上 下
69 / 107
本編で語られなかったイチャラブ事情

66

しおりを挟む
「また買ってしまった………」

 先月アンドュアイスにそんなものは読まなくてイイ、と言われたが思春期のルーシュは大人に比べて情緒不安定である。
 しかも初恋。
 初めての思春期。
 頼れる姉は皆死んだ目をしている。
 姉たちの思春期はもう過ぎたと思いうのだが、未だに末妹のルーシュと同じレベルで恋愛偏差値が低いのは問題だと思う。
 ドラゴニア家の呪いであろうか?
 皆戦闘の能力は男に後れを取る事なく高いのだが。

 見た目美女・中身アニキな女性の集まり。
 それがドラゴニア公爵武家なのである。

 そんな訳でルーシュは恋愛の相談が出来る相手と言うのが少ない。
 唯一サイヒの専属侍女であるマロンとは大人の恋人を持つ同士恋バナに花が咲くが、天界にホイホイ迎えるほど地上の魔術は発達していない。
 空を飛べばいいと言うものでは無いのだ。
 ちゃんと結界をくぐらないと天界には着かないのである。

 空を飛ぶだけで天界に行けるならルインに乗って好きな時に天界に遊びに行くことが出来るだろう。
 残念ながらルーシュに天界への結界を通り抜ける術は持ち合わせていない。

 そこで登場するのが恋愛雑誌『nyannyan』である。
 今回の見出しはー

 ☆男を喜ばせる女になる☆

 である。
 何とも頭がお花畑の内容が雑誌には陳列しているだろう。
 だが恋愛のバイブルとしてこの雑誌はフレイムアーチャのみならず、他の国でも売られているくらい人気がある。
 表紙や中表紙のイケメンのヌード画像目的のお姉様もいるだろうが、あいにくルーシュはそこには興味がない。
 これは精神年齢が低いからではなく、アンドュアイスという絶品の男に愛されているからだろう。
 雑誌の表紙のイケメンたちよりアンドュアイスは何段階もイイ男なのだ。
 今更そこいらのイケメンでトキメクほどルーシュは飢えていない。

 それに男の肌かは騎士の時にさんざん見た。
 腰にタオルを巻いていたとはいえ、一緒に屈強な男たちと風呂も共にしたルーシュは男の身体にそんなに魅力を感じない。

 はずなのだが、アンドュアイスは別である。

 屈強な美丈夫と言うと騎士団の中にも何にもいた。
 体格ならアンドュアイスと変わらない者も居ただろう。
 だがルーシュは騎士団の男達には何の感想も浮かばないが、アンドュアイスの身体だと袖を捲り鍛えられた腕の筋肉を見るだけでも赤面しそうな程意識してしまう。

 やはり溢れ出る男の色気のさであろうか?

 若干、と言うかかなり失礼なことを考えるルーシュである。
 フレイムアーチャの聖騎士団の団員たちは国の女性の憧れの的なのだ。
 ルーシュが枯れているとしか言いようがない。

 そんな干物なルーシュでもときめかすアンドュアイスのほうが規格外の男なだけである。

「今日はアンドュ様は公務で忙しいと言っていたし、部屋の鍵はかけた。これで誰にも邪魔せずに読めるはずだ」

 すーはーと深呼吸をしてルーシュは雑誌の表紙を捲った。

「ほうほう男を喜ばせる方法か」

「今はこれ位しか頼れるアイテム無いんだよ」

「心友の私に相談すればいいではないか、頼られないとは傷つくぞ?」

「全能神のお前が傷つくたまk…て、うわぁぁっぁっぁっぁぁ何でお前がここに居るサイヒっ!?」

「面白そうな予感がしたので暇つぶしに天界から出て来てみた」

「お前、ちゃんと仕事しろよぉ…全能神なんだろ…………?」

「何かあれば【次元転移】ですぐに天界に戻れるから大丈夫だ」

「このチートめ……」

「そう言う訳で一緒に読むとしよう。姿勢はラッコ抱っこで良いか?」

「おまっ!さては前回覗いていたな!!」

「そうかそうか、アンドュでないとラッコ抱っこはしたく無いと。愛だな、お姉さんは嬉しいぞ」

「2歳しか年変わんねーでしょが!」

「だが私はすでに2児の母である」

「言い返す言葉が思いつかねえよ畜生!」

「まぁ私もその本に興味があるし仲良く読もうではないか心友」

「お前心友のワード出したら私が何でも言う事聞いてくれると思うなよ?」

「駄目か、心友?」

「ぐっ…そう言う眼は卑怯じゃないか?そう言う捨てられた子犬みたいな目はルーク様にしろよ」

「そんな事すればルークは理性を失って私を監禁しかねない。冗談でも笑えんぞ、その発言は」

「相変わらずラブラブでうらやましいなこん畜生!わーったよ!一緒に読めば良いんだろ!」

「では10代の乙女の読書タイムと参ろうではないか♫」

 良いように遊びに使われている気がするが、やっぱりルーシュは2つ年上なだけなのに2児の母にしてこの世界の全能神を甘やかしてしまうのだ。
 そう言う所がまたサイヒの好感度を上げるとルーシュは知らないが。

(まぁアンドュはこんな本に載ってること実践しなくても手を握るだけで喜ぶと思うのだがな)

 流石は己の可愛がる保護犬の事を良く知っているサイヒなのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。 生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。 全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。 ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。 時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。 ゆるふわ設定の短編です。 完結済みなので予約投稿しています。

「あなたの婚約者、すごい美女と浮気してたわよ。地味なあなたは婚約解消した方が良いんじゃない?」ええと、あの、褒めてくれてありがとうございます

kieiku
恋愛
学園では髪をまとめていて、眼鏡もかけているものですから、はい、あの、すみません。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...