あんたは俺のだから。

そらいろ

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相互-sougo-3

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「……もう、好き!」
「……っあぁゔ!!」

 勢いで樹矢は俺のモノを掴んでいると一瞬忘れていたのだろう。優しく包んでいたソレを力強く握り締められ激痛が走り全身が跳ねた。

「ぁわわ……!ご、ごめん!」

 痛くて股間を抑え、樹矢を睨む。悪気が無いなんて分かりきっている。それでも……痛い。

「もう、知らない!」

 部屋中に響き渡った声は、樹矢を更におどおど焦らせた。さっきまでの甘い空気は一変し、緊張が走る。樹矢に限り。

 背を向けて身体を小さく丸める。
 謝り続ける樹矢の表情を想像したら、プッと笑いが漏れそうになる。顔が見えてバレないよう、丸める身体を更にコンパクトにして、笑いを堪えるのに身体を震わせる。

「朱ちゃん……」

 背中を擦る樹矢は、今の目一杯の慰めなんだろう。しょんぼりと何度も俺を呼んだ。

(こういうのも、幸せなんだろな)

 一人で良いと意地を張っていた過去。求めていた訳では無いが知ってしまったこの、形にする事か出来ないとんでも無く幸せな感情。

 二人で感じるこの幸福は、愛情になっていく。
 愛は育む。なんて、良く言ったものだ。

 まだ周りには気づけてないだけで、手に出来る幸せを探している人がいる。どうこうできるのは本人達次第。
 

「幸せ……」

 気を許した瞬間に大きな独り言をしてしまう。
 しまった。と気づいた時は手遅れで、嬉しそうなその手が俺に向かって伸びてくる。

「何が?」

 くるりと背を向けていた方に身体を反転させられ、黒い笑顔が視界いっぱいに広がった。

「お仕置き。俺に心配させた罰」

 意地悪を思いついた子供のような恋人は、その後俺の身体の隅から隅までを使い、快感を堪能した。
 流れる甘い時は今日もまた変わらない二人を見届ける。



 朝方、気絶した俺が目を覚ますと身体の汚れなんて微塵も無く寝間着をしっかりと着てベッドの上にいた。
 隣に樹矢は、居ない。

「あれ…。樹矢……?」

 誰も居ない黒い不安が押し寄せて、掛け布団を手で払い起き上がる。

「……っぅ!」

 腰に激痛が走って起き上がったものの直ぐにまたベッドに吸い寄せられるよう倒れ込む。
 腰に手を当てて、慰め程度に擦る。


ガチャ…

 間もなくして扉から開けばそれは樹矢だった。

「おはよ。はい、これ」

 差し出したのは、焼きたての食パンとスクランブルエッグ、それにブラックコーヒーがトレイの上に並んでいた。

「これ、樹矢が?」
「俺以外誰がいるの」

 笑う樹矢はなんだか照れ臭そうだ。

「朱ちゃんみたいに凝ったの作れないけどね、今日は立てないだろうから俺がお世話するよ」

 その原因はあんただろ。

 腰の痛みすら嬉しいのは、可笑しいのかな?

 きっとその幸せも樹矢は感じているんだろう。


―――
――
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