あんたは俺のだから。

そらいろ

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回転木馬-carousel-3

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「なーんかさ、子供の頃に唯一学校の行事?イベント?かなんかで一回行ったその当時は楽しかったの」
「うん……」

聞きながらも樹矢に生返事で、俺は食べ進める。

「今日撮影する時にね。真っ暗の空の下で誰も居ないのにキラキラ輝かせて馬が回ってるの見て、夢みたいなでも現実で、このまま回り続ける馬は何も得ないのに、そこにいて……なんか切なくなっちゃった」
「まぁ……」

 口の中でもぐもぐと咀嚼して飲み込めば、樹矢に言葉を返す。

「子供の頃って、あんな夜の遊園地は見ない景色だもんな」
「よねぇー」

 と言いつつ、俺の着ているトレーナーの下に手を入れて胸元にその細くて長い指が伸びる。

「っ…ちょっと!」

 抵抗しようと箸を置いて、樹矢の腕を掴む。ぐいっと引っ張って手を上に上げる……予定だった。力の差は圧倒でそんな事出来るのは夢のまた夢だ。こいつに敵うはずは無い。

 近づく顔はもう数え切れない位見ているのに、何時も綺麗だ見惚れる。この先もずっと……

 ちゅ……ちゅ、ちゅ……

 軽いリップ音を立てて、俺の唇、頬、首元、目元、ランダムにフランクだけど心の内は深過ぎる程の愛情を落としていく。

「んー……大好き……」

 乳首を指先で転がして、耳元で鼓膜をわざと震わせるかの如く、低く低くぼそっと呟かれた。

 机の上が片付いていない事が気になって集中出来なかったのにいとも簡単に流されて、そんな事どうでもいいと、俺は素直に樹矢を求めていると呟かれた一言で自覚した。

「朱……ちゅ。して」

 鼻先が触れそうなすれすれの所に樹矢の顔があり、その表情は興奮気味。
 目だけを合わせて、すぐに口を口で塞ぐ。

 すると樹矢の暖かい舌が口内に入って、俺を犯し始めた。

「んんっ……。っ……」

 ソファに押し倒されて、肘置き場に頭を乗せる。樹矢からの愛撫は止まる事無くそれどころか激しくなった。

「朱……俺の、触って……」

 空いている手で俺の右手首を握って、股間へと導かれる。熱を持ってズボンをお仕上げているそれは、窮屈さを解放させて直に触れる。

「……んっ」

 樹矢は更に近づいて、空気を吸い込む呼吸の音さえどちらか分からくなっていた。
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