あんたは俺のだから。

そらいろ

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並行-heikou-7 結埜side

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 変な緊張感を持っていた結埜は撮影が終わったと理解すると、糸が切れたようにその場に立ち尽くしていた。
 周りのスタッフ達は持ち場の片付けを始めていて、カメラマンの彼は撮影した結埜が映るモニターを椅子に座り見つめていた。

「……俳優さんってすごいな」

 モニターを見ながら彼が呟いたその一言を結埜は聞き逃さなかった。

「嬉しいお言葉ありがとうございます。須藤さん」

 素直で、ただ純粋な気持ちの言葉とともに結埜はひっそりと初めて彼の名前を声に出して呼んだ。

「っわあ!結埜さん!」

 結埜と彼は目が合った。さっきまで被写体とカメラマンとしてだったのに、今は一人の人として認識されていることに結埜は喜びを覚えた。そして、まさか呟いた言葉がその本人に対して聞こえていると思いもしなかったのかカメラマンの朱斗はとても驚いたリアクションをして、座っていたパイプ椅子からバランスを崩した。

「……っおっ、と」

 結埜は咄嗟に腕を伸ばす。
 さっき廊下ですれ違ったときと違うのは、私利私欲なんて置き去っていて彼に怪我をさせてはいけない、助けないと駄目だと思う本能が原動力になっている点だ。
 よろける朱斗の身体を結埜自らに引き寄せる。

ガシャン……!

 そして、パイプ椅子だけが派手に倒れスタジオ内にその音が響くほど大きな音が鳴ったのに結埜はそれ以上に心臓の音がうるさく脈打っていた。

「大丈夫ですか!?」

 心配で周りにやってきたスタッフには見向きもせず、ただ結埜は朱斗のことを見つめた。
 集まったスタッフの輪に囲まれて状況を把握した朱斗はほんのり耳を赤くして結埜の腕から逃げる。

「……わ。っえ、その、あ、ありがとうございます」

 しろどもどろになっている朱斗と再び目があった。
 今度は真正面から。

(あぁ…やっと、やっと、会えたんだね…)

 結埜は久しぶりに心が動かされた気がした。
 しばらくの期間、思い出したくても思い出したくなくて蓋をしていた過去の記憶が開け放たれて重なっていく。

「いいえ。大丈夫でしたか?」
「あ、はい。だいじょう、ぶです……」

 結埜よりも少し若い彼。

(この年齢くらいだと、こんな表情をするんだ…)

 朱斗の仕草、言葉、表情を目に焼き付けようと結埜はじっと見つめた。
 周りに集まっていたスタッフはいつの間にか散らばっていて、帰宅の準備を進める。

(愛してる…)

 結埜は声に出そうなその言葉を飲み込んで、朱斗との会話を続けた。
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