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ネオン-neon-2
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周りの人混みが騒がしくなり、目的地も近い。
樹矢も俺もそれを雰囲気で感じながら歩き、行き着いた先はそれはそれはとてもとても綺麗に電飾が輝く大きなクリスマスツリーだ。
「わぁ……」
背後の樹矢から声が漏れる。
おそらく10メートル以上はある本物のモミノキに所々の赤、そして白の電飾が纏わりついている。一つ一つから輝きを放ち、緑の葉を絶えず照らしていた。
近くに行かなくても分かる。
いや、近づかないからこそ、このツリーの綺麗さに気づく。
「いいなぁ」
凍てついた指先なんてどうでも良い。レンズを開き、カメラを構えてフォーカスを合わせ、シャッターを切る。
この今の感情もこの写真に収めたい。
カメラマンをしながら、幾度も幾度も願うが叶わない。
(サンタにお願いでもしてみようか)
なんて。冗談でも思ってしまう程に美しい光景だ。
カシャ……カシャ…
自分のすぐ隣に樹矢が立ち、ツリーを見上げているのを感じた。
さっきまでは距離を取っていたけど、ここまでくれば周りの視線はあのツリーにしか集まらない。意外と周りは辺りを見ていない。恋は盲目なんて、良く言ったものだ。
今、皆はツリーに夢中で恋をしている。
「綺麗だね」
声は俺に向かっている。
カメラを下ろして隣を見れば直ぐに目は合う。
「それは俺が?ツリーが?」
「えー?答えるのー?」
「俺が聞いてんだよ」
「決まってるじゃん」と一歩近づいて、樹矢はマスクを下ろせば耳元でハッキリと答えた。
「ツリーを撮ってる朱ちゃん」
我慢して我慢しても口元は、きっと緩んだ。
視線をツリーに移して「どうも」とサラッと言うはずが、言葉に詰まって返答してしまった。
俺だって分かってた。自意識過剰なんかじゃない。樹矢は素直すぎる奴だから、答えなんて分かってしまう。
それでも……。
「っはっず……」
声として出したか出してないか周りのざわめきで自分でも分からない心の内を外に漏らす。
「あ!朱ちゃん、グリューワイン!」
指で示した先には木の建物で作られたような、賑やかでカラフルな屋台が並んでいた。ドイツのクリスマスマーケットをそのままイメージしたこの空間は、ツリーを中心に異国に来たみたいだ。
「いこいこ!」と腕を引いて樹矢に連れて行かれいった。
「すみません。これ、2つで」
俺の有無なんか聞かずに、おそらく二人分の注文している隣で、電飾に包まれたその屋台を見つめる。店員さんも男性の外国人でこのイベントの為に来ているのか、片言の日本語で接客をしてくれていた。
「サンキュー!」
「Oh!Thank you!」
慣れない英語を言葉にして、樹矢はその持っている愛嬌を振りまく。
「どーぞ。朱ちゃん」
渡されたのはマグカップに入ったグリューワイン。樹矢も手に同じものを持っている。
樹矢も俺もそれを雰囲気で感じながら歩き、行き着いた先はそれはそれはとてもとても綺麗に電飾が輝く大きなクリスマスツリーだ。
「わぁ……」
背後の樹矢から声が漏れる。
おそらく10メートル以上はある本物のモミノキに所々の赤、そして白の電飾が纏わりついている。一つ一つから輝きを放ち、緑の葉を絶えず照らしていた。
近くに行かなくても分かる。
いや、近づかないからこそ、このツリーの綺麗さに気づく。
「いいなぁ」
凍てついた指先なんてどうでも良い。レンズを開き、カメラを構えてフォーカスを合わせ、シャッターを切る。
この今の感情もこの写真に収めたい。
カメラマンをしながら、幾度も幾度も願うが叶わない。
(サンタにお願いでもしてみようか)
なんて。冗談でも思ってしまう程に美しい光景だ。
カシャ……カシャ…
自分のすぐ隣に樹矢が立ち、ツリーを見上げているのを感じた。
さっきまでは距離を取っていたけど、ここまでくれば周りの視線はあのツリーにしか集まらない。意外と周りは辺りを見ていない。恋は盲目なんて、良く言ったものだ。
今、皆はツリーに夢中で恋をしている。
「綺麗だね」
声は俺に向かっている。
カメラを下ろして隣を見れば直ぐに目は合う。
「それは俺が?ツリーが?」
「えー?答えるのー?」
「俺が聞いてんだよ」
「決まってるじゃん」と一歩近づいて、樹矢はマスクを下ろせば耳元でハッキリと答えた。
「ツリーを撮ってる朱ちゃん」
我慢して我慢しても口元は、きっと緩んだ。
視線をツリーに移して「どうも」とサラッと言うはずが、言葉に詰まって返答してしまった。
俺だって分かってた。自意識過剰なんかじゃない。樹矢は素直すぎる奴だから、答えなんて分かってしまう。
それでも……。
「っはっず……」
声として出したか出してないか周りのざわめきで自分でも分からない心の内を外に漏らす。
「あ!朱ちゃん、グリューワイン!」
指で示した先には木の建物で作られたような、賑やかでカラフルな屋台が並んでいた。ドイツのクリスマスマーケットをそのままイメージしたこの空間は、ツリーを中心に異国に来たみたいだ。
「いこいこ!」と腕を引いて樹矢に連れて行かれいった。
「すみません。これ、2つで」
俺の有無なんか聞かずに、おそらく二人分の注文している隣で、電飾に包まれたその屋台を見つめる。店員さんも男性の外国人でこのイベントの為に来ているのか、片言の日本語で接客をしてくれていた。
「サンキュー!」
「Oh!Thank you!」
慣れない英語を言葉にして、樹矢はその持っている愛嬌を振りまく。
「どーぞ。朱ちゃん」
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