」

「もちろんじゃよ」

 こうして店の登録も無事に完了した。

 店名の『フェーレース』というのは、ラテン語で『猫』を意味する言葉だ。
昔読んだ本に載ってたから何となく覚えてたんだけど、スタッフが猫人族ばかりでちょうどいいと思い、この名前にした。

 そう! あの日俺は全員から「働かせてください!」という言葉を得ることができたんだ!!

不安に駆られていた俺はしばらくは反応できなくて立ち尽くしてたんだけど、落ち着いてからすぐに「こちらこそお願いします!」と笑顔で答えた。

 登録が終わったばかりでプレオープンすらまだの店だけど、ここから夢の1歩が始まるんだ。

 そのためにはこの老いぼ、、、オイ氏にも協力してもらわないといけない。

「オイさん、俺の店なんですが、13日に予行練習をやるんです。練習だからお代はいただきませんので、ギルド職員さんを何名か連れて食べに来てくれませんか? ちょっと珍しい定食屋を楽しんでもらえると思いますよ?」

 俺がそう軽口を叩くと、温厚そうな笑みはそのままに、少し挑発的な言葉が返ってきた。

「ほほぅ、60年以上商業ギルドで働いておるワシに、商売に関して珍しいものを見せてくれるのかね?」

 60年以上も働いていれば海千山千だろうけど、こと食文化においては異常なまでの発展をした日本から来た俺は、ここで引くわけにはいかない。

「えぇ、楽しみにしていてください」

「わかった。手空きの職員を連れてぜひお邪魔させてもらうぞ」

「心よりお待ちしております」

 それから服屋のおばちゃんにも声をかけたりして、ついに異世界定食屋プロジェクト (仮) がスタートするのだった。
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