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第1章 小説の第1章は大体説明みたいな感じだよね

8話 スキルと条件

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 商業ギルドを出た後は食材を卸してくれそうな店探しをしようと思っていたんだけど、思ったよりも老いぼ、、、じゃなかった、オイ=ボレーヌさんと長話をしていたようで、すっかり陽が落ちてしまっていた。

 通りには魔道具であろう街灯があるものの、光量が不十分で歩行に差支えがない程度の薄い灯りでしかない。

「こりゃ店探しは明日だな」

 小さく呟いて帰路に就く。

 帰宅後、夕食を作るためにお昼に買っておいた食料をゴソゴソとあさる。
厨房はもちろん倉庫にまで冷蔵庫と冷凍庫が完備されているため、多めに在庫を抱えてもムダに腐らせる心配が少ない。

「肉類は何が何かわからなかったから買わなかったし、野菜炒めでも作ろうかな」

 買い物に行った際に肉屋も覗いたのだが、ホーンラビットやランバードといった魔物のものとしか思えない肉しか販売されていなかったので購入を控えた。
市販されているから食中毒などの心配はないんだろうけど、異世界生活1日目だしどうしても及び腰になってしまったのは内緒だ。
何件かの肉屋を覗いてみた品揃えに大差はなく、ウシやブタやトリという日本ではポピュラーな肉を見つけることはできなかった。

「やっぱりウシとかブタとかトリとかは、ファンタジー小説にあるみたいに農耕にしか使われなかったり、ミルクとか卵を取るためだけの存在なのかな?」

 素早く野菜を切りながらそんなことを考えていると、あることを思い出した。

「あっ! 調味料!」

 買い物に行った時も「スキルで買えるからいいや」と思って、調味料の類は購入どころか見ることすらしていない。
食材の下拵えは順調に進んでいるのに味付けするものがないため、このままでは本当の意味で野菜を炒めただけの料理になってしまう。

「でもどうやったらスキルを使えるんだろう?」

 【共通言語】や【防犯の心得】のような常時発動型のスキルではないだろう。
もし常時発動型だったら、それこそ辺り一面調味料まみれになってしまう。

「【料理上手】は自然発動型っぽかったもんな。包丁持っていつもどおり切ろうとしたら、いつもより速く切れたって感じの」

 となると、【悪口禁止】のように特定の条件を満たせばいいのだろうか?

「大きめの醤油が欲しい!」

 頭の中で念じながら口でも唱えてみると、どこからか「銀貨1枚を手にしてください」というテレパシー的なものが流れてきた。頭の中に直接話しかけられたような感覚で、少しゾクッとしてしまう。

「これでいいのか?」

 手に銀貨1枚を持つとスッと消えてなくなり、代わりに目の前の調理台に1.8ℓの醤油のボトルが現れた。

「うん、怖いな!」

 素直な感想だった。
銀貨がスッとなくなる感覚や、いきなり目の前に物が現れる現象。とてもじゃないが他の人には見せられない。

「便利なスキルだし、これはありがたく多用させていただこう」

 何回かの試行で言葉に出さなくても念じるだけでいいということが分かり、調理を進めながら思いつく限りの調味料を取り寄せ、しばらくして無難な味付けの野菜炒めが完成した。

「俺が調味料だと認識しているものは購入可能みたいだな」

 そもそも調味料とは「料理へ味をつけるもの」のざっくりとした総称であるため、砂糖や塩などはもちろん、ケチャップやソースなどの調合済みのものも含まれる。
細かいところでいえば、生のニンニクは購入不可だったが、チューブ入りのすりおろしニンニクやガーリックチップは購入可能だった。

「市販の焼き肉のタレが手に入るのも嬉しいし、働いてた店のプライベートブランドの出汁とかも手に入るのは助かるな」

 焼き肉のタレやポン酢などもイチから作ろうと思えば作れるのだろうが、手間がかかることこの上ない。

 出汁を取るのに必要なコンブや丸々1本のカツオブシは調味料と見なされず、購入不可だった。
試しに念じてみた削り節が購入できたことから、細かい分類がどうこうの問題ではなく、俺がそのものを調味料として見てきたかどうかということなのだろう。

「確かに1枚ものの乾燥コンブを見て、調味料だ!って思ったことはないもんな」

 カツオブシも同様で、俺的には削り節となってようやく調味料っぽいと思えるのだ。
味に深みを出すために使っていた昆布粉という商品を試しに念じてみたところ、こちらは問題なく購入できたので、『俺が調味料と見なしてきたかどうか』で購入の可否が変わるというのは間違いないだろう。

「香辛料全般も問題なく手に入るし、便利だからいっか」

 考えるのがめんどくさくなってきたのでやや雑に結論づけ、地球での生活と同じように風呂に入ってゆっくり眠る俺だった。
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