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物日-monobi-4
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「……一緒に?」
「そう。朱ちゃんと俺と二人で」
「この家に?」
「んー……。新しく探す。ここよりも、今俺が住んでる家よりももーっと広いとこ」
樹矢の住んでいるマンションも十分広い。
部屋は余って、リビングも広いのに物が少ないから雑風景な家だった。
「そんな広い家、いらないよ」
「いる。朱ちゃんの仕事が捗らない環境はダメなの。もっとこれからの俺を撮らないといけないのに」
真剣な顔して未来の俺達を描いて言ってくれる事が冗談じゃないと伝わる。頭に俺も思い描いた。これからの二人を。
「とりあえず、飯食おうぜ」
お腹が空いている。
それよりも寒くなった樹矢を温めたい。
ぐつぐつと土鍋の隙間から蒸気が天井に向かってあがる。両手に鍋つかみを装着して、小さなテーブルの真ん中に持っていき蓋を開ければ「わぁ!美味しそう……!」と樹矢は中身を覗かせて言う。
「んじゃ、改めて……」
冷蔵庫から缶ビールを二本出して、片方を樹矢に差し出す。
「樹矢、誕生日おめでとう」
「…………ありがとう、朱ちゃん」
缶同士がぶつかり、プルタブを開ければプシュ!と音を立てる。俺の後に樹矢も同じ音を鳴らし、口にビールを持っていきゴクゴクと喉を鳴らして呑んだ。
「……っはぁー!んま」
俺は樹矢に視線を移す。
すぐに樹矢の黒目が揺らいでいると分かったのは、ずっと俺の事を、俺の瞳を見ていたからだ。
「……みき、や?」
「ね。俺、もっと朱ちゃんと居たい。ううん。ずっと一緒に居たい。誕生日ってさ特別な日なんだって、朱ちゃんが好きだから分かった。人生で初めて、産んでくれてありがとうって親に思った」
「そんな……大袈裟だっての」
「大袈裟じゃないよ。大切な人におめでとうって言われると、そう思うんだって」
缶ビールの上の方を持って、肘を立ててゆらゆらと動かす。酔って言っている訳ではない。彼はまだ一口しか身体に流していないんだから。
「これからも誕生日にはおめでとうって言ってくれる?」
「……そんなん、言うよ。因みに、今日が誕生日って知らなくて言えなかっただけだから!」
言い訳にも聞こえる本音をぶつける。
「俺も忘れてたんだよね……実は」
笑い事じゃねぇよと突っ込みたくなる笑顔でさらっと衝撃的な事を言う。
「じゃあ、これからは毎年俺が思い出させてやる。樹矢を一番に祝うから覚悟しとけ」
「それは嬉しすぎるプレゼントかも」
不意に軽く口づけをして、嬉しそうな、恥ずかしそうな笑顔を向ける樹矢は心から幸せを感じているのが伝わった。
それから二人で仲良く鍋をつつき合い、心も胃も満腹になってお風呂に入った。
狭い浴槽の中、足を折りぎゅうぎゅうに二人で入っている。樹矢の足の間に俺は収まり、後ろから抱きしめられている。
「朱ちゃんの誕生日は、いつ?」
「んー……?俺?俺はねぇ。……」
俺の声は狭いお風呂場により響いた。
「覚えとくね」
「別に忘れていいよ」
「何言ってんの。もう忘れらんないよ」
引き寄せて、抱きしめる。
すっかり身体も温まり、ここに来た時とは違う安心感もあった。浴槽のお湯がゆらゆらと小刻みに波打つ。
樹矢は俺の耳元で確実に聞こえるように言った。
「愛する人が産まれた、一年に一度の大切な記念日なんだから」
―――
――
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「そう。朱ちゃんと俺と二人で」
「この家に?」
「んー……。新しく探す。ここよりも、今俺が住んでる家よりももーっと広いとこ」
樹矢の住んでいるマンションも十分広い。
部屋は余って、リビングも広いのに物が少ないから雑風景な家だった。
「そんな広い家、いらないよ」
「いる。朱ちゃんの仕事が捗らない環境はダメなの。もっとこれからの俺を撮らないといけないのに」
真剣な顔して未来の俺達を描いて言ってくれる事が冗談じゃないと伝わる。頭に俺も思い描いた。これからの二人を。
「とりあえず、飯食おうぜ」
お腹が空いている。
それよりも寒くなった樹矢を温めたい。
ぐつぐつと土鍋の隙間から蒸気が天井に向かってあがる。両手に鍋つかみを装着して、小さなテーブルの真ん中に持っていき蓋を開ければ「わぁ!美味しそう……!」と樹矢は中身を覗かせて言う。
「んじゃ、改めて……」
冷蔵庫から缶ビールを二本出して、片方を樹矢に差し出す。
「樹矢、誕生日おめでとう」
「…………ありがとう、朱ちゃん」
缶同士がぶつかり、プルタブを開ければプシュ!と音を立てる。俺の後に樹矢も同じ音を鳴らし、口にビールを持っていきゴクゴクと喉を鳴らして呑んだ。
「……っはぁー!んま」
俺は樹矢に視線を移す。
すぐに樹矢の黒目が揺らいでいると分かったのは、ずっと俺の事を、俺の瞳を見ていたからだ。
「……みき、や?」
「ね。俺、もっと朱ちゃんと居たい。ううん。ずっと一緒に居たい。誕生日ってさ特別な日なんだって、朱ちゃんが好きだから分かった。人生で初めて、産んでくれてありがとうって親に思った」
「そんな……大袈裟だっての」
「大袈裟じゃないよ。大切な人におめでとうって言われると、そう思うんだって」
缶ビールの上の方を持って、肘を立ててゆらゆらと動かす。酔って言っている訳ではない。彼はまだ一口しか身体に流していないんだから。
「これからも誕生日にはおめでとうって言ってくれる?」
「……そんなん、言うよ。因みに、今日が誕生日って知らなくて言えなかっただけだから!」
言い訳にも聞こえる本音をぶつける。
「俺も忘れてたんだよね……実は」
笑い事じゃねぇよと突っ込みたくなる笑顔でさらっと衝撃的な事を言う。
「じゃあ、これからは毎年俺が思い出させてやる。樹矢を一番に祝うから覚悟しとけ」
「それは嬉しすぎるプレゼントかも」
不意に軽く口づけをして、嬉しそうな、恥ずかしそうな笑顔を向ける樹矢は心から幸せを感じているのが伝わった。
それから二人で仲良く鍋をつつき合い、心も胃も満腹になってお風呂に入った。
狭い浴槽の中、足を折りぎゅうぎゅうに二人で入っている。樹矢の足の間に俺は収まり、後ろから抱きしめられている。
「朱ちゃんの誕生日は、いつ?」
「んー……?俺?俺はねぇ。……」
俺の声は狭いお風呂場により響いた。
「覚えとくね」
「別に忘れていいよ」
「何言ってんの。もう忘れらんないよ」
引き寄せて、抱きしめる。
すっかり身体も温まり、ここに来た時とは違う安心感もあった。浴槽のお湯がゆらゆらと小刻みに波打つ。
樹矢は俺の耳元で確実に聞こえるように言った。
「愛する人が産まれた、一年に一度の大切な記念日なんだから」
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