あんたは俺のだから。

そらいろ

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遭逢-souhou-2

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「んーっ!終わったぁー!」

 写真集の撮影が無事に終わり、ここ数日間詰まっていたスケジュールからの解放に大きく背伸びをした。

 帰宅する前にコンビニへ寄り、自分の撮影した雑誌を探す。

(確か今日が発売日だよなぁ……)

 雑誌コーナーに一通り目を移して探してみるが目当ての本は無かった。

 本屋ならあるだろう。と家から少し離れているが大型の店舗へ早足で向かう。

「おっ…これこれ」

 案の定、雑誌が売ってあった。しかし…

(なんか、ここだけやたら平積みだな……)

 今日発売したばかりのはずなのに、すでに在庫が無いのか周りに比べて明らかにその雑誌の積まれている数が少なかった。

「ねぇ!売ってたよー!」

「あ!ホントだ!」

 不思議に思って陳列している前で考えていると女子高生二人が声を出したながら近くにやって来て、俺が持っているその雑誌と同じ雑誌を手に取った。

「やっぱりカッコイイねー。樹矢くん」

「ホントに!今度ファンクラブも出来るみたいだよ?入りたいなぁー」

 どうやらこの雑誌の表紙に載っている男の話をしているみたいだった。どんな奴だろう。と手に持っていた雑誌の表紙を改めて見る。

 そこには茶色のサラサラな髪の毛に綺麗な二重で太陽みたいにキラキラと笑う男が載っていた。なぜか思わず惹かれるその表情に心臓の鼓動が早くなった気がした。


 瀬羅樹矢。

 デビューの時から人気が高く、今回が初めての雑誌の表紙らしい。かっこいいルックスと無邪気な笑顔に世の若者はもちろんおばさま方もメロメロらしく、いま注目の人物としてその雑誌には取り上げられていた。


 家に着いて雑誌を捲る。自分のページよりも瀬良樹矢が載っているページが気になりマジマジと写真を見る。
 本当に色んな顔をする。この数ページで見せる顔は全て違う。かっこいいのに変わりはないが、何が言葉では表せない惹かれるものがあった。
 こっちに向かって手を伸ばす、彼の手に手を合わせ雑誌越しに触れる。

(いつか、このいろんな表情を自分の手で撮ってみたい……)


___いつか、彼に会ってみたい。
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