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第1章 小説の第1章は大体説明みたいな感じだよね
18話 ネコの大群
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「どうしてこうなった?」
青臭い感情に駆られてミーニャに啖呵を切ったその日の夜。現在俺の店には8人の猫人族が集っている。
うち2人は顔見知りであるミーニャとヌコヌコなのだが……。
「キャトンです」
「キャトンの父、トラージと申します。夜分にお邪魔してしまい申し訳ない」
「キャトンの母のサッチェです。よろしくお願いしますね」
「ニャジーっていいます。ミーニャから話を聞いて伺わせていただきました。ほら、あなた達も挨拶して!」
「うっせぇなぁ、わかってるよ! おいらはライオ! よろしくな!」
「……ジャックです」
「ご丁寧にありがとうございます。私はこの店のオーナーのジョージと申します。よろしくお願いします」
雰囲気に気おされながらペコリと頭を下げると、パチパチとまばらな拍手が起こった。
「それで、いきなりどうして――」
「ごめんなさい!!」
俺の言葉をさえぎってミーニャが大声で謝る。
「ちゃんと、、、ちゃんと説明しようと思ったんですけど……」
ミーニャが今にも泣き出しそうにフルフルと震え出したため、兄のヌコヌコが代わりに説明してくれた。
「なるほど。ミーニャとしては『雇ってくれるお店があるよ!』と言った後に詳しく説明をするつもりだったけど、予想以上に話が盛り上がりすぎて、そのまま押しかけてきたってわけか」
ヌコヌコの話を簡潔にまとめると、みんなの顔が真っ赤になった。
「す、すみません。うちのキャトンでも雇ってくれる店があると聞いて、いてもたってもいられなくなって……」
「私達が元気なうちは今のままでも何とかやっていけるんですけど、後のことを考えてしまってつい……」
「すすす、すみません……」
キャトンちゃん一家が揃って頭を下げる。ご両親もキャトンちゃんの将来のことが心配で日々思案していて、渡りに船のような話に聞こえたと言う。
「私達も日雇いで誰かの畑を手伝ってるだけだから、安定した仕事がほしくてつい……」
「ごめんよ、にーちゃん……」
「すみません……」
ニャジー、ライオ、ジャックの3姉弟も、流行り病で両親を亡くしてしまったらしく、同じ猫人族の畑の手伝いをさせてもらうことで何とか生活しているとのことだ。
「皆さんの事情はわかりました。それとミーニャ、怒ってないからプルプルしないでくれ」
みんなの事情を聞いている間、ミーニャはずっと俯いてプルプル震えていた。
どうやら俺が怒っていると思っていたようで、声をかけてやるとホッとした表情をした。
「ヌコヌコさんとミーニャには話しましたが、私は王都に知り合いがいないので、働いてくれる人が増えるのは大歓迎です」
ここで全員が嬉しそうな顔を見せたけど、言うべきことは言っとかないといけない。
「しかしうちは特殊な営業スタイルを取るつもりなので、他の店にはないシステムや道具が多いです。ですからそれらを秘密にしてもらわなければなりません。悪意がなくても『ついつい人に話しちゃった』なんてことがあったら困るんですよ」
一度厨房まで見せてあげたミーニャだけはウンウンと頷いているが、それ以外の人はいまいちピンと来てないみたいだ。トラージさんが代表して質問してくる。
「特殊というのは具体的にはどういった?」
「そうですねぇ、何から説明すればいいか――」
――グウゥゥゥ
説明の切り出し方を思案していると、不意に大きな音が鳴り響いた。
「あなたって子は……」
「だって姉ちゃん、いつもなら夜ご飯の時間だぜ!」
「今は真剣な話を聞いてるんだから少し我慢しなさい!」
どうやらライオのお腹の音だったみたいで、お腹空いたと訴えるライオと姉のニャジーの言い合いが始まった。
「もしかして他の方も夕飯がまだなのでは?」
この問いかけに全員が控えめに頷く。
「それはお腹空いちゃいますよね。ちょうどいいので、仕事の流れを説明するついでにみんなで夕飯にしましょうか」
「いや、押しかけてきた上にそこまでされては……」
トラージさんが固辞しようとするが、俺は片手で制した。
「いいんですよ。こちらは大切なお子さんを預かることになるかもしれませんし、そちらは大切なお子さんを預けることになるかもしれないんです。うちがどういうお店かをしっかり見定めてください」
これだけは俺にも譲れない。
キャトンちゃんという大切な1人娘を預かることになるし、まだ言い合いをしているニャジーたち姉弟だってそうだ。俺は真摯に向き合わなければならない。
そのためには夕飯なんて朝飯前だぜ!
夕飯だけどな!
青臭い感情に駆られてミーニャに啖呵を切ったその日の夜。現在俺の店には8人の猫人族が集っている。
うち2人は顔見知りであるミーニャとヌコヌコなのだが……。
「キャトンです」
「キャトンの父、トラージと申します。夜分にお邪魔してしまい申し訳ない」
「キャトンの母のサッチェです。よろしくお願いしますね」
「ニャジーっていいます。ミーニャから話を聞いて伺わせていただきました。ほら、あなた達も挨拶して!」
「うっせぇなぁ、わかってるよ! おいらはライオ! よろしくな!」
「……ジャックです」
「ご丁寧にありがとうございます。私はこの店のオーナーのジョージと申します。よろしくお願いします」
雰囲気に気おされながらペコリと頭を下げると、パチパチとまばらな拍手が起こった。
「それで、いきなりどうして――」
「ごめんなさい!!」
俺の言葉をさえぎってミーニャが大声で謝る。
「ちゃんと、、、ちゃんと説明しようと思ったんですけど……」
ミーニャが今にも泣き出しそうにフルフルと震え出したため、兄のヌコヌコが代わりに説明してくれた。
「なるほど。ミーニャとしては『雇ってくれるお店があるよ!』と言った後に詳しく説明をするつもりだったけど、予想以上に話が盛り上がりすぎて、そのまま押しかけてきたってわけか」
ヌコヌコの話を簡潔にまとめると、みんなの顔が真っ赤になった。
「す、すみません。うちのキャトンでも雇ってくれる店があると聞いて、いてもたってもいられなくなって……」
「私達が元気なうちは今のままでも何とかやっていけるんですけど、後のことを考えてしまってつい……」
「すすす、すみません……」
キャトンちゃん一家が揃って頭を下げる。ご両親もキャトンちゃんの将来のことが心配で日々思案していて、渡りに船のような話に聞こえたと言う。
「私達も日雇いで誰かの畑を手伝ってるだけだから、安定した仕事がほしくてつい……」
「ごめんよ、にーちゃん……」
「すみません……」
ニャジー、ライオ、ジャックの3姉弟も、流行り病で両親を亡くしてしまったらしく、同じ猫人族の畑の手伝いをさせてもらうことで何とか生活しているとのことだ。
「皆さんの事情はわかりました。それとミーニャ、怒ってないからプルプルしないでくれ」
みんなの事情を聞いている間、ミーニャはずっと俯いてプルプル震えていた。
どうやら俺が怒っていると思っていたようで、声をかけてやるとホッとした表情をした。
「ヌコヌコさんとミーニャには話しましたが、私は王都に知り合いがいないので、働いてくれる人が増えるのは大歓迎です」
ここで全員が嬉しそうな顔を見せたけど、言うべきことは言っとかないといけない。
「しかしうちは特殊な営業スタイルを取るつもりなので、他の店にはないシステムや道具が多いです。ですからそれらを秘密にしてもらわなければなりません。悪意がなくても『ついつい人に話しちゃった』なんてことがあったら困るんですよ」
一度厨房まで見せてあげたミーニャだけはウンウンと頷いているが、それ以外の人はいまいちピンと来てないみたいだ。トラージさんが代表して質問してくる。
「特殊というのは具体的にはどういった?」
「そうですねぇ、何から説明すればいいか――」
――グウゥゥゥ
説明の切り出し方を思案していると、不意に大きな音が鳴り響いた。
「あなたって子は……」
「だって姉ちゃん、いつもなら夜ご飯の時間だぜ!」
「今は真剣な話を聞いてるんだから少し我慢しなさい!」
どうやらライオのお腹の音だったみたいで、お腹空いたと訴えるライオと姉のニャジーの言い合いが始まった。
「もしかして他の方も夕飯がまだなのでは?」
この問いかけに全員が控えめに頷く。
「それはお腹空いちゃいますよね。ちょうどいいので、仕事の流れを説明するついでにみんなで夕飯にしましょうか」
「いや、押しかけてきた上にそこまでされては……」
トラージさんが固辞しようとするが、俺は片手で制した。
「いいんですよ。こちらは大切なお子さんを預かることになるかもしれませんし、そちらは大切なお子さんを預けることになるかもしれないんです。うちがどういうお店かをしっかり見定めてください」
これだけは俺にも譲れない。
キャトンちゃんという大切な1人娘を預かることになるし、まだ言い合いをしているニャジーたち姉弟だってそうだ。俺は真摯に向き合わなければならない。
そのためには夕飯なんて朝飯前だぜ!
夕飯だけどな!
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