あんたは俺のだから。

そらいろ

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光芒-koubou-3

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月夜に照らされる樹矢。
海はキラキラと光っているけど、決して眩しくは無く優しい。

カシャ…カシャ…

あえて逆光で撮影する。
都内と違って、周りに余計な灯りが無いから星がとても綺麗で空も青く写る。
樹矢の顔は見えず、シルエットになってるがその写真が撮りたかった。

普段は服やシチュエーションに合わせた表情、メイクで彼を撮影しているが、顔が見えなくても被写体が樹矢だと分かるのは、写真集特有だから…。
こういう写真をずっと撮りたかった。
今までに無い瀬羅樹矢を…。


「しゆちゃん…。」

ゆっくりと歩みを進めながら話をする。

「こんな時がずっと続けばいいのにね…。」

たまに見る、彼の切なそうで哀しそうな表情。
俺と目を合わす事無く、ポツリと言う。

波の音でかき消されそうなくらいの声だったが、確かに俺の耳には届いた。

「そうだな…。」

二人きりで自由に旅に出て、撮って撮られてそれを振り返る。思い出を増やしていく。振り返って笑い合い、また思い出を増やす。

二人きりで…。

「いつか、出来るよ…。」


そんな日が来る事を願いながら上を見上げると、真っ黒な空を横切るように一筋の光が流れた。

「樹矢。流れ星だ…。」

一瞬見えた光はさっきよりも数を増やして、どんどん流れていく。

「これだけの星に見守られている俺達の願いは、きっと叶うね?」
「きっとじゃなくて、絶対に叶う。」

カメラのレンズを変えて、空に向ける。
ゆっくりと焦点を合わせて、カメラに
写す。
シャッタースピードを変えて、星が流れていく様子も捕える。


願いを口には出さず、想いながらお互いの背中を預けて見る、暗い空に広がる無数の星は俺達二人を包み込む。
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