あんたは俺のだから。

そらいろ

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燈火-touka-1

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橙色の陽が沈んで空が夕闇に覆われそうになる頃、俺達は二人で都内から離れた場所に来ていた。

山脈が連なる盆地にあるそこは、夜は涼しい風が吹き、さっきまで皮膚に汗ばんでいた熱を冷ましてくれる。

「もう少しで始まるね。」

隣に居る樹矢に話しかけ、首から下げるストラップに繋がるカメラを手に持ってシャッターを切る。

「見たこと無いからどんなのか楽しみ。」

俺が樹矢を誘って来たいと言った此処は、夏になると夜に燈火会が開催される。

以前に撮影で訪れたことがあって、その幻想的で日本らしい空間と時間に魅了されてその思いが忘れられないでいた。

「樹矢、蝋燭買いに行こう。」

「蝋燭?」

「そう、蝋燭に火をつけて祈りを込めるの。」

手を取って歩き出す。
周りに人がいないと言えど、世間様に顔を晒している為、樹矢は眼鏡を掛けて浴衣を着ていた。

紺色にストライプの線が入った浴衣に、正絹の白をベースにした帯を巻く樹矢は、さすがモデル。着こなしている。
前髪をかき上げてセットして片耳に見えるキラキラと角度を変えて光るピアスが、より男性らしさが増してかっこいい。

俺はというと、樹矢の帯の色に合わせた白い浴衣に紺の帯。二人で色をリンクさせて選んだ浴衣だ。

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