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第4章 灼熱の大砂漠

第34話 楽器を奏でる男性1

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「その男性はどこにいるのかしらね?」
 ラミアが言った。
「この大陸にないのは確かだろうな」
 ウンディーネが言った。
「ウンディーネ、知ってるのか?」
「場所くらいはな」
 ウンディーネが答えた。


「じゃあ、教えて」
 ミアが言った。
「これから一緒に行くんじゃから、良いだろう」
 ウンディーネが笑う。
「教えてくれても良いのに」
 ラミアが頬を膨らませる。


「西の大陸だ。だが、ここからだと遠いから、地下通路を通った方がいい」
「地下通路って、クリスと通った?」
「そうだ」
「なら、私が案内を……」
 クリスが意気揚々と申し出る。
「お前さんの案内は地下通路の近くまで来てからだ」
 ウンディーネが冷たく言った。


「お前さんらはこの辺には不慣れだ。ミズナシがいるからいいものを、下手に動くと体力を消耗するぞ」
「そうだな」
「ちょっ、マコトさん、何して。ふぁ」
 ミズナシが艶っぽい声を出す。
「マコト、何してるの?」
 ラミアが聞いた。マコトはミズナシのお尻を触っていた。その瞬間、周囲が凍る。


「マコト、そこになおりなさい。きついお仕置きを」
「待て。ヤバい」
 ラミアの気迫に押されるマコト。
「言い訳は聞かないわ。灰にしてあげる」
 ラミアが魔法を発動する。
「ラミア、ここでそんな魔法使ったら、あなたもただじゃすまないわよ」
 ミーナが忠告する。そう。砂漠は高温のため、炎魔法を操るラミアの場合、魔法を唱える前に自動発火(勝手に飛んでしまう)の可能性がある。



「うっ。どうすれば?」
 ラミアがうろたえる。
「ここはしばらく耐えるんじゃ。砂漠から出たら好きにしていい」
 ウンディーネが許可を出す。
「待て。俺の立場は?」
「自業自得じゃな」
「そんな」
 マコトは砂漠から出て、ラミアの怒りの炎を受ける。



「全く手加減しないもんな」
「足りないようね?」
「もう、いい。やめっ。ギャー!」
 ラミアから連続のお仕置きを食らう。


 マコトたちは砂漠を出て、地下通路に向かって歩き出した。マコトはラミアの怒りの炎で体がぼろぼろだった。
「体が痛い」
「クリス、回復してあげて。体以外でね」
 ラミアが釘を刺して言った。
「はい」
 クリスがマコトの体に手を当て、詠唱する。
「天の恵みよ、その偉大なる光よ。この者の傷を癒したまえ! 〝天母ヘブン・ヒール〟!」

 〝天母〟は僧侶の回復系魔法の中でも最高位に位置する回復魔法。すべての傷を癒し、回復させる。魔力消費も大きい。


「ありがとう、クリス」
「どういたしまして。お礼のキスを……」
 クリスが口を近づける。
「それはダメー!」
 ラミアが飛び出すが、「それはやめとこう」とマコトが言った。ラミアは拍子抜けし、地面にダイブ。
「なんなのよ~」


 地下通路を抜け、中央大陸に戻った。
「ここからじゃが、敵が強くなるから覚悟しとくのだ」とウンディーネが言った。
「近道はないの?」
 ラミアが聞いた。
「橋を渡ればすぐだが、西の大陸はまだ先の話だ」


 始まりの洞窟を周り、西の大陸に近づいた頃、からくりマシンが言った。
「この大陸は魔王城に行くための近道があるところです。もっとも、謎に包まれてますが」
「魔王を倒せるんじゃないか?」
「これから分かることですが、真の魔王ではありません」
「今は考えないことにしよう」


 西の大陸に入ると、空気が変わった。
「なんなの?」


【旅人殺しの滝】
「これは……」
「旅人殺しの滝じゃな」
「なんなんだ?」
「滝の中に隠された宝を見つけようと滝に入る者がいるが、屍になっていたと言う」
「滝の中で死んだのか」
「北に行くには、この滝を越えなければいけない」
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