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犬猿の仲①
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犬猿の仲
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私と健ちゃんは子どもの頃は仲が悪いことで有名だった。
顔を合わせればケンカをしてたし、付き合い始めた頃は、いろんな人に驚かれたものだ。
それでも1番驚いたのは自分自身だと思う。
まさか私が良ちゃん以外の人と付き合うなんて想像すらしたことなかったし、健ちゃんは口うるさいお兄ちゃんって感じだったから。
私たち3人のことを話すには、幼稚園の頃まで時間をさかのぼる——。
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「由香理ちゃん!」
大好きな良ちゃんこと立花良一くんの姿を見つけると、私はいつも全速力で駆け寄る。
「良ちゃん‼︎」
満面の笑みで良ちゃんを出迎えると、幼稚園の園庭にある砂場まで急いだ。
私、森田由香理と良ちゃんは、同じ日に同じ病院で生まれて以来、ずっと一緒。
生まれた時間は私の方が早いから、ちょっぴり私がお姉さん。
って言っても、5時間だけだけど。
「大きくなったら結婚しようね‼︎」
良ちゃんとは家もお隣同士で、将来は良ちゃんと結婚するんだ!——そんなことを本気で信じていた。
そんな夢見がちな私をいつもバカにして突っかかって来てたのが1歳年上の健ちゃん。
「バッカじゃねーの! さすがは夢の国のブリンセスだな‼︎」
「なによ‼︎ ケンボーには関係ないことでしょ‼︎」
「また始まった……」
いつもの言い合いにあきれる良ちゃんもいつものこと。
ちなみに、健ちゃんの言った「ブリンセス」というのは「ブス+プリンセス」で「ブリンセス」らしい。
「もー! ケンボーまじでムカつく‼︎」
「あんなヤツ相手にすることないよ」
健ちゃんとの言い合いでイラつく私を慰めるのもいつもの良ちゃんの役割だ。
これが幼稚園の頃の私たち3人の朝の日課。
良ちゃんと遊んで、健ちゃんとケンカしては良ちゃんに慰めてもらう。
そんな毎日だったけど、私は楽しかった。
そして、そんな日々が永遠に続くんだって信じて疑わなかった。——というより、〝別れ〟ってものを理解していなかった。
だから、変わらないんだって思ってた。
お母さんから良ちゃんが引っ越す話を聞くまでは。
「え……。良ちゃん、遠くに行っちゃうの?」
「そう」
お母さんは申し訳なさそうにうなずく。
なんでお母さんが申し訳なさそうなんだろう? とか、そんなことはどうでもよかった。
それより、たった今突きつけられた現実を理解するだけで、私の心は苦しみを感じたから。
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