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第1章 小説の第1章は大体説明みたいな感じだよね

4話 オーバーテクノロジーと大金と

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 羞恥心と小指の痛みが引いたのを見計らって、店内をより詳しく見て回ることにした。
確かに俺が『例の』ノートに書き記した、妄想上の店舗がほぼほぼ再現されている。

 お客様に見える部分は、オーバーテクノロジーにならないよう配慮されているようだ。
使用されているのは石材や木材がほとんどで、要所要所少しばかりの鉄で補強されている。
あっ、よく見りゃ照明はランタンに見せかけた電気照明じゃねぇか!

 引き続きキッチンに入ってみると、お客様の目に届かない部分はオーバーテクノロジーのオンパレードだったため、軽く眩暈がした。

「食器洗浄機、電子レンジ、オーブン、ガスコンロ、給湯器……」

仕組みは不明だけど、電気もガスも水道も整備されていた。

 キッチンの奥にはスタッフの休憩所も兼ねた広めの倉庫があり、さらには従業員用のトイレまで完備。1番奥には風呂付きの住居スペースまである。

 好きに妄想してたから「あったらいいな」って感じで書き込んでたんだけど、こんな風に役に立つとは思わなかった。ナイス俺の妄想!

「ホールにはお客様用のトイレが別にあるし、全部水洗トイレだ」

 水道とか電気とか誤魔化すのが大変そうだけど、不便な生活を送るよりは断然マシだな。
異世界ものの小説にたまにある、草でお尻を拭くような生活は真っ平ごめんだ。いざとなったら「魔道具です」とか言っておけば誤魔化せるだろ。

 店舗についてはそう割り切ったものの、もう1つ俺を悩ませるものがあった。

「さて、この大量の金貨だけど……」

 最奥の住居スペースのテーブルに、金貨と思しきものが山積みになっている。数えてみるとピッタリ500枚あった。

「異世界での支度金ってことかな? そうだよね? 使っても怒られないし捕まらないよね?」

 金貨のことは手紙に記載がなかったので、不安でしょうがない。
実は俺は雇われ店長みたいな身分で、建物も金貨も影のオーナーの所有物だったら、ただの盗人になってしまう。

「女神様! この金貨は使ってもよいのですか!?」

 何となく天井を見上げて叫んでみるも、もちろん返事なんてない。

 臆病者の俺には「ヒャッハー! 遠慮なく使わせてもらうぜぇ!」という世紀末ザコのような図太さはないので、何とか別の方法でコンタクトを取らねば。

「超絶美人な女神様! もしこの金貨を使用していいのであれば、小指をぶつけてください!」

 そう叫ぶや否や、今までの強打が嘘のようなソフトタッチさで小指がテーブルの足にぶつけられた。

「ありがとうございます、女神様!」

 本気で感謝してるんだけど、女神様のチョロさに思わずにやけてしまう。
傍から見たら大金の前でニヤニヤしている、変態成金にしか見えないだろうな。

 しばらくして正気に戻った俺は、新たな問題に直面する。

「やべぇ、貨幣価値がわかんねぇ……」

 こればっかりは実際に確かめてみないとわからないんだろうけど、1つ問題がある。

 スキルの関係上、俺の身の安全はこの建物内でしか保証されていない。
1枚だけ持っていくにしても、金貨1枚で100万円とか1000万円の価値があったら、犯罪者に狙われてもおかしくない。自衛の手段がない俺は「飛んでみろやぁ!」と言われ、言われるがままにぴょんぴょん飛び跳ね、奪われるだけだ。

「しかもスーツ姿だし」

 死に際の服装が再現されてるんだろうけど、文化レベルが中世ヨーロッパ程度なら明らかに周りから浮くし、注目を浴びること間違いなし。

「大金所持に加えて衣服まで目立つんじゃ、どうぞ襲ってください!と言わんばかりだよなぁ」

 そんなこんなで散々頭を悩ませたけど、結局金貨を1枚だけ持って買い物に行くことを決めた。
あまりにも目立つようだったらまず洋服だけ購入して、貨幣価値を推測しよう。お釣りが出るようなら、着替えた後に当座の食料を買い込もう。さすがに調味料だけでは腹は膨れない。

「あれ? そういえばスキルで調味料買いたい時って、どうすればいいんだ?」

 ふとそんな疑問が浮かんだけど、現時点では調味料を使う差し迫った予定はない。後回しでいいや。

 建物の鍵も住居スペースに置かれていたため、しっかり施錠して出かけることにした。
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