24 / 37
【23話】
しおりを挟む
目が覚めると瞼の熱さが引いていた。
ピリピリする痛みも感じない。
「あぁ、夢は終わってしまったのか……」
それにしても心地の良い夢であった。
どうせなら目覚めぬままで良かったのに。
そう思うルークは右手に温もりがある事に気が付いた。
「まさか…本当に……?」
ばさり、とシーツを剥ぐ。
ソコには求めてやまない存在。
サイヒがルークの手を握り締めてベッドの上で眠っていた。
「サイヒ…サイヒサイヒ!!」
ルークが両手でサイヒの手を握る。
夢じゃなかった。
本物だった。
何よりも愛しい存在が、ルークの隣で無防備に寝ている。
警戒心も抱かずに。
スヤスヤと眠っているのだ。
「私は其方に嫌われたのでは無かったのか…?」
「ん…」
ふるり、と睫毛が震え瞼の下から美しい青銀の瞳が現れた。
初めて見た時と同じだ。
「やはり其方の目は美しい……」
その青銀の目に魅了される。
「あぁ、すまない。心地よくて私の方が眠ってしまった」
「いや、良いんだ!それよりサイヒは何故ここに?」
「クオンに手引きして貰った。待つのは私の症で無い」
「私の事が呆れたのでは無かったのか?」
「そんな心配をしていたのか?私がお前を嫌う訳がないだろう?」
ふわり、と花が綻ぶ様な微笑みをサイヒが浮かべる。
ルークがこの世で1番美しいと思う笑みだ。
「私は決断できなかった。目の前の同情を取ろうとしてその先まで考える事が出来なかった。こんな私は王の器では無い。私が身を引いた方が国は上手く動くのではないだろうか……」
パンッ!
サイヒが両手でルークの頬を挟んだ。
ちょっぴり痛い、と思ったがルークは静かにサイヒの言葉を待つ。
「確かにお前は甘すぎるよルーク。優しさだけでは人は救えない。
確かに自分で言うように王の器では無いのかもしれない。でも王になるには1人で何もかもこなさないといけないのか?
お前が冷酷になれぬなら私が冷酷になってやろう。お前が決断できぬ事は私が決断してやろう。お前の重荷を共に私が背負おう。私がお前の半身になる。お前が優しい王であれるよう、私が隣に立ち、その手を放さず、共に道を歩もう。
だからお前はその優しさを失うな!お前が優しくあり続ける限り、私はお前の傍を離れないっ!!」
「サイヒ、それで良いのか…私は情けない男だぞ……?」
「知っている」
「私は英断出来る王にはなれない」
「知っている」
「私は、其方が居なければ満足に立って歩けない!また其方を傷つけるかもしれない!」
「知っている。だから何だというのだ?お前が出来ないことは私がしよう。
だからお前はその胸に灯る優しさの火を消さないでくれ。私はお前のその優しさの火が好きだよ。何時までも見守っていたいと思っている。
お前のその優しさを護るためならば、私はお前の半身となりお前と共に、お前の隣に立って、共に生涯を歩むことを誓おう」
ブワッ
サイヒとルークの体から青銀とエメラルドの緑の光が放たれ絡み合いながら、天に昇った。
「な、何だ今のは!?」
「どうやら誓いが天に通じたようだ…」
「誓い?」
「簡単に言うと神に我々が半身であると言う誓いが認められたと言う訳だ。強い誓いや祈りは光の柱となって天へ昇る。見れる者はあまり居ないがな。クオン辺りには見えたかもしれんな。
ルークは私の法力を毎日浴びていたから見れたのだろう。我々の誓いも神に認められる位には強いモノだったようだな。
こんな事は結婚でも滅多に起こらん。それ程に私に心を預けてくれて嬉しく思うぞルーク」
「神様が認めてくれた…では、サイヒも私と同じく強く私を想ってくれているのか!?」
「感情の種類が何かは分からないが、そう言うことだな」
「サイヒが私の半身…夫婦よりも強い絆……」
うっとりとルークが目を細める。
すっかりルークの心の淀は洗い流されていた。
(こんな綺麗な存在が、私の半身…あぁサイヒが共に歩んでくれるなら、私はどんなイバラの道でも歩くことが出来る……絶対に離しはしない、私の半身!)
「サイヒ、明日からまた後宮に行っても構わないだろうか?」
「ふふ、後宮はルークのものだろう?私に了承を取るのはおかしくないか?」
「後宮は私の物だが、あの裏の広場は私とサイヒのものなんだ。だからサイヒから了承の言葉が欲しい」
「甘えただな。まぁソコが可愛い所だが。あぁ、後宮に来れば良い。私ももう待ちぼうけは嫌だからな」
「待っててくれていたのか?」
「10日間待っていたよ。明日からは待たせないでくれ」
「有難うサイヒ、そしてすまなかった。もう待たせない!だから今日はもうこのまま一緒に寝よう!」
「だからの意味が分からんが…まぁたまには一緒に寝るのも良いだろう」
ルークがサイヒの首に腕を廻し、その胸に顔を埋める。
「やはりサイヒの匂いは、落ち…つ、く……サイ、ヒ…あ、し……る………」
そのままスヤスヤとルークは眠りに落ちてしまった。
先程の10分ほどの睡眠ではルークの睡眠負債を補えなかったらしい。
10日間の睡眠不足が一気に来た。
「やはり寝るお前を抱きしめるのは心地が良いな」
クスリ、と笑い。
サイヒも意識を深く沈め眠りに入っていった。
1時間後。
抱きしめ合って眠る2人を見つけ、クオンの胃が痛むのは別の話である。
ピリピリする痛みも感じない。
「あぁ、夢は終わってしまったのか……」
それにしても心地の良い夢であった。
どうせなら目覚めぬままで良かったのに。
そう思うルークは右手に温もりがある事に気が付いた。
「まさか…本当に……?」
ばさり、とシーツを剥ぐ。
ソコには求めてやまない存在。
サイヒがルークの手を握り締めてベッドの上で眠っていた。
「サイヒ…サイヒサイヒ!!」
ルークが両手でサイヒの手を握る。
夢じゃなかった。
本物だった。
何よりも愛しい存在が、ルークの隣で無防備に寝ている。
警戒心も抱かずに。
スヤスヤと眠っているのだ。
「私は其方に嫌われたのでは無かったのか…?」
「ん…」
ふるり、と睫毛が震え瞼の下から美しい青銀の瞳が現れた。
初めて見た時と同じだ。
「やはり其方の目は美しい……」
その青銀の目に魅了される。
「あぁ、すまない。心地よくて私の方が眠ってしまった」
「いや、良いんだ!それよりサイヒは何故ここに?」
「クオンに手引きして貰った。待つのは私の症で無い」
「私の事が呆れたのでは無かったのか?」
「そんな心配をしていたのか?私がお前を嫌う訳がないだろう?」
ふわり、と花が綻ぶ様な微笑みをサイヒが浮かべる。
ルークがこの世で1番美しいと思う笑みだ。
「私は決断できなかった。目の前の同情を取ろうとしてその先まで考える事が出来なかった。こんな私は王の器では無い。私が身を引いた方が国は上手く動くのではないだろうか……」
パンッ!
サイヒが両手でルークの頬を挟んだ。
ちょっぴり痛い、と思ったがルークは静かにサイヒの言葉を待つ。
「確かにお前は甘すぎるよルーク。優しさだけでは人は救えない。
確かに自分で言うように王の器では無いのかもしれない。でも王になるには1人で何もかもこなさないといけないのか?
お前が冷酷になれぬなら私が冷酷になってやろう。お前が決断できぬ事は私が決断してやろう。お前の重荷を共に私が背負おう。私がお前の半身になる。お前が優しい王であれるよう、私が隣に立ち、その手を放さず、共に道を歩もう。
だからお前はその優しさを失うな!お前が優しくあり続ける限り、私はお前の傍を離れないっ!!」
「サイヒ、それで良いのか…私は情けない男だぞ……?」
「知っている」
「私は英断出来る王にはなれない」
「知っている」
「私は、其方が居なければ満足に立って歩けない!また其方を傷つけるかもしれない!」
「知っている。だから何だというのだ?お前が出来ないことは私がしよう。
だからお前はその胸に灯る優しさの火を消さないでくれ。私はお前のその優しさの火が好きだよ。何時までも見守っていたいと思っている。
お前のその優しさを護るためならば、私はお前の半身となりお前と共に、お前の隣に立って、共に生涯を歩むことを誓おう」
ブワッ
サイヒとルークの体から青銀とエメラルドの緑の光が放たれ絡み合いながら、天に昇った。
「な、何だ今のは!?」
「どうやら誓いが天に通じたようだ…」
「誓い?」
「簡単に言うと神に我々が半身であると言う誓いが認められたと言う訳だ。強い誓いや祈りは光の柱となって天へ昇る。見れる者はあまり居ないがな。クオン辺りには見えたかもしれんな。
ルークは私の法力を毎日浴びていたから見れたのだろう。我々の誓いも神に認められる位には強いモノだったようだな。
こんな事は結婚でも滅多に起こらん。それ程に私に心を預けてくれて嬉しく思うぞルーク」
「神様が認めてくれた…では、サイヒも私と同じく強く私を想ってくれているのか!?」
「感情の種類が何かは分からないが、そう言うことだな」
「サイヒが私の半身…夫婦よりも強い絆……」
うっとりとルークが目を細める。
すっかりルークの心の淀は洗い流されていた。
(こんな綺麗な存在が、私の半身…あぁサイヒが共に歩んでくれるなら、私はどんなイバラの道でも歩くことが出来る……絶対に離しはしない、私の半身!)
「サイヒ、明日からまた後宮に行っても構わないだろうか?」
「ふふ、後宮はルークのものだろう?私に了承を取るのはおかしくないか?」
「後宮は私の物だが、あの裏の広場は私とサイヒのものなんだ。だからサイヒから了承の言葉が欲しい」
「甘えただな。まぁソコが可愛い所だが。あぁ、後宮に来れば良い。私ももう待ちぼうけは嫌だからな」
「待っててくれていたのか?」
「10日間待っていたよ。明日からは待たせないでくれ」
「有難うサイヒ、そしてすまなかった。もう待たせない!だから今日はもうこのまま一緒に寝よう!」
「だからの意味が分からんが…まぁたまには一緒に寝るのも良いだろう」
ルークがサイヒの首に腕を廻し、その胸に顔を埋める。
「やはりサイヒの匂いは、落ち…つ、く……サイ、ヒ…あ、し……る………」
そのままスヤスヤとルークは眠りに落ちてしまった。
先程の10分ほどの睡眠ではルークの睡眠負債を補えなかったらしい。
10日間の睡眠不足が一気に来た。
「やはり寝るお前を抱きしめるのは心地が良いな」
クスリ、と笑い。
サイヒも意識を深く沈め眠りに入っていった。
1時間後。
抱きしめ合って眠る2人を見つけ、クオンの胃が痛むのは別の話である。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。


蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる