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【28話】
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「ん?ルーク、擽ったい」
「す、すまないサイヒ!うわっ!!」
思わず後ずさる。
しかしサイヒの部屋のベッドはルークの普段使っている寝台とは違い狭いのだ。
後ろから落ちそうになるルークの腕を引っ張り上げ、サイヒがルークを胸に抱え込んだ。
普段は見えない鎖骨が露になっているのを間近で見て、思わずルークはごくりと唾を飲む。
「サイヒ、普段そんな恰好で寝ているのか?肌を出し過ぎではないか?」
先程はシーツの中にいたから、あまり見えなかった腕や脚が露になっている。
サイヒの格好はタンクトップに短パンだ。
しっかり晒は巻いているが。
それでも男と信じていてもサイヒに恋心を抱いているルークにとっては目の毒でしかない。
「別にルークしか見ないのだから問題は無いだろう?」
「いや、私の心臓が持たないと言うか、目のやり場に困る……」
「そう言うものなのか?」
「そう言うものなんだ。せめて何か羽織ってくれないか?」
「では着替えるか」
「ちょ、私は後ろを向くから!少し待ってくれ!!」
「別に気にはせんが、まぁソコまで言うなら後ろを向いておいてくれ」
シュルリ、と衣擦れの音がする。
後ろでサイヒが無防備に着替えているかと思うとルークの心臓は飛び出しそうなくらいバクバクと忙しなく動く。
ドクドクドクドク
(静まれ心臓!)
心臓が激しく動くので頭まで血が巡り顔も真っ赤である。
「着替えたぞルーク。て、耳まで赤くしてどうした!?」
「いや、何でもない…気にしないでくれ……」
何故がサイヒを起こしに来ただけで、ルークは異様にエネルギーを使ってしまった。
「しかしルークが起こしに来たと言う事はもう昼か。予定以上に寝たしまったな。待たせただろう?すまなかったな」
サイヒの手がルークの頬を撫ぜる。
その優しい感触と心地よい体温にルークは己からも手に頬を押し当てる。
「心配したのだぞ」
「すまなかった。許せルーク」
長い睫毛に縁どられた青銀の瞳がルークの瞳を見つめる。
その真剣な眼差しにルークの心臓は休む暇もない。
「心配してくれて有難うルーク」
チュッ
サイヒの唇がルークの額に触れる。
「ど、ど、どういたまして?」
「舌が回っていない。可愛いなルーク」
起きて10分もしない内に、サイヒはとめどなくルークを翻弄する。
全くもって心臓に悪い存在だ。
「それにしてもサイヒが寝坊するとは珍しいな。調子が悪いわけではなさそうだし、何かあったのか?」
「あぁ、まぁ私に何かがあった訳ではないのだがな。ちょっと明け方まで寝られなかっただけだ」
「何があったのだ?」
「うむ、まずはクオンに相談しようと思ったのだがな……」
ピシッ!
クオンの名が挙がった事に、ルークの体に電流が走った。
「何故クオンなのだ?」
「どうしたルーク?」
「何故私ではなくクオンなのだ!!」
ルークが怒っている。
本人は自覚が無いだろうが完全に怒っている。
「サイヒが何かを相談するなら!1番最初は私が良い!!」
「これは困ったな。うっかり口が滑った」
「何故に私ではなくクオンなのだ!?」
「あぁ、まぁルークの事だったからな」
「え?」
「ルークの相談をルークには出来ぬだろ?」
「私のこと?」
「そうルークの事だ。でなければ私が半身であるルークに1番に相談しない訳が無いだろう?」
クスリ、とサイヒが笑う。
この笑顔にルークが弱いのを知っていたら完全に確信犯なのだが、サイヒは自覚はしていない。
「それでも…私の知らないところで、サイヒが誰かと私の知らない事を話すのは嫌だ……」
「あんまり可愛い顔をするなルーク。私は意外とお前のその顔に弱いのだぞ?まぁでも最終的にはルークに話せば成らぬ事だからな。いっそここで話すか。出来るだけお前を傷つけたく無かったのだが…それでも聞くかルーク?」
ルークはサイヒの青銀の瞳をジッ、と見つめ。
そして首を縦に振った。
「す、すまないサイヒ!うわっ!!」
思わず後ずさる。
しかしサイヒの部屋のベッドはルークの普段使っている寝台とは違い狭いのだ。
後ろから落ちそうになるルークの腕を引っ張り上げ、サイヒがルークを胸に抱え込んだ。
普段は見えない鎖骨が露になっているのを間近で見て、思わずルークはごくりと唾を飲む。
「サイヒ、普段そんな恰好で寝ているのか?肌を出し過ぎではないか?」
先程はシーツの中にいたから、あまり見えなかった腕や脚が露になっている。
サイヒの格好はタンクトップに短パンだ。
しっかり晒は巻いているが。
それでも男と信じていてもサイヒに恋心を抱いているルークにとっては目の毒でしかない。
「別にルークしか見ないのだから問題は無いだろう?」
「いや、私の心臓が持たないと言うか、目のやり場に困る……」
「そう言うものなのか?」
「そう言うものなんだ。せめて何か羽織ってくれないか?」
「では着替えるか」
「ちょ、私は後ろを向くから!少し待ってくれ!!」
「別に気にはせんが、まぁソコまで言うなら後ろを向いておいてくれ」
シュルリ、と衣擦れの音がする。
後ろでサイヒが無防備に着替えているかと思うとルークの心臓は飛び出しそうなくらいバクバクと忙しなく動く。
ドクドクドクドク
(静まれ心臓!)
心臓が激しく動くので頭まで血が巡り顔も真っ赤である。
「着替えたぞルーク。て、耳まで赤くしてどうした!?」
「いや、何でもない…気にしないでくれ……」
何故がサイヒを起こしに来ただけで、ルークは異様にエネルギーを使ってしまった。
「しかしルークが起こしに来たと言う事はもう昼か。予定以上に寝たしまったな。待たせただろう?すまなかったな」
サイヒの手がルークの頬を撫ぜる。
その優しい感触と心地よい体温にルークは己からも手に頬を押し当てる。
「心配したのだぞ」
「すまなかった。許せルーク」
長い睫毛に縁どられた青銀の瞳がルークの瞳を見つめる。
その真剣な眼差しにルークの心臓は休む暇もない。
「心配してくれて有難うルーク」
チュッ
サイヒの唇がルークの額に触れる。
「ど、ど、どういたまして?」
「舌が回っていない。可愛いなルーク」
起きて10分もしない内に、サイヒはとめどなくルークを翻弄する。
全くもって心臓に悪い存在だ。
「それにしてもサイヒが寝坊するとは珍しいな。調子が悪いわけではなさそうだし、何かあったのか?」
「あぁ、まぁ私に何かがあった訳ではないのだがな。ちょっと明け方まで寝られなかっただけだ」
「何があったのだ?」
「うむ、まずはクオンに相談しようと思ったのだがな……」
ピシッ!
クオンの名が挙がった事に、ルークの体に電流が走った。
「何故クオンなのだ?」
「どうしたルーク?」
「何故私ではなくクオンなのだ!!」
ルークが怒っている。
本人は自覚が無いだろうが完全に怒っている。
「サイヒが何かを相談するなら!1番最初は私が良い!!」
「これは困ったな。うっかり口が滑った」
「何故に私ではなくクオンなのだ!?」
「あぁ、まぁルークの事だったからな」
「え?」
「ルークの相談をルークには出来ぬだろ?」
「私のこと?」
「そうルークの事だ。でなければ私が半身であるルークに1番に相談しない訳が無いだろう?」
クスリ、とサイヒが笑う。
この笑顔にルークが弱いのを知っていたら完全に確信犯なのだが、サイヒは自覚はしていない。
「それでも…私の知らないところで、サイヒが誰かと私の知らない事を話すのは嫌だ……」
「あんまり可愛い顔をするなルーク。私は意外とお前のその顔に弱いのだぞ?まぁでも最終的にはルークに話せば成らぬ事だからな。いっそここで話すか。出来るだけお前を傷つけたく無かったのだが…それでも聞くかルーク?」
ルークはサイヒの青銀の瞳をジッ、と見つめ。
そして首を縦に振った。
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