1 / 96
第1章 小説の第1章は大体説明みたいな感じだよね
1話 異世界転移はテンプレと共に
しおりを挟む
これから綴る物語は、俺こと飯野譲治の異世界見聞録だ。
実際に体験したことなんだけど、テンプレかつ超ご都合主義な内容だから、苦手な方は回れ右をして引き返してくれ。
では始めよう。
◆
ふと目覚めたら見知らぬ場所にいたという、始まりからして典型的な物語の始まり。
ややサブカルに偏っている己の知識をフル活用し、ベタな結論を導き出す。
「ふむ、これがみんなの憧れの異世界転移、もしくは異世界転生か」
「あのぉ、自己完結しないでもらえませんか?」
神々しいほどに真っ白な光景が広がってる中、言葉では表現し尽くせないような美しい女性が目の前に現れた。
おそらく女神様だろう。いや、間違いない。
思い返してみれば、連勤に連勤を重ねた帰り道で、トラックに轢かれた記憶が何となく残ってる。
ザ☆定番としか言いようがない、異世界転移・異世界転生のシチュエーションだ。
見落とした歩行者信号は赤だった気がするし、もしそうだったら信号無視した俺が全面的に悪い。
転移でも転生でも、させてもらえるなら感謝しかない。
死した俺が元の世界でどう処理されるかはともかく、トラックの運ちゃんには悪いことしてしまった。それだけは気がかりだな。
「考えてることわかりますからね? そろそろ説明させてくれません?」
目の前でなぜか狼狽えている女神様は、テンプレどおりならば「魔力の循環が――」とか「技術の発達が遅れていて――」とか「魔王が復活して世界が――」とか、尤もらしい理由をつけて俺に異世界への転移か、転生をお願いするんだろう。
しかし、元は死して終わるはずだった人生!
その続きを歩ませてくれるなら、転移でも転生でも受け入れようじゃないか!
「女神ですけど泣いてもいいですか?」
おっと、いかんいかん!
憧れの異世界生活に思わず頭がフル回転してしまい、女神様を無視してしまった。
よしっ、ちゃんと話を聞くぞ!
「お話しすることはほとんどなくなったんですけどね……」
若干涙目の女神様は、それでも気丈に説明してくれた。
「要約すると、女神様が管理している世界で魔力の循環が悪くなってしまい、その循環しない魔力を、異世界から人を招くことで大量消費したいってことですね?」
「まだそこまで説明していない冒頭も冒頭だったのですが、まさしくそういう理由です」
泣くのを必死に堪えながら肯定する女神様。神とはいえ女性を泣かせるのは趣味じゃないから、一刻も早く異世界に行って、力になってあげようではないか!
「わかりました! おそらく元の世界には戻れないのでしょうし、異世界で頑張ります!!」
あっ、でも、安請け合いだけじゃダメだな。
「質問というか相談なのですが、異世界もののテンプレですと、役立つスキルをもらったり、頑丈な肉体を得られたりするんですけど、そのへんは?」
おっと、これも聞いておかなきゃな。
「あと、共通言語的なスキルをいただかないと、最初の1歩から躓きそうな気がするんですが……」
「ウ、ウ、ウ………」
「ん?」
何やら女神様の様子がおかしい?
「ウワァァァアアン! 地球人がイジメるぅぅううう!!」
女神様が泣き出してしまった。
まさか、俺のジェントルマン精神が盛大に空回りしてしまったのか!?
あまりの見事な泣きっぷりに、高校生の時に付き合っていた彼女の言葉を不意に思い出してしまう。
『譲治くんってさ、何でも1人で考え込んで完結させちゃうよね。そういうのって、こっちは寂しいよ』
別れの最大の要因だったろうその癖は、どうやら成人してからも抜けてなかったみたいだ。
その証拠だと言わんばかりに、女神様の泣き声が辺りに響くのだった。
実際に体験したことなんだけど、テンプレかつ超ご都合主義な内容だから、苦手な方は回れ右をして引き返してくれ。
では始めよう。
◆
ふと目覚めたら見知らぬ場所にいたという、始まりからして典型的な物語の始まり。
ややサブカルに偏っている己の知識をフル活用し、ベタな結論を導き出す。
「ふむ、これがみんなの憧れの異世界転移、もしくは異世界転生か」
「あのぉ、自己完結しないでもらえませんか?」
神々しいほどに真っ白な光景が広がってる中、言葉では表現し尽くせないような美しい女性が目の前に現れた。
おそらく女神様だろう。いや、間違いない。
思い返してみれば、連勤に連勤を重ねた帰り道で、トラックに轢かれた記憶が何となく残ってる。
ザ☆定番としか言いようがない、異世界転移・異世界転生のシチュエーションだ。
見落とした歩行者信号は赤だった気がするし、もしそうだったら信号無視した俺が全面的に悪い。
転移でも転生でも、させてもらえるなら感謝しかない。
死した俺が元の世界でどう処理されるかはともかく、トラックの運ちゃんには悪いことしてしまった。それだけは気がかりだな。
「考えてることわかりますからね? そろそろ説明させてくれません?」
目の前でなぜか狼狽えている女神様は、テンプレどおりならば「魔力の循環が――」とか「技術の発達が遅れていて――」とか「魔王が復活して世界が――」とか、尤もらしい理由をつけて俺に異世界への転移か、転生をお願いするんだろう。
しかし、元は死して終わるはずだった人生!
その続きを歩ませてくれるなら、転移でも転生でも受け入れようじゃないか!
「女神ですけど泣いてもいいですか?」
おっと、いかんいかん!
憧れの異世界生活に思わず頭がフル回転してしまい、女神様を無視してしまった。
よしっ、ちゃんと話を聞くぞ!
「お話しすることはほとんどなくなったんですけどね……」
若干涙目の女神様は、それでも気丈に説明してくれた。
「要約すると、女神様が管理している世界で魔力の循環が悪くなってしまい、その循環しない魔力を、異世界から人を招くことで大量消費したいってことですね?」
「まだそこまで説明していない冒頭も冒頭だったのですが、まさしくそういう理由です」
泣くのを必死に堪えながら肯定する女神様。神とはいえ女性を泣かせるのは趣味じゃないから、一刻も早く異世界に行って、力になってあげようではないか!
「わかりました! おそらく元の世界には戻れないのでしょうし、異世界で頑張ります!!」
あっ、でも、安請け合いだけじゃダメだな。
「質問というか相談なのですが、異世界もののテンプレですと、役立つスキルをもらったり、頑丈な肉体を得られたりするんですけど、そのへんは?」
おっと、これも聞いておかなきゃな。
「あと、共通言語的なスキルをいただかないと、最初の1歩から躓きそうな気がするんですが……」
「ウ、ウ、ウ………」
「ん?」
何やら女神様の様子がおかしい?
「ウワァァァアアン! 地球人がイジメるぅぅううう!!」
女神様が泣き出してしまった。
まさか、俺のジェントルマン精神が盛大に空回りしてしまったのか!?
あまりの見事な泣きっぷりに、高校生の時に付き合っていた彼女の言葉を不意に思い出してしまう。
『譲治くんってさ、何でも1人で考え込んで完結させちゃうよね。そういうのって、こっちは寂しいよ』
別れの最大の要因だったろうその癖は、どうやら成人してからも抜けてなかったみたいだ。
その証拠だと言わんばかりに、女神様の泣き声が辺りに響くのだった。
0
お気に入りに追加
1,135
あなたにおすすめの小説
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる