27 / 37
【26話】
しおりを挟む
「そう言えばお兄様は本名で武道大会にエントリーなされたのですか?」
「いや、それは問題があると思って偽名にしておいた。”リリー・オブ・ザ・ヴァリー”だ」
「あら可愛らしいお名前なのですね」
「本名から離れているといざと言うとき呼ばれても反応出来ないからな」
「本名からもじりましたの?」
「あぁ」
「そう言えば私、お兄様のフルネーム知りませんわ」
「まぁわざと隠しているからな。追手に居場所をバレる訳にはいかない」
「「「追手!?」」」
ルークとクオンとマロンの声がはもる。
「サイヒ、お前どんな罪状を犯した!?女性の恨みは恐ろしいぞ!」
「お兄様!どこの女性たちを誑かしたのですか!?」
「サイヒがそんなに多数の女性に追われているなんて…私が絶対に無罪にしてみせるからな!!」
クオンとマロンが身を乗り出してサイヒに迫る。
ルークはふらりと倒れそうになりながらも職権乱用をしようとしている。
何故か皆して”サイヒが女性を誘惑した”と言うのが決定事項になっているのは何故であろうか。
「別に悪い事はしていないがな…居場所がばれたら連れ戻されかねん程度には捜索されているであろうから身は隠しておきたい。それにルークの傍を離れんと誓ったしな」
「そう言えば誓いの柱が上がっていたな」
「やはりコーンには見えたか」
「あんな派手な誓いの柱は始めて見た」
「私とサイヒが互いが半身であると言う誓いだ」
エメラルド色の瞳をウルウルとさせ、うっとりとルークが言う。
うん、コレは乙女だ。
クオンは出来るだけ視界に入れないよう心掛けた。
真正面から見て胃が痛むのは避けたいのだ。
「あ、”リリー”で思い出しました。お兄様のと同じように花から名前を取る国がありましたよね?確か建国祭に招かれている隣国の王太子様とその伴侶の聖女様の名前も花の名前だった気がします」
「何?カカンから王太子と聖女が来るのか!?」
「どうした驚いて?サイヒが驚いてるのを見たのは初めて見るな。でもソレも格好良い……」
ルークの最後のセリフは小声なので周りには聞こえていない。
聞こえていたら又クオンの胃が痛くなっていた事だろう。
「あぁ、カカンはローズ王太子が婚姻を結んだら王位を譲り受けるからな。隣国同士ここいらで交友を深めようと陛下が建国祭に招いた。カカンはガフティラベルの大きさには負けるが大国だからな。しかも1000年もの間国が傾いたことも無い。力ある国とは友好関係を結んでおきたいと言ったところだろう」
「花と美の国カカン、平和でいたるところに花が咲き誇る国なんですよね。何時か行ってみたいものです」
マロンが手を頬にあてて顔を綻ばせる。
(俺も1度行った事あるが確かに美しく、平和でありながら活気づいた国だったな。マロン妃を是非連れて行ってあげたいものだ。きっとお気にいるだろう)
「私もサイヒと行ってみたいな」
「カカンか…嫌でもそのうちに行く羽目になるだろうがな……」
サイヒの小さな呟きは誰の耳にも入る事は無かった。
「いや、それは問題があると思って偽名にしておいた。”リリー・オブ・ザ・ヴァリー”だ」
「あら可愛らしいお名前なのですね」
「本名から離れているといざと言うとき呼ばれても反応出来ないからな」
「本名からもじりましたの?」
「あぁ」
「そう言えば私、お兄様のフルネーム知りませんわ」
「まぁわざと隠しているからな。追手に居場所をバレる訳にはいかない」
「「「追手!?」」」
ルークとクオンとマロンの声がはもる。
「サイヒ、お前どんな罪状を犯した!?女性の恨みは恐ろしいぞ!」
「お兄様!どこの女性たちを誑かしたのですか!?」
「サイヒがそんなに多数の女性に追われているなんて…私が絶対に無罪にしてみせるからな!!」
クオンとマロンが身を乗り出してサイヒに迫る。
ルークはふらりと倒れそうになりながらも職権乱用をしようとしている。
何故か皆して”サイヒが女性を誘惑した”と言うのが決定事項になっているのは何故であろうか。
「別に悪い事はしていないがな…居場所がばれたら連れ戻されかねん程度には捜索されているであろうから身は隠しておきたい。それにルークの傍を離れんと誓ったしな」
「そう言えば誓いの柱が上がっていたな」
「やはりコーンには見えたか」
「あんな派手な誓いの柱は始めて見た」
「私とサイヒが互いが半身であると言う誓いだ」
エメラルド色の瞳をウルウルとさせ、うっとりとルークが言う。
うん、コレは乙女だ。
クオンは出来るだけ視界に入れないよう心掛けた。
真正面から見て胃が痛むのは避けたいのだ。
「あ、”リリー”で思い出しました。お兄様のと同じように花から名前を取る国がありましたよね?確か建国祭に招かれている隣国の王太子様とその伴侶の聖女様の名前も花の名前だった気がします」
「何?カカンから王太子と聖女が来るのか!?」
「どうした驚いて?サイヒが驚いてるのを見たのは初めて見るな。でもソレも格好良い……」
ルークの最後のセリフは小声なので周りには聞こえていない。
聞こえていたら又クオンの胃が痛くなっていた事だろう。
「あぁ、カカンはローズ王太子が婚姻を結んだら王位を譲り受けるからな。隣国同士ここいらで交友を深めようと陛下が建国祭に招いた。カカンはガフティラベルの大きさには負けるが大国だからな。しかも1000年もの間国が傾いたことも無い。力ある国とは友好関係を結んでおきたいと言ったところだろう」
「花と美の国カカン、平和でいたるところに花が咲き誇る国なんですよね。何時か行ってみたいものです」
マロンが手を頬にあてて顔を綻ばせる。
(俺も1度行った事あるが確かに美しく、平和でありながら活気づいた国だったな。マロン妃を是非連れて行ってあげたいものだ。きっとお気にいるだろう)
「私もサイヒと行ってみたいな」
「カカンか…嫌でもそのうちに行く羽目になるだろうがな……」
サイヒの小さな呟きは誰の耳にも入る事は無かった。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
王子様と過ごした90日間。
秋野 林檎
恋愛
男しか爵位を受け継げないために、侯爵令嬢のロザリーは、男と女の双子ということにして、一人二役をやってどうにか侯爵家を守っていた。18歳になり、騎士団に入隊しなければならなくなった時、憧れていた第二王子付きに任命されたが、だが第二王子は90日後・・隣国の王女と結婚する。
女として、密かに王子に恋をし…。男として、体を張って王子を守るロザリー。
そんなロザリーに王子は惹かれて行くが…
本篇、番外編(結婚までの7日間 Lucian & Rosalie)完結です。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる