あんたは俺のだから。

そらいろ

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並行-heikou-6 結埜side

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 ほんの一瞬しか見えなかった彼のことが結埜の頭から離れなかった。
 やっと見つけた自動販売機で買った水をその場で開けて一気に飲み、冷静になろうとする。心臓の鼓動のうるささが治まる気配は無い。

「すぅー。ふぅー…」

 深く深呼吸をしてから結埜は、控え室へと戻った。

「あ!結埜さん!もうー、どこに行ってたんですか?探しましたよ」

 案の定、勝手にいなくなった結埜を探していたマネージャーからのお決まりの言葉を貰って、「ごめんごめん」と軽くあしらい、椅子に座る。

「お弁当、食べないんですか?そろそろ次の取材が始まりますよ」
「ああ、んー。今日は弁当はいいや。ありがと」

 食べかけのお弁当に蓋をして、持って帰れるようにマネージャーにお願いしているとスタッフさんが結埜に声を掛けに来た。

「結埜さーん。お着替えお願いしまーす」
「はーい」

 さっきよりも心拍は落ち着いていた結埜は、用意された衣装に着替えてメイクルームへと移動した。
 ドライヤーやアイロンでヘアセットをしてもらっている間も、メイクをしてもらっている間も、結埜が目を閉じて思い出すのは、一人の想い人だ。

「やっと…会えた…」

 目頭が熱くなりそうなのを堪えて、再び深い深呼吸をすれば、セッティングが終了していた。

「結埜さん、入られまーす」

 スタジオ内に再び足を運んで、準備された背景の前に立つ。

「じゃあ、これを持ってもらって、カメラに向かって表情お願いします」

 カメラマンの指示に従って、スタッフさんから受け取った花束を手に取り、前を向く。

「っ……」

 言葉にならない感情が、結埜の全身から溢れだした。心臓の心拍が再び上がり、撮影が始まったというのに冷静になれない自分自身がいた。

「もう少し肩の力抜いてもらって…。あ、微笑む感じとか貰えます?」
「はい…」

 カメラマンはシャッターを切り続ける。
 結埜の感情はごちゃごちゃなまま、仕事だけはキチンと全うしようとプロ根性でそこから撮影はとても順調に進んだ。

「一度確認しまーす」

 撮った写真のチェックをする。モニターの前にスタッフが集まり、その中に結埜もいた。
 集まる視線の先はモニターなのに、結埜だけは写されたモニターをちらりと見ただけでカメラマンへと目を向ける。

(…やっぱり、だ)

 髪の毛の隙間から見える彼の横顔から目が離せないでいた。

「ん。オッケーですかね」
「はい!オッケーでーす!お疲れ様でした!」

 チェックも済んだカメラマンからの一言で撮影は終了した。それは、この現場での一日の仕事が終わったことも意味していた。

「終わった…」
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