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Lemonade
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小さい頃から通っているカフェ兼お家のお隣さんは、僕が生まれた頃から知っている年上のお兄ちゃんがいた。物心ついた時には、にいにの後ろにべったりで「にいにとがいい!」が口癖だったのを覚えている。
「おかえり。どうだった?今日の学校は」
「何も変化無し。にいにが居ないとつまんないよ」
「俺が居たら自分の席に戻んなくなるだろ」
「同じクラスで隣同士の席にして貰うもーん」
「はい」とグラスに注がれたシュワシュワのレモネードをテーブルの上に置いてくれる。大好きな人が作ってくれる大好きな飲み物の為に、僕は毎日学校に通うことを頑張れているんだ。
「はぁ。最近蒸し暑いよねぇ」
制服のブレザーを脱いで、椅子に掛ける。レモネードをストローで一口……と思ったけれど想像以上に喉が乾いていたみたいで、一気に半分まで飲んでしまった。
「梅雨……だからな。今朝も雨降ってたろ」
「うん。登校するのが憂鬱になった」
「ほんと学校嫌なのな」
笑うにいには、頭を優しく撫でてくれた。幼い頃から変わらない。お互いひとりっ子なのに本当の兄弟みたいに僕らは仲が良い。
「あ、テラス行こうぜ」
お客が居ない放課後の時間、大学生のにいにはアルバイトとして任されているこの時間。僕にとって憩いの時だった。
「誰かいるの?」
滅多に行かないテラスにも横並びに木の椅子があり、飲み物を飲むことも可能だ。
手を引っ張られて、にいにの歩きに合わせる為に少し駆け足でついていく。
「ここ、座って」
にいにが屋根の下にある濡れていない椅子に座り、指差す所へ言われるがまま隣に座る。
「前見てみ?」
「ん?」
にっこりと笑うにいにの横顔を一瞬見て、目の前に顔を向ける。
「う……わぁ」
パステル調のトーンで大きく咲く紫陽花が僕らの目の前の景色に沢山現れた。存在する紫陽花は、今朝の雨の雫が残り、夕日に照らされながら艶と生命の強さを一つ一つが魅せてくれている。
「満開に咲いたばっかりなんだよ。朝はまだ蕾だったから」
「綺麗……本当に綺麗」
「だろ?一緒に見れて良かったよ」
「にいに、ありがと」
顔をにいにの方に向けて、感謝する。嬉しい感情が溢れているだろう。表情にも、きっと。
「……好き」
小さく、小さく呟いた一言が脳内に響くように繰り返された。意味を考える前に、僕の唇にはにいにの温かい唇が触れて、すぐに離れた。
「酸っぱい、な」
恥ずかしそうに笑うにいにの顔を僕は今でも忘れていない。
*Twitterにて、一松さんとのコラボ作品
「おかえり。どうだった?今日の学校は」
「何も変化無し。にいにが居ないとつまんないよ」
「俺が居たら自分の席に戻んなくなるだろ」
「同じクラスで隣同士の席にして貰うもーん」
「はい」とグラスに注がれたシュワシュワのレモネードをテーブルの上に置いてくれる。大好きな人が作ってくれる大好きな飲み物の為に、僕は毎日学校に通うことを頑張れているんだ。
「はぁ。最近蒸し暑いよねぇ」
制服のブレザーを脱いで、椅子に掛ける。レモネードをストローで一口……と思ったけれど想像以上に喉が乾いていたみたいで、一気に半分まで飲んでしまった。
「梅雨……だからな。今朝も雨降ってたろ」
「うん。登校するのが憂鬱になった」
「ほんと学校嫌なのな」
笑うにいには、頭を優しく撫でてくれた。幼い頃から変わらない。お互いひとりっ子なのに本当の兄弟みたいに僕らは仲が良い。
「あ、テラス行こうぜ」
お客が居ない放課後の時間、大学生のにいにはアルバイトとして任されているこの時間。僕にとって憩いの時だった。
「誰かいるの?」
滅多に行かないテラスにも横並びに木の椅子があり、飲み物を飲むことも可能だ。
手を引っ張られて、にいにの歩きに合わせる為に少し駆け足でついていく。
「ここ、座って」
にいにが屋根の下にある濡れていない椅子に座り、指差す所へ言われるがまま隣に座る。
「前見てみ?」
「ん?」
にっこりと笑うにいにの横顔を一瞬見て、目の前に顔を向ける。
「う……わぁ」
パステル調のトーンで大きく咲く紫陽花が僕らの目の前の景色に沢山現れた。存在する紫陽花は、今朝の雨の雫が残り、夕日に照らされながら艶と生命の強さを一つ一つが魅せてくれている。
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「だろ?一緒に見れて良かったよ」
「にいに、ありがと」
顔をにいにの方に向けて、感謝する。嬉しい感情が溢れているだろう。表情にも、きっと。
「……好き」
小さく、小さく呟いた一言が脳内に響くように繰り返された。意味を考える前に、僕の唇にはにいにの温かい唇が触れて、すぐに離れた。
「酸っぱい、な」
恥ずかしそうに笑うにいにの顔を僕は今でも忘れていない。
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