男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

文字の大きさ
上 下
58 / 107
本編で語られなかったイチャラブ事情

55

しおりを挟む
「良し、ニンジンを絶滅させよう」

「いや、ソレは流石にやりすぎじゃねサイヒさん?」

 全能神は全てを見ていた。
 ニンジンを無理して食べたアンドュを。
 その後吐き戻したのも。

「ニンジンでなくとも栄養は取れる」

「そだけどさ~」

「ニンジン嫌いな人間は多い」

「でも馬はニンジン好きだぞ?」

「グッ!!」

 サイヒが言葉を詰まらせる。
 アンドゥアイスを愛犬と可愛がるサイヒだが、同時に動物が大好きである。
 馬も凄い好きだ。
 可愛い馬から好物を取り上げる。
 駄目だ罪深い。

「諦める………」

「うん、そうしな………」

 何とも和気あいあいとならないお茶会である。

 そう今はお茶会を開いている。
 いや、菓子も出てないしノンカフェインのハーブティーを飲んでいるだけだから、パジャマパーティーの方が正解かもしれない。
 サイヒはパジャマは着てないが。
 ルーシュはきっちり着込んでる。
 ブーツの足跡が付いているが。

 つまりはルーシュは踏まれた後なのである。
 しかも説教まで喰らった後だ。

 ポーカーフェイスのアンドュアイスの感情を読み取れとは、サイヒもルーシュに求めるものが多い。
 心友ゆえに求めすぎてしまう。
 だがルーシュは文句は言わない。
 サイヒが自分に求めるものが多いのは、自分を信頼してくれている証だと知っているからだ。
 それにサイヒ分かるアンドュアイスの気持ちを気付かない自分など嫌だ。

 サイヒがどれだけアンドゥアイスを可愛がっているのか知っている。
  
 でも負けたくない。
 アンドュアイスを想う感情の大きさなら自分の方が上だとルーシュは信じている。
 だってアンドュアイスはルーシュの唯一だから。

 別に唯一を持っているサイヒにも、これだけは負けたくない。

 なのでルーシュはサイヒの説教を文句も言わず聞いた。
 自分自身が悔しくて少し泣きそうだったけど、我慢だ。
 叱られたから泣いたなど思われたくない。
 それに心友に泣き顔を見せたくない。
 対等な対場でいたいから。
 頼られる存在でいたい。
 サイヒからアンドュアイスの全てを任せられる存在になりたい。

 今回サイヒが覗いていたのは帝都に出るアンドュアイスの事を心配してだろう。
 その時点でルーシュはまだサイヒから信頼を勝ち取っていないのだ。
 信用はされているみたいだが。
 頼られてはいない。

「もうアンドゥを泣かすなよルーシュ」

「もう嬉し泣きしかさせねーよ!」

 ニヤリ、とサイヒが笑う。
 そしてふっ、と姿を消した。
 【空間異動】の神術を使ったのだ。

「お休みくらい言っていけっるーの」

 だがサイヒが笑って帰ったなら、きっとルーシュの気持ちの大きさを理解してくれたからだろう。
 もっとアンドュアイスを幸せにしたい。
 ルーシュの手で1番の幸せを感じて欲しい。

「お前にだって負けねーからな心友」

 ハーブティーでのどを潤し、ルーシュは休息をとるためベッドに移動した。
 次の日、アンドュアイスに背中の足跡を指摘されるまで気付かった。
 良い言い訳が思いつかなかったのでサイヒが来ていたことを内容をぼかして話す。

「いいなぁ、僕もサイヒにあいたかった~」

 ニッコリ☆

 アンドュアイスの最高に可愛い笑顔が朝から見れた。
 目の保養だ。
 だがそれがサイヒ関係だと言うのは頂けない。

「私だけでは物足りないですか?」

「そんな事ない!ルーシュが1番だよ!!」

「私もアンドュ様が1番です」

「1番?」

「はい、1番ですよ」

「そっかー」

 無邪気な笑みでなく、花が綻ぶような優しい笑顔にアンドュアイスの表情が変わる。
 その微笑みにルーシュは魅入った。
 自分がアンドュアイスにそんな笑みを浮かべさせることが出来た。
 何という幸福。
 胸が満ち足りる。 
 同時に心臓が張り裂けそうなくらいバクバクと高鳴る。

「手、繋いで食堂行こ?」

「はい」

 手汗が気になりながらもルーシュはアンドュアイスと手を繋ぐ。
 サラリとしたアンドュアイスの手は気持ち良い。
 子供みたいなのに体温は意外と低いのだ。

(大人、だなぁ………)

 大きな手。
 形のいい手。 
 指が長く太い。
 男らしい硬い手。
 
 それにドキドキしながら、早く自分がアンドュアイスをときめかせる存在になれたら良いなぁと、アンドュアイスの顔を盗み見て思うのだった。
しおりを挟む
感想 196

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろうでも公開しています。 2025年1月18日、内容を一部修正しました。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...