あんたは俺のだから。

そらいろ

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幼馴染-osananajimi-4

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鶫…。間違いない。この雰囲気、この声、名前も同じ…。

急に現れた幼馴染に戸惑いが隠せず、しばらくぼーっと突っ立っていた。

「須藤さん??大丈夫ですか?何時でも始めてもらっていいですよ!」

樹矢の声でハッとした。

そうだ、撮らないと。今は仕事に集中する時だ。

「あっ…すみません。考え事しちゃって。では、撮影始めまーす。」

撮影を始めたものの心の中で動揺は収まらず、目の前にいる鶫の事を考えていた。

カシャ…カシャ…


「もう少し近付いてる2人を撮ってみません?」

編集さんから指示が入る。

二人とも美形ですごく画になる。
お互いのネクタイを掴んでみたり、ジャケットをはだけさせてみたりと大人な雰囲気を漂わせて撮影は進んでいく。
鶫は俺と身長が変わらない。
その身長差がまた、お互いを引き立てるようで画になった。

俺は何処か上の空でシャッターを無心で押し続けた。

「鶫、もっと近く。」

樹矢が小さな声で鶫に言ったのを俺は聞き逃さなかった。ふと我に還って目の前の状況にまだ困惑する。

え…なんで呼び捨てなの。近すぎるよ…樹矢。
俺の…樹矢なのに…。

普段は嫉妬なんてしない、撮影だと割り切って集中できるのに今日は違った。
よく知る幼馴染に目の前で恋人を奪われたような錯覚になり、感情が剥き出しになりそう…。


俺はグッと堪えて、長く感じた一つ目の撮影が終わる。
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