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BLで百人一首 92番
しおりを挟む「どうした?」
優しく声をかける貴方は、何時も俺を最優先に考えて行動してくれる。
少しでも顔色が悪いと「大丈夫?」
お腹が空いたなぁと思えば「何食べたい?」
そんなの甘えてしまう。
貴方の優しさに漬け込んで、質問に答える。わがままなんて言ってないようで答えたそれは完全に身勝手な俺の欲求。
「で、最近どうなんだ?」
「んー?」
「こっちだよ」
小指を立てて見せ、俺と恋人について聞いてくる。付き合い始め、上手く行っていなかった関係を知って以降、ずっと心配してくれている。
「なんとか。かな」
「あんま無理すんなよ。すぐ溜め込むんだからさ」
俺の頭にポンとその大きな薄い手を置いて軽く撫でる。
「ありがと」
顔を見られないようにそっぽを向いて返答する。
もう……逃げる事は許されない。自分の恋人の瞳を思い出して気づかれない程の小さな身震いをした。
俺の肌に触れる手が貴方だったら。
俺の心を奪い去ったのが貴方だったら。
俺の愛情を受け取ってくれるのが貴方だったら。
幾度も幾度も夢に見た。
抵抗できない状況から見た夢が叶う事は、許されない。
気づいてないんでしょ。俺の涙は。
気づいているんでしょ。俺の涙を。
揺れ動く事もその場で足踏みする事も出来ずに、俺は今日も夢だけを見てしまう。
二条院讃岐(92番)
わが袖は潮干(しほひ)に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし
訳…私の袖は、引き潮の時でさえ海中に隠れて見えない沖の石のようだ。他人は知らないだろうが、(涙に濡れて)乾く間もない。
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