あなたがくれた奇跡

彰野くみか

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第一章

発覚②

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「ふわぁ」
 深夜三時。入院中は、夜十時には消灯だったので、この時間まで起きてるのがキツくなって来て、大きな欠伸が出た。
「ははっ今の口、りんごが丸ごと入りそうだったぞ」
 そんな私の姿を見て笑う健ちゃん。でも、睡魔に襲われている今、健ちゃんに突っ込む気にすらなれなかった私は、「先に寝るねー」と告げ、ベッドに横になった。
「えっ俺も寝るし!!」
 健ちゃんは慌ててパソコンをシャットダウンすると、電気を間接照明だけにして、ベッドに入ってきた。
 そして……。
 早く寝たい私の事はお構いなしに、抱きついてきたり、キスしてきたり……。
「由香理、愛してる」
 そう囁いては、キスをくり返し、私の身体に触れた──。
 そんな事されると、段々と私までその気にさせられて、健ちゃんの方を向いた。
 私からも健ちゃんに触れると、優しく包み込んでくれる健ちゃんの大きな手の温もりが心地よくて、もっと深く触れ合っていたい──……。
 私は上目遣いで健ちゃんを見た。健ちゃんの私に触れる手が、一気に激しさを増すと、もっともっと深いキスを重ねた。
 健ちゃんの手が、私の左胸に触れた瞬間、手が止まった。
 そのまま驚いたような表情を浮かべているから、なんとなく不安になり、健ちゃんに尋ねた。
「どうかしたの?」
 私の問いには答えずに、ゆっくりと左胸に触れる健ちゃん。だけど、その表情は強ばっていて、私の不安を更に煽る──。
「……どうかした?」
 私はもう一度訊いた。健ちゃんの表情は益々、険しさを増している。
「……?」
 お願い……。なにか言って?
 そう心の中で言うと、ようやく健ちゃんの口が動いた。
「……その……」
「うん」
「いや、左胸……なんかシコリがあるみたいなんだ……」
「シコリ……?」
「あぁ」
 健ちゃんが真っ直ぐに私の目を見据えて言うと、私は自分で左胸に触れて確認した。触ってみると、確かにコリコリしたものがあって、私はゾッとした。
「本当だ……」
 自分で、みるみる血の気が引いていくのが分かった。これって……これって……。
 小刻みに身体が震え出す。怖くて、健ちゃんを見上げた。
「明日にでも病院に行こう。早い方が良い。俺も付き添うから」
 健ちゃんはそう言ってくれたけど、私は、「ひとりで行けるから大丈夫だよ」って、無理やり笑顔を作って言った。
 だけど健ちゃんは、私のおでこにキスをすると、囁いた。
「無理やり笑うの止めろって、ガキの頃から言ってるだろ」
「うぅ……っ」
 私を優しく抱き寄せる健ちゃんに、涙が溢れた。
 だって、シコリがあるって事は……私、癌……なの?
 明日は絶対に病院に行こう。健ちゃんも早い方が良いって言ってくれたし。
 大丈夫、気のせいって分かれば、私も健ちゃんも安心出来るし。

 私はそう言い聞かせると、健ちゃんの腕の中で眠った。
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