あんたは俺のだから。

そらいろ

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花明り-hanaakari-3

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「しゆちゃん、カメラ持ってる?」

「あぁ。あるけど…。」

特に撮影する気は無かったため、常に持ち歩いている小型のカメラを撮りだした。

「二人だけの思い出作ろっか?」

ニカっと笑う樹矢はとても嬉しそうにワクワクしていて、俺の手を取って歩き出す。


「桜、まだ撮ってないでしょ?」

なんで知ってんだよ…。と言いたいけれど、樹矢は俺の事は何でも知っている。

「撮ってない…。あ、そこ!そこで撮りたい。」

指差す方向に樹矢は歩いていく。
ここ?と振り返った瞬間、とても美しく、心がぐらっと動かされ慌ててシャッターを切る。

「綺麗…。だな。」

知らない間にマスクを外して、彼の整った顔が現れていた。
背景には、僅かな外灯が桜を淡いピンク色にして、その中でひっそりと立ち竦む樹矢を照らしていた。

暗闇の中で、樹矢だけを輝かすように沢山の桜は脇役の様にそこに居た。

「花明り…。」

レンズを覗きながら呟く。
あえてフラッシュは炊かずに撮影することで、桜の儚くひらひらと散る一枚一枚の花びらをも捕らえる。


ふと、レンズ越しに目が合う。

少しニコッと口角を上げて、ゆっくり口を開いた。



「しゆちゃん、綺麗だね?」

「ああ。」





あんたも含めて、とても綺麗な夜だよ。
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