あんたは俺のだから。

そらいろ

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秋桜-cosmos-1

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自宅にある仕事部屋で樹矢の居ない一人の時間、次のロケ地を探すために、学生の頃に初めて自分で作った世界に一つの写真集を広げていた。

春夏秋冬で纏めてあり、これから来る秋に向けてどんな写真を撮ってたか振り返る為だ。
オフィスチェアに背中の体重を預けて、もたれままパラパラと薄っぺらい本を捲る。そこに写っている唯一のモデルは幼馴染である鶫。
当時は色んな所に連れ出しては、ほとんど毎日撮らせてもらっていた。

「ここ…。懐かしいな。」

あるページが目に止まる。

――

朝晩は涼しく、陽が落ちるのが早くなってきた立秋も過ぎた頃。制服のシャツが長袖の者と半袖の者、中にはセーターを着ている者が校内には混在している。

「鶫ー。」

終礼が始まるまで帰り支度をしたり部活の準備をしたりと、それぞれがクラスでザワザワとしている中、俺は廊下側の席座る鶫に声を掛けに向かった。

「ん?なに?また写真?」

鶫は、荷物を入れた鞄のチャックを閉めて俺の顔を見て微笑む。

「ご名答。今日は特別な場所に行くよ。」
「おー。それは楽しみ。」

ニッコリと可愛らしい笑顔を向ける。周りからは仲が良すぎるんじゃないか。と変な噂になっているらしいけど(鶫情報)、そんなの気にしない。

「んじゃ、また後で。」
「はーい。」

手をひらひらと振って、俺は自分の指定されている席へと戻り着席する。終礼の始まりを知らせるチャイムが校内に鳴った。

――

「朱斗ー。それで何処向かってるの?」

放課後。学校を出て最寄りの地下鉄の駅に真っ先に向かえば、何時もと反対方向のホームへと降り立つ。
普段と違う見慣れない光景に、冒険心がくすぐられワクワクと同時に気分が上がる。

「いいから、付いてきて。」

到着した電車は、人が少なくガラリとしている。二人で並んで座れる所を選び、腰掛けた。

「教えてよー!」

俺はトートバッグに入れていた、と言うより学校では隠し持って来ていたカメラの道具一式を組み立てて設定し始める。
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