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 ウザい…。
 本当にうざい……。

 ルーシュは神殿の聖職者たちの視線がウザい。
 神官もシスターもメイドも誰もかれもがウザい。
 いや、男はまだましな方だ。
 一定の部類の男を除いて。

 そして女に至っては、神殿中の女を敵に回しているようである。
 視線が痛い…を通り越してウザい。

 ”なんであの子が?”

 ”平民の癖に”

 ”メイド風情が媚を売って”

 ”あんな男みたいなのの何処が良いのかしら?”

 ”趣味が悪いわ”

 視線だけでなくコソコソ聞こえてくる声もウザい。
 原因は分かっている。

 アンドュアイスである。

 アンドュアイスはフレイムアーチャに来てから行動をずっとルーシュと共にしている。
 聖女付きのはずのメイドのルーシュは今はアンドュアイス付きになっている。
 アンドュアイスが滞在しだしてから3日。
 視線と陰口の数は増えるばかりだ。

 ウザ聖女も視線で殺さんばかりの勢いでルーシュを睨んでくる。

 解決策としてはアンドュアイス付きの者を変えれば良いだけなのだが、ルーシュにその気はない。
 なにせ女性嫌いを通り越して女性恐怖症のアンドュアイスだ。
 しかも精神年齢は5歳児並み。

 こんなピュアピュアなアンドュアイスを飢えた獣に差し出す真似は出来ない。

 もう神殿は聖職者でなく生殖者の集まりだ。
 男であってもまともな男なら良いのだが、一部のその気がある男もアンドュアイスのフェロモンにやられてしまうのだ。

 アンドュアイスの純潔を守るためにもルーシュはこの役目を他の人間に変わるつもりは無かった。

 それに、ルーシュの後ろをヒョコヒョコ付いてくるアンドゥアイスは、はっきり言って物凄く可愛らしい。
 ルーシュのあるか無いか分からなかった母性本能がギュンギュン擽られるのだ。

 もう”何この可愛い生き物!”と言う奴だ。

 その癖、業務を行っているアンドゥアイスはカリスマ性があって男らしいく理知的だ。

 何なのだこのギャップ萌えな生き物は!
 2人きりになったら下っ足らずな喋り方をするくせに!
 あんな腰にクル、テノールの甘い声が出せるなんて…。

 最近のルーシュは時間があればアンドュアイスの事を考えている気がする。
 そして考えると動悸息切れが止まらなくなる気もする。

 それが何と言う感情なのか、まだルーシュは理解していない。

 理解するのはまだまだ先だが、2人の距離がぐんと近づくまでは後数日。
 司教を相手取るために背中を合わせ身を預ける事の出来る存在が初めてできる事で、ルーシュの中のアンドュアイスの存在はどんどん大きくなっていく事となる。

 戦闘開始まで、後3日……。
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