あんたは俺のだから。

そらいろ

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密か-hisoka-6

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「久しぶり。樹矢」

 ニッコリと笑う彼の表情は、最後に見た時よりも大人びた印象に変わっていた。

「……久しぶり」

 「まあ、隣座れよ」と誘導されるまま助手席に乗り込み、シートベルトを装着する。
 カチッと音が鳴り、楓を見ればタバコを咥えてふぅ…と紫煙を上げていた。俺の視線に気づいて、「吸う?」と楓に差し出された物を無言で首を振って拒絶する。

「そういえば苦手だったな」

 過去を思い出して微笑み、ジャケットの胸ポケットにタバコを入れる。そう、俺は楓に本当に色んな事を教わった。何も分からない若造の頃、仕事はもちろん、人付き合いから、お酒も。タバコは当時、一度吸ってみたものの身体に合わなかった。

「何?それ、もしかして恋人に?」

 待っている間に店で買ったばかりの手に持った小さな紙袋を見て、悪そうな顔をして聞いてくる。

「なんでもいいだろ。どうせ興味ないんだから」
「……まあな」

 ご名答とでも言いたげに、腕につけている重厚感のある金属製の腕時計に目を向け時間を確認する。
 再びタバコを吸い込み、煙と共に息を吐き溢れそうな灰を俺達の間に捨てる。

「で、本題は?」

 車に乗ってから何時までも話を進めないまま、変わらない景色に痺れを切らして楓に振る。


「あぁ……。お前の母親な。今、色々訳あって入院してるんだよ」

 エンジンを入れて、アクセルを踏む。
 ハザードランプが消えて、チカチカと鳴る音の代わりにモーターの音が身体に響き始めた。
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