上 下
32 / 107

【番外1】

しおりを挟む
「アンドュアイス様、隣りよろしいでしょうか?」

 朝食時、アンドュアイスの座るテーブルにトレイに昼食を乗せて近づいたたのは妙齢のシスターであった。
 なかなかの綺麗な顔の持ち主だ。
 ルーシュがメイドの仕事で追われている間にアンドュアイスに近づこうと言う算段だろう。

「別に構わないが、他の何時も一緒に食べている者たちは良いのか?」

「流石に今回は反対する者も居ないですわ」
 
 ニッコリとシスターが笑う。
 金髪に青眼。
 色合いがアンドュアイスとかなり似ている。
 顔のパーツがはっきりしている所も類似点か。
 とにかくシスターは己のグループのトップである自分を応援するよう仲間たちには伝えている。
 侯爵家令嬢の彼女に逆らう者は居ない。

「アンドュアイス様、私も良いですか?」

 そう言ってアンドュアイスの向かいに陣取ったのは桃色の髪の年若いシスターだった。
 よくルーシュと喋っているのを見かける。
 アンドュアイスにとっては嫌いに位置する相手ではない。

 本音を言うとルーシュ以外の異性とは、サイヒとマロンを除いて同じテーブルで食事をとりたくは無いのだが、公務で来ているのだから仕方が無いのだ。

「うわ~皇子様モテモテ」

「今更だろう。皇子様が来てから2週間、ずっとシスターとメイド達がざわついていただろう」

「まぁそうだよな。あの顔で皇族。持てるのも仕方ねーわ、嫉妬する気にもならないな」

 年若い神官たちはコソコソと様子を伺っていた。
 アンドュアイスが来てから傍にはずっとルーシュが居た。
 それ故、他の女が近づくことが出来なかった。
 今はルーシュは居ない。
 最初で最後のチャンスかもしれないこの場面で妙齢のシスターは仕掛けたのだ。
 年若いピンクの髪のシスターは、ルーシュに頼まれていた万が一の為の牽制役である。

「アンドュアイス様て凄く綺麗ですよね。お肌とかきめ細かくて真っ白で♡」

「肌の状態は主にビタミンと質の良い脂質と睡眠だ。継続させれば誰でも出来る。貴方もそこそこ綺麗な肌してるな。が、貴方は教育的指導だ!睡眠不足が目の下の隈が語っているぞ!昨日寝たのは何時だ?」

 ジロリ、とアンドュアイスの碧の双眸が妙齢のシスターに向けられる。

「うっ………2時、です」

「肌のゴールデンタイムは22時から2時だ。その時間が成長ホルモンを促して新しい皮膚が作られる。その時に新しく作られる肌にいかに良い栄養素が与えられているかが美肌の糧だ。貴方は肌の肌理も荒れているな」

 ジッ、と肌を見られて妙齢のシスターが頬を赤く染める。

「よく食事内容を見てみれば分かるはずだ。桃色の髪の彼女が野菜をコールスローのキャベツに対して貴方はレタスのサラダ。
レタスって90%以上が水分でできているって知っているか?
16栄養素の比較では、キャベツがレタスより高い数値なのが、ビタミンCビタミンK、葉酸(ビタミンB群)、ビタミンB6、リン、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維などの10栄養素、レタスがキャベツよりも高い数値なのが、カロチンとビタミンB1、ビタミンEの3栄養素。同じ数値なのがビタミンB2,カリウム、鉄3栄養素だ。
更にキャベツにはキャベツに含まれるボロンという成分が、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの働きを高めてくれるためバストアップに効くことでよく知られている食材でもある」

 ピクッ!!
 妙齢のシスターの身体に電流が走る。
 彼女はまな板ではないが上げ底胸の貧乳だった。

「更に飲み物だ。貴方はコーヒー、対して彼女は豆乳だ。
カカンの医学博士が「女性は1日3杯以上のコーヒーを飲み続けると胸が小さくなる」と発表している。
バストアップに効果がある食材の中でも、特に有名なのが大豆だ。
 大豆製品の中には大豆イソフラボンという女性ホルモンによく似た働きをする成分が含まれておりこの栄養成分は別名植物性エストロゲンとも呼ばれている。
納豆・豆腐や味噌汁などを毎日摂ると理想的だが、豆乳だと1日1杯で充分なので手軽に摂取することができる。
他にもナッツ類なんかが美肌とバストアップに効果的だ。
彼女はデザートにナッツを取ってきてるけどナッツにはビタミンEの作用で、シミやシワを防ぐメリットもあり又キャベツと同じボロンも結構含まれている」

 カタカタカタカタ
 アンドュアイスの説明に妙齢のシスターの身体が小刻みに震える。

「そうだよな~やっぱり女の子は巨乳がイイよな♪デカければデカいほどイイ♬」

 後ろの席の神官のの言葉に、周りの席に居た若い神官たちはがウンウンと良い笑顔で頷いている。

「まぁ胸の話は置いといて、肌荒れには便秘にならないのも大切だ。貴方はデザートにヨーグルト取って来てるがヨーグルトを食べると、腹の調子がよくなると感じるのは、「乳糖」の問題が関係してるからだが、東の民のおよそ86%は「乳糖不耐」と言って、ヨーグルトの中の「乳糖」を分解する酵素が体内にない。
という事は、腸で乳糖が分解されにくいから長時間消化されずに腸にとどまってしまう。
そうなると当然腸に負担がかかる。
腸に負担のかかった状態が長時間続くと、 腸が正常に働かなくなるので便秘が悪化する。だから便秘でなかなか出せない時は、「デトックスウォーター」がおすすめだ。
腸の働きを高め、便秘を改善しやすくする上に、液体なので消化・吸収にエネルギーを奪われない」

「「「「「アンドュアイス様、是非デトックスウォーターの作り方を!!」」」」」

 何故か周囲のシスターまでアンドュアイスに詰め寄って来た。

「ん、ああ。デトックスウォーターは
・冷たい水 500ml
・岩塩   小さじ1杯
・レモン果汁 1個分(約30ml)
材料をすべて混ぜ合わせたら、30分以内に飲みほす。味が濃くて飲み慣れない場合は、塩やレモン果汁の量を減らしたら良い」

 何処からか取り出したかシスターたちがメモにペンを走らせていた。

「他にも肌の調子が良くなるもの教えて下さいアンドュアイス様!」

「私ももっと教えて欲しいですわ!!……バストアップノホウモ ボソリ」

 その後ルーシュが戻るまでシスター隊のアンドュアイスへの質問攻めで時間が流れた。
 勿論、その後に個室で保護犬と化したアンドュアイスがルーシュに泣きついたのは言うまでもない。
 決戦当日の朝の出来事であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ちょこっと寄り道番外編。
 アンドュアイスは母親が美的意識高い人だったので子供の頃にみっちり仕込まれました。
 その後、アンドュアイスのてによってルーシュがマイフィアレディする日も近いかも?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

【完結】偽聖女め!死刑だ!と言われたので逃亡したら、国が滅んだ

富士とまと
恋愛
小さな浄化魔法で、快適な生活が送れていたのに何もしていないと思われていた。 皇太子から婚約破棄どころか死刑にしてやると言われて、逃亡生活を始めることに。 少しずつ、聖女を追放したことで訪れる不具合。 ま、そんなこと知らないけど。 モブ顔聖女(前世持ち)とイケメン木こり(正体不明)との二人旅が始まる。

彼の大切な幼馴染が重い病気になった。妊娠中の婚約者に幼馴染の面倒を見てくれと?

window
恋愛
ウェンディ子爵令嬢とアルス伯爵令息はとても相性がいいカップル。二人とも互いを思いやり温かい心を持っている爽やかな男女。 寝ても起きてもいつも相手のことを恋しく思い一緒にいて話をしているのが心地良く自然な流れで婚約した。 妊娠したことが分かり新しい命が宿ったウェンディは少し照れながら彼に伝えると、歓声を上げて喜んでくれて二人は抱き合い嬉しさではしゃいだ。 そんな幸せなある日に手紙が届く。差出人は彼の幼馴染のエリーゼ。なんでも完治するのに一筋縄でいかない難病にかかり毎日ベットに横たわり辛いと言う。

処理中です...