あんたは俺のだから。

そらいろ

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 メリーゴーランドの中にも入れさせてもらい、実際に回ってはいないけれども馬に乗っている所を撮ったり、撮影は順調に進んでいく。
 外にずっと居るせいで、真冬じゃ無いのに指先は冷たく凍てついていった。

「よし、良いんじゃないかな」

 一通りイメージしたシチュエーションでの撮影とチェックを終えて、終わりの合図を出す。

「撮影終了でーす!お疲れ様でしたー」

 続けてスタッフさんがお疲れ様の挨拶を外に放った。
 次々と周りのスタッフもお疲れ様と交わし、慣れた手つきで撤収作業を始めていく。

「朱斗さんっ!」

 マネージャーにダウンコートを肩に掛けられた樹矢が駆け寄ってきた。鼻が少し赤くなっている様子から樹矢もこの気温に身体が冷えて寒いんだろう。

「今日もお疲れ様。良いのが撮れましたよ」
「いつも、ホントにありがとうございます」

 カメラやそのレンズ、機材を片付けて全てを背中に背負う。

「後ですぐ、連絡します。帰り、気をつけてください。お疲れ様でした!」

 太陽みたいにキラキラな笑顔は、後ろに輝くメリーゴーランドが更にキラキラにする。沢山の星が輝く綺麗さじゃなくて、一つの光の朝日が昇るような美しさがそこに感じる。

 樹矢に手を上げて、その場を去る。
 一足先に帰って夜ご飯の支度をしよう。

「にしても、さみぃな……」

 客が居ない夜の遊園地を他の誰にもぶつかる事無く、避ける事もせず目指した方向に真っ直ぐ歩いて出口を潜り抜けた。

 車に乗り一人寒空の下、俺は帰路に着いた。


―――


「ぷはぁー!美味しかったー」

 樹矢は着ているTシャツをパタパタと動かして上半身に新しい空気を入れこむ。首筋にはうっすら汗が浮かんでいて、満足そうにソファに背を預けた。

「温まっただろ?」
「もう、暑いくらい!」

 そう言葉にすると同時に起き上がり、着ていたTシャツを脱ぎ捨てると樹矢は俺の腰に抱きついた。

「ちょっと!まだ食べてるんですけど」

 目の前のグツグツと湯気立つ土鍋から白菜を救い出して、自分の呑水へ入れる。

「気にしない気にしないー♪」

 お腹が満たされて気分が上がっているからか、ルンルンと返すその言葉からは離れるという選択肢は無さそうだった。

「もう……。変に動くなよ」

 一応忠告だけして、俺は止まっていた箸を動かして再び食べ始めた。

「遊園地ってさ、なんか切ないよね」

 唐突に話し始めた樹矢は、内容も特殊で処理に時間を要した。

「……切ない、か?」
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