あんたは俺のだから。

そらいろ

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旅-tabi-3

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満面の笑みで湯気が立つ出来たてのたい焼きを頬張る。

「っんーっまい!」

レンズに向けて見せる表情は俺が見たかった物だった。少し後ろに下がって屋台と樹矢の上半身が映る位置からシャッターを切る。
たい焼きを持って目線を外していると流石モデル。画になる。

流れる人を気にせず、樹矢を切り取っていく。
ボーッとたい焼きを食べながら遠くを見つめていたのに、チラッとこっちを見ると店員さんに軽く挨拶して俺の方へ近付いてくる。


「最後の一口、美味しいから食べてみて?」

さっきまでの顔とは違う。俺にだけ見せる恋人の顔になった彼は少しのたい焼きをくれた。

はむっと口に入れると甘い香りが口に広がる。トロンとしたカスタードクリームが濃厚で、たい焼きのパリッとした皮と混ざり合う。
樹矢の食べかけだからかほんのり彼の香りもした。

甘い…。美味しいな…。

もぐもぐと食べている俺を嬉しそうに見つめる樹矢の指先が、ゆっくりと頬に伸びる。

「しゆちゃんのほっぺたに付いたクリームもーらいっ!」

そう言って優しく頬を撫でて、ペロッと舌で舐め取る。


外で、人が歩いている中でこんな事するなんて…。頬が火照ったのが分かった。
恥ずかしくなってカメラで顔を隠しながら歩き出す。

「次…。次行くぞっ。」
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