異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木

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第1章 小説の第1章は大体説明みたいな感じだよね

16話 ふぁっ!?

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 1人ホワイト企業化計画に燃えていたんだけど、どうもミーニャの様子がおかしい。
目をパチパチさせ挙動不審になり、なんだか焦っているような感じだ。

 その理由はすぐに彼女の口から語られた。

「条件が良すぎます! 」

「へっ?」

「私もたまに宿屋さんとかご飯屋さんのお手伝いをさせてもらうことがありますけど、1日働いて銀貨2枚か3枚ぐらいですよ!?」

「えっ!? マジで!?」

 この情報には素で驚いた。

(子どもなのをいいことに日給2,000、3,000円でこき使うとか鬼かよ!)

 銀貨3枚の日給だとしても、1ヶ月休みなしで身を粉にして働いて銀貨84枚、約84,000円の月収にしかならない。

 こちらの世界では普通なのかもしれないけど、日本の常識がありなおかつ自分自身酷使されていた経験があるので、とても看過できない問題だ。

(1番最低賃金が低い県でも最低時給820円ぐらいだったよな? 1日12時間労働の28日だと、、、それでも27万か28万ぐらい貰えるだろ!?)

 週休2日の条件でも日本なら20万円前後はもらえる計算となる。

(子どものお手伝い程度だって割り切ってんのか? なんか胸くそ悪くなってきたな……)

 確かに食料品の物価は低めの世界だけど、それでも月の食費は一定額必要だし、生活必需品の購入費などで絶対に何かしらの出費はある。

 それなのにそんな安い賃――

「あのぉ、ジョージさん?」

 また1人で長々と考え込んでしまったみたいで、ミーニャの声で意識を引き戻される。

「ごめんごめん、考え事してた。えっと、この前も話したけど、俺がやろうとしてるお店はちょっと変わった内容になってるから、その辺も含めてお給料をちょっと割高に設定してるんだよ」

「そう……なんですね。ちなみにお仕事内容っていうのは?」

 簡単に納得してくれてよかった。
まぁ給料が多いに越したことはないだろうから、問題あるまい。

「これは実際に軽くやりながら説明させてもらおうかな。それを聞いてから働くかどうか決めてもらって構わないけどさ、どちらにしてもここで見た物や教わったことは内緒にしてほしいんだ」

「もちろんです!」

「ありがとう。じゃあまずは入口横の受付に行こう。そこで仕事の流れを説明するよ」

 ミーニャと連れ立ってレジとなる受付カウンターに移動し、厨房内も案内しながら一連の流れを説明した。

 案の定ミーニャは目を白黒させて驚いていたが、

「確かにこれは内緒にしないとですね。絶対に誰にも言いません!」

と再度約束してくれた。ありがたい。

「この受付のことをレジって言うんだ。基本的にレジの人はレジから動かなくていい。料理するのも、料理の受け渡しも、食器を洗うのも、それぞれ担当を配置する予定なんだ」

 手が空いた時はもちろん他の仕事を手伝ってもらうけど、特に最初の内は分業しておかないと難しいだろう。

 レジは食札のシステムに慣れないといけないし、何よりも金銭を扱う重要なポジションだ。

 調理は俺が受け持つつもりだけど、料理好きな人を雇えればその人に任せてもいいかな。

(俺には管理業務もあるからな)

 こっちの人はフライヤーとかガス台の使い方を覚えるのに苦戦しそうだけど、そこは頑張ってもらうしかない。

 洗い物の担当者も食器洗浄機の使い方や洗剤の補充の仕方を覚えないといけないし、どの担当になってもまずは1ポジション覚えるだけでいっぱいいっぱいだと思う。

「ジョージさんのお店、確かに変わってます。普通はできるだけお店の人の数を減らそうとするのに」

「暇なお店ならそれでもいいかもしれないけど、忙しいお店とか忙しい時間帯だとお客様を待たせちゃうからね」

 極端な人件費削減のしわ寄せは、その時間に働いているスタッフとその時間に来てくれるお客様へ向くことになってしまうので絶対にダメだ。

「お客さんが少ない時間帯を見計らってご飯を食べに行ったのに、そこですごく待たされたらミーニャだって嫌だろう?」

「確かに!」

 ミーニャがいろいろと納得してくれたところで、改めて俺は尋ねなければいけない。説明すべきことはすべて説明したし、待遇面でも問題ないだろう。

「改めて聞くよ。ミーニャ、俺の店で働いてくれないかい?」

 そう尋ねると、ミーニャはハッキリとした声で答えてくれた。

「ごめんなさい!」

「ふぁっ!?」

 「お願いします!」という返事が来ると思ってた俺は、思わず変な声を漏らしてしまった。
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