上 下
44 / 107

42

しおりを挟む
「40階到ー着!」

 リュックタイプのマジックバックには魔物から強奪した金銀財宝がしこたま詰め込まれている。
 やはりこの行為は強盗では無いだろうか?
 ルインは思った。

「40回が最下層じゃないってことはこのダンジョン相当深いな」

「腕が鳴るのじゃ」

「の、前にランチタイムね」

「戦闘狂の上に食いしん坊。主殿、後2年で王妃教育間に合うのかえ?」

「う”っ頑張る」

 眼が泳いでいる。
 相当に自信がないらしい。
 アンドュアイスはルーシュにはのびのびして欲しいので王妃としての仕事で束縛はしたくないのだが、何せ帝国に嫁ぐのだ。
 大陸1の大帝国の王妃だ。
 嫁に出す方の立場からしたら恥をかかす訳にはいけないのでルーシュの特訓にも精が出ると言うモノだ。
 性別を抜きにすればちゃんと公爵家に育っただけあってマナーは意外と完璧だったりする。
 だが騎士をしていた為に政にはさっぱりなのだ。
 分からない所が分からない。
 勉強でも良くある奴だ。
 簡単に言うとルーシュは既に詰んでいる。
 本当に後2年でどうにかなるのだろうか…。

「ま、まぁ取り合えず飯食べようよルインさん」

「メニューは?」

「シスターハナベーグル」

「フレイムアーチャはアホしか居ないのじゃ」

「私だって買いたくないよ?でもコレが1番携帯食に向いている上に栄養満点で美味しい訳よ!ダンジョンに潜るんだから、この際プライドは捨てて来た訳ね!」

 ルインの言葉にルーシュが必死に弁解する。
 だが確かに美味しそうなベーグルだ。

 まずはビアリーベーグル。
 甘めのかぼちゃ餡入りで生地はサクッと軽め。
 ビアリーは茹でずに焼いたベーグルなので食感が通常のベーグルとはだいぶ違う。

 モキュモキュモキュ

 食べる手が止まらない。

 次にいちじくクルミベーグル。
 バリッと皮がクリスピーなのが特徴。
 イチジクとクルミの香ばしさが最高。

 そしてシナモンレーズンベーグル。
 ツヤッ、ピカッなこのお肌、むっちりした生地、で10代のお肌のような若々しさがある。
 酵母の生地で粉の甘みも素晴らしい。

「確かに美味いのじゃ」

「うん、どんどんレパートリー増えるし美味しくなるんだよね…シスターハナシリーズ………。あ、でもサイヒが今は全能神だから教会で作るのは間違いではない、のか?」

「難しい所なのじゃ…まさかあの時は神になるなぞ妾も想像して無かったのじゃ……」

「そしてルインさんに悲報、食べた後は水分補給もしっかりと!シスターハナドリンクねん」

「遂に飲み物にまで!?」

「でもコレ飲みやすいのよ。成分が汗と一緒らしくて甘み合ってほんのり酸っぱみあってグイグイ飲める上に疲れがとれる」

「ん~アルコールで無いのは残念じゃが、コレは確かに疲れた体に優しいのじゃ」

 所謂スポーツドリンクである。
 現在フレイムアーチャの王宮の騎士や兵士たちも愛飲している。
 運動の後はしっかり水分取らないと脱水症状になる。
 このドリンクを飲み始めたら倒れる兵も減った。
 まさに教会様様。
 シスターハナ様様なのだ。
 神のご加護って素晴らしい。

「さて、夕食には戻りたいから飛ばしますかルインさん!」

「了解なのじゃ!」

 元気満点でダンジョンの最下層69階までを踏破し、この日ルーシュは見事ダンジョンの記録を塗り破った。
 たんまり質の良い魔鉱石も取れて、後は誰にどう魔鉱石の加工を頼むかと言う問題だけが残された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

「あなたの婚約者、すごい美女と浮気してたわよ。地味なあなたは婚約解消した方が良いんじゃない?」ええと、あの、褒めてくれてありがとうございます

kieiku
恋愛
学園では髪をまとめていて、眼鏡もかけているものですから、はい、あの、すみません。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...