あんたは俺のだから。

そらいろ

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淘汰-touta-2

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――

 後々、楓からメッセージが届いて、「今週末なら午後から行ける」という内容だった。俺と朱ちゃんの二人共がオフの日を事前に教えていたので、事はスムーズに進み家を出て以来連絡も会うことも無かった母親と再会する日はあっという間に定まった。

「朱ちゃん。この日、会えるって」
「ん?あぁ、樹矢のお母さん?」

 主語が欠落していても分かってくれるのが朱ちゃんだ。

「うん。……会ってくれる?」
「会うよ。なーに?今更不安がってるの?」

 不安だ。正直言うと不安。
 会いたいと思わない人に、こんな形で会うなんて。けど、気にはなっていた。ずっと何してるんだろう。どこに居るんだろう。俺がこうしてモデルをしてる事を何かの形で知ってくれてたりするのかな。

「…………」

 何も答えられず、朱ちゃんの顔を見つめた。きっとその表情は言葉に表しづらい、不安が入り交じる畏れた感情が漏れていただろう。

「だーいじょうぶだって。樹矢は腐っても樹矢だろ。そのままでいいんだよ」

 アヒル口でニッコリと笑う朱ちゃんは、余裕げに首まで傾げる。その大きな船に乗り込んで、頼ってしまおうかと思わされる。きっと、「乗り込めよ」と朱ちゃんは手を差し出してくれるんだろう。

「ありがと」

 その笑顔に俺も笑顔で返す。こうやって支え合っている俺達の愛情は確実に育めている。愛情は与えてもらい、与えるものだと朱ちゃんを愛して分かった。幼い頃に与えてもらえず、それからずっと求めていたのは朱ちゃんと出会う為だったと今、この時間に感じる。

 手を伸ばして、触れる事が出来る朱ちゃんは温かく長い時間抱き締めても飽きない、むしろずっと抱きしめ続けたい。

「苦しいよ?樹矢」
「受け止めて」
「もう……仕方ないな」

 俺の腕を優しく手に取り受け入れる。

「あー…。幸せ」

 顔を埋めて、噛みしめる。

「はい!おしまいっ。片付けるからお風呂洗ってきてね」

 力を入れても軽々と押せない俺の身体をそれでも両手でぐっと押されれば、少しの圧は感じて一歩後ろに後ずさる。

「一緒にはいろうねぇー」

 いつもの笑顔を見せれば、朱ちゃんは照れるのはお見通しで思惑通り。

「わーったから!」

 早く行けと言わんばかりにお風呂場を指差して、目を合わさず大きく肯定する。思い通りになったその光景に、ニヤニヤが止まらないまま俺は素直に浴槽を掃除しに向かった。
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