あんたは俺のだから。

そらいろ

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空疎-kuuso-1

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「んっ……あぁ、みき…やっ…」

「はっ…はぁ、んくっ」

 名前を呼ばれ、相手が俺を求めていると実感する。行為も含めてその瞬間が俺は好きだった。俺が必要とされていると思うだけで心は満たされた。たった一瞬でも。

「あぁ…い、くっ、イクっ……‼」

「んんっ、くっ、あぁっ……」

 相手が果てるとそれを追うように俺も限界を迎えてイッた。

 求めてくれるだけでいい。
 恋するドキドキやトキメキなんて要らない。
 手を繋いだり恋人が隣に居て幸せを感じるなんて事は望んでいない。
 ただ、ただ相手が俺を求めてくれればそれだけでいい。
 それで俺が生きる意味ができるから。


___


 幼い子どもの頃、俺は両親に見放された。
 食べ物はろくに与えられず、学校へ行き帰ってきて夜中になっても親はどちらも帰ってこず、一人で朝を迎える事が日常茶飯事だった。

 なぜ俺を産んだのか。
 なぜ生きているんだろう。
 俺がいて誰が幸せになるんだろう。

 幼いながらに孤独のせいからか自分の生きている意味が見出だせなかった。


 高校生になってすぐ俺は、自分の生活のためにアルバイトを始めた。給料が安定してくると共にご飯をまともに食べれるようになっていた。幸せだった。

 バイト帰りのある日の夜、俺は読者モデルにスカウトされた。

 興味は全く無かった。モデルという仕事も分かっていなかった。ただ、お金になるなら。と、その為にスカウトを受けて未知なるモデルの世界へと踏み出した。

「あ、いいねぇ。その表情いいよ!」

 カメラマンが俺に向けてシャッターを押す。
 モデルの仕事は、やってみると思いの外楽しかった。お金にもなるし思ってもみなかった天然な性格が世間に受けて、自分を好きだと言ってくれるファンも増えていった。

 心がそこで満たされた気がしたんだ。
 けど、それでも足りないものがあった。


___俺には他者からの愛情が欠落している…。
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